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現代→古代  作者: 一理
ヒッタイトのようで
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首都に行きたいようで

 七菜を手伝うため、いろいろ調べようと思い立ったカオルだったが、やはり仕事との両立はできないので「ヒッタイトについて知りたいので少し休みたい」という理由にし、お休みをもらいに来たのだった。そのことに対しカリフさんは疑いもせず快く頷いてくれた。

「すみません、本当」

「まぁ、その国や土地柄について知るのも商人には大事な情報収集しごとだからな、気にせんでいい」

 なんて良い人なんだろう。カオルはほかの人にも挨拶をして家へ戻る。

 ヒッタイトの流行病の解決策をじっくり調べれる時間は今日から三日まで、それ以降は七菜一人で頑張ってもらおう。正直古代の流行病なんて分からない。たぶん現代のインフルエンザと同じようなものだろう。季節性のモノだったらお手上げじゃないか、抗ワクチンあるわけじゃないし、医師じゃないから作るのも不可能だし、あれ? 考えれば考えるほど無理じゃないかと思ってきた。

「まぁ、とりあえず女神様と相談してどうするか決めるか」

 家にたどり着き、家の中に入るとおとなしく地べたに座って何か工作している七菜がいた。

「なにしてる」

「あ、おっかえりなっさーい」

 元気に泥だらけの手を振ってくる。何歳児ですか? とりあえず何を作っていたのか覗き込むと、細マッチョな男性が二人バレリーナみたいなポーズで手をつないで踊っている。

「……」

 何も言えず黙ってみていると、七菜は手に持っているものを持ち上げた。

「これいる?」

「それ粘土板用の泥……なんだけど。何作ったの?」

「タイトル『ア・ローズ・ダンス』……美男子たちの舞」

 頬を染めて何故か恍惚としている。どうしたのこの子。やだ最近の子の頭の中理解できない

「……あそう」

「たろう?」

 美男子の像(?)をつかみ家の外に向かって全力で投げ飛ばした。

「ホモォ――!?」

「そんなことより、とりあえず市場に向かってハットウシャから来た人でも探して何か聞いてみる?」

「うん」

 ちゃんと分かっているのだろうか、とても心配だ。

「あーあ、目の保養ないかなー」

 本当に心配だ。

 

 市場へと三時間かけてやってきた。移動方法はもちろん徒歩。途中で七菜が乗り物ないのーっとただをこねなければもっと早く着けていただろう。

「ほとんど人いない」

「お昼時だからじゃないですか」

「紀伊さん、いつまで敬語?」

 確かに年下がタメ口でこっちが敬語ってのはおかしいかもしれないが、微妙に身分高い位置にいる七菜に対しどう接すればいいのか、微妙すぎて分からない。

「まぁ、気にしないで」

 市場だけど、お昼ゆえに人が少ない。歩きやすいと喜ぶべきか否か、悩んでいると七菜がとあるお土産屋の前に座り込んで何かをじっと見つめていた。

「何してる」

「これ何?」

 雪花石膏で作られたフワワの像だった。

「確か……フワワじゃなかった?」

「不細工なのに名前めっちゃ可愛いじゃん!」

 お店のおばあちゃんがにこにこしながらフワワの像を持ち上げた。

「シュメール語でフワワっていうだね。アッカド語じゃフンババっていうんだよ。フンババはねギルガメシュ叙事詩にでてくるバビロニアの精霊なんだよ」

 おばあちゃんはゆっくり話すので、なんとかヒッタイト語でも聞き取ることができた。

「フンババって、あれじゃないの? 土管のおじさんのゲームに出てくるボス」

「あー……って違うから」

 いちいち現代のアニメやゲームを言わなくていいからと突っ込むと、おばあちゃんはにっこりしてフンババの像を七菜に持たせた。

「フンババは魔除け効果あるから、一個どうだい?」

「可愛くないからいらない」

 確かにいらないが理由酷いな。カオルは七菜の頭を軽く小突きながらおばあさんに頭を下げた。去る前に一つ尋ねることにした。

「ハットウシャの様子って何か知ってたりします?」

「なんのことだい?」

「流行病とかですよ」

 おばあちゃんは首をひねっていたが、手をポンッと鳴らした。

 そしておもむろにエアの像を取り出し、カオルの手に持たせた。ニコニコして何も言わないカオルはなんとなく嫌な予感がしたが、苦笑いで尋ねた。

「おいくら?」

「まいど」

 七菜はのんびりとやり取りを眺めている。何してんだろうって顔だ。お前のためにといいたいところだが、ここはぐっと我慢する。

「ハットウシャはね、神々のお叱りを受けているんだよ」

「何それ」

「今の王様シュッピルリウマ王がね、即位なさる前に実の兄トゥドハリヤ3世を殺して王位に就いたから、神々の怒りにお触れになったと神託があるんだよね」

 まずヒッタイトの王様について、知らなかったわ。カオルはうんうん、と適当に聞き流すと、隣で七菜がジト目で見つめてきた。なんだい。

「っていうか、神様そんなんで怒るのか」

「うわぁ。商人って耳聡いって聞いたのに、全然違うね」

 悪かったね。

「王様は神様に認められてまつりごとを行ってるんでしょ」

 なんでこいつこんなドヤ顔なの? そのぐらい知ってるし、そして私の疑問の解決になってないし

「そうそう。うちは神様がいっぱいだからね『ハティの千の神々』って言うぐらいだもん。その中で赦す神あれば厳しい神様もいらっしゃるんじゃないかね」

 日本でも八百万の神々というから、少し親近感がわく。もしかしたらメソポタミアの中でもヒッタイトが一番自由に好きな神を信仰しているような気がする。

「……あれ?」

 話脱線してない?

「じゃあ、神様の怒りが収まったらいいってことか? イナンナとしていっただけで満足って感じじゃない?」

「そうだったらいいけどね」

 適当に流そうとしたら回避されてしまった。

「ハットウシャに行くなら、知り合いがいるよ。宿屋をしているんだけどね。いってみるといい。チュニスっていう宿屋だから。リマばーちゃんからっていったら大丈夫さ」

「ありがとうおばあちゃん」

 七菜はお礼を言うと、私を見た。

「首都いこ!!」

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