表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代→古代  作者: 一理
海と船旅
48/142

助かったようで

 古代のギリシャ人の服って本当に一枚でロングドレスっぽくなるんだ。エジプトも一枚で服作ってるけど、それとはなんか違う雰囲気あるよね、って女性のエジプト人の服なんてテレビのツタンカーメン暗殺の謎とかいう番組の時しか見たことないけれど。

「ぽろり心配してたけど紐でしっかり括ってるから、大丈夫だよね」

 独り言を言いながら服を見ていると、年配女性と兄弟らしい二人が入ってきた。

「え?」

 年配の女性はニコニコ微笑みながら手に紐を持ったまま、何か言いながらカオルを座らせると、後ろに回り込んで髪の毛を掴んで紐でくるくる巻き上げて行った。

 完璧古代ギリシャ人コーデの完成じゃないですか。服乾くまでの間なのに、なんだかもったいない気もする。

「私、カオルっていいます。カオル」

 自分を指差して二回言うと、理解したのかカオルと呼びかけてくれた。微笑むと男二人がひょこっとカオルの目の前に現れカオルと同じように名前を言いだした。

「ジノヴィオス」

「ソロン」

 兄のほうがジノヴィオス、弟がソロンというらしい。

 できれば短い名前のほうが聞き取りやすいんだけど……というかヨーロッパ系の人ってどうも早口に聞こえるのって私の耳がのろまだからなの?

 扉がノックする音が聞こえ振り返ると年配の男も入ってきた、それを見て二人は何か言いながら飛びついた。

 父親かな? 二人はカオルのほうを指差しながら名前を何度も連呼していた。

「カオル」

 名前を呼ばれたのは分かった他何を言っているのかは分からなかったが、とりあえず笑顔で微笑む。

「……」

 父親らしき男性が女性に何か言うと女性は頭を下げて部屋を去った。

 そしてにこやかな笑みをつくりながらカオルのほうを振り向き、口が動いた。どうやら長文で何か言っている。やはり何か言葉を発している。カオルは何も言えず、んーっと目を泳がせた。

 えぇ、理解できませんとも。

(通訳さん連れてきてー……)

 息子二人は嬉しそうに飛び上がって喜んでいる。しかし何が嬉しいのかさっぱりだ。首をかしげるが手を握られ肩をぽんぽんっと優しくたたかれた。

(カロロスがどうしたって? これどういう意味?)

 今までの直感を信じるなら、これあんまりいい流れじゃないよね。デジャヴ感じるよ、主にマミトゥさんの時のあれとおんなじ雰囲気を感じるよ。え、カロロス君と? ないない、ロスタムよりないわぁ~

 いや何言ってるか分からないんだけど、とりあえず断ろう。

「困ります。何が何でも困ります。というか分かりません。通訳さん連れてきてください」

 にこやかに男性は微笑んでまた何か言っている。

「……」

 ふんふん、なるほどね。分かった。

(このオッサンさらさら話聞くつもりなんてないな)

 通訳さんいない時点でそうなんだろう。言葉が通じないことをいいことに、一方的に話してあとからちゃんと言いましたよっていうつもりなんだろう。と、いうことは

(え? 何 私売られるの?)

 すすすす……カオルは地味に移動すると、そのまま走り出した。

「!!」

 後ろで何か言ってるか無視。船内を走り回っていると通訳さんと出会い、首を掴まんとする勢いで飛びつき、叫んだ。

「正直にいま私のおかれている状況を言ってください。教えてくれないならこのまま持ち上げて海に放り投げますよ!!」

 通訳さんは顔を真っ青にさせ両手を振った。

「話すから、落ち着いて」

「言ってみな」

 手を離す。

「あなたね、カロロス君に気に入られてね。欲しい言われたのよ。んでね、異色な感じの奴隷もいいんじゃないかって」

「奴隷!?」

 冗談じゃない。なんで売られたわけでも行くあてがないわけでもないのに奴隷だなんて!

 カオルは通訳の人をにらんだ。

「ちょっといいですよね」

「用事思い出した」

「後で、構いませんよね。えぇ勿論そうでしょう?」

「はい」

 通訳人連れてカオルは歩き出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ