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現代→古代  作者: 一理
comeback love
97/142

言われたようで

 アリーと距離をとっていると、ふとアリーは笑った。

「やっぱやめとくよ」

「え?」

 きょとん、としているとアリーはズレたマントを直し、イブンのほうへ歩いて行った。

「女に力技するなんて、男じゃねーし」

「確かに」

 七菜がお前が言うなみたいな顔していたが見えないふりをするカオル。

 さて、カオルは七菜に手を改めて差しのばした。

「帰ろうか」

「……」

 七菜はじっとカオルの手を見ていた。

「何?」

「紀伊さん、ありがとう」

「いきなり?」

 七菜は立ち上がり、走り出した。

 すれ違いざまに「ごめんなさい」と囁きながら

「……」

 カオルは遠くなる背中を見つめながら、握られなかった手を戻した。

「意味が分からない」

「女神様だから」

「……」

 カオルはアリーを見た。

「ヒッタイトに続き、今度アッシリア。エジプト出身のアリー様は一体お次はどこへいくのでしょうかねぇ」

「バビロニア」

「へえ。……じゃあ私も行こうかな」

「え?」

「え?」

 意外という顔をした後、ぱああと光り輝く顔を見せて飛びついてきた。

「とうとう俺のモノに―――」

「違う」

 すぐさまチョップを食らわし離した。

「痛い」

「マーシャさんに一度はバビロニアに遊びに来いって言われたからだよ」

「誰そいつ」

「え? 忘れたのアリー。本気?」

 マーシャさんの商隊にシリアまで連れて行ってもらったくせに、忘れたのか。

 真顔で見つめていると、手をぽんっと打った。

「あぁ、あの……印象の薄い人」

「それはアリーの中での印象だろ」

 まぁ一回会ったぐらいじゃ忘れるのは分かるけど。頭に拳骨落とされたんだから覚えていてもいいのではないだろうか。顔見てもすぐ思い出せなかった私が言う台詞じゃないけど。

「ふうん、まあいいけど」

 アリーはカオルの肩に手をおいた。

「俺と行く?」

「やっぱやめとくわ」

 手を叩き落とした。

 そのまま歩いて行くカオル。

「えー……」

 焦らして焦らして離れていく。アリーは叩き落とされた手を力なく落としながら、そっとため息を吐いた。

「いい女だなぁ」

「そういう趣味の人みたいですよ」

「カオルちゃんならそれでもいいかも」

「……」

 イブンにドン引きの顔をされた。冗談なのに本気にしやすいんだから。笑えるー

 階段に腰かけると、イブンは溜息を洩らしこちらを睨んだ。

「いつまで彼女にこだわるのですか。女なら他にもいます。似ているような女だって探せば……」

「あのなあ。似てるからってそいつがカオルちゃんかってったら違うだろう? それに俺が欲しいのはすぐに手に入るような女じゃなくて、あぁいう、損得関係なく自分を曝け出せるような女がいいの」

 手に入らなければ入らないほど欲しくなる。

 そう笑えば「悪趣味」と返された。

「お忘れのようですから、言わせていただきますけど」

「耳にタコ」

「言わせていただきますけど」

 耳を掴んでもう一度言わなくていいのに

「貴方は端くれでも王族、軽率な行動はそろそろお控えください」

「じゃあ俺も言わせてもらうけど、もし俺がちゃんとした王族なら、お前はさっさと処刑されるぞ」

 そういって睨むが、何も言わない。ただ静かに立っている。

 ……イブンはしばらくして膝をついた。

「貴方がそうお望みならば」

「……はぁ、そういうやつだよなお前」

 アリーは立ち上がった。

「端くれなんだから畏まるなよ。俺たち『親友』だろ」

「恐れ多いことです」

「頭固いやつはやだねー。じゃ、命令。飯食いに行こうぜ」

「それは命令になりませんよ」

「じゃあ行かねーの? 俺行っちゃうよ? 腹減ってんもん」

「子どもか……はぁ、しょうがない行きましょうか」

 なんで俺の保護者みたいになってんの? って聞いたらまた深いため息を吐かれた。 


 一方、七菜に置いて行かれたカオル。

 歩きながら思う。

「あいつホント何を考えてるのかさっぱり」

 お礼を言って謝罪を述べて、泣いて喜んで騒いでかき乱して

 白いライオンのことも聞けなかった。何故辛そうなのかも、帰り方も、なにもかも聞けなかった。

(七菜は帰り方を知っているふうなことを言っていた。もし、そうなら私と出会う前に帰ってるだろうな)

 居るということや、最初とは違うことを言っていることから、途中で知ったのだろう。

 どういう方法で?

(あいつが弱気な態度の時は、だいたい本当だったりするしなぁ)

 帰る方法があるなら?

 今更誰が帰るか。

(……白いライオンが現れる前には、もしかしたら知っていたのかもしれない)

 カオルは一つの可能性に着目した。

 だが、認めたくないことだった。

 それは

 


「七菜って、もしかして本物の女神?」

 

 誰も突っ込む人がいない悲しさよ。

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