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現代→古代  作者: 一理
エジプトのようで
130/142

熱いようで

「熱いぃぃーっ!!」

 カオルは火の海と化した屋敷の中を走り回っていた。

 今思ったら、ラクダとか紐につなげてないし、危険回避力高いやつのことなら、とっくの昔に逃げていそうなものだ

 もしかして、完全無駄足?

「!!」

 甲高い音が聞こえた。

「あっちか」

 中庭のほうへ走っていけば、ため池の中央の岩の上に口を大きく開けて泣いているワニと、体半分以上水につかっているラクダが居た。

 なぜ逃げないラクダよ。

「よしよし、おいで」

 カオルも池に飛び込み子鰐を抱き上げた。ラクダが首を伸ばしこちらの服を噛んだ。

「お前も、行くよ」

 背中を叩くと、忠実に着いて来るラクダ。

 まだ火の上がっていない裏口から邸を出ると、武装した反乱軍とがっつり目があった。

 なんだこのクソゲー

「え、あ、ははは……ハハッ」

 最後若干高めに星が付くように笑ってみたけど、通じないよね。

「アテン神信仰派か?」

「いや、どっちかっていうと仏教派です」

「?」

 まあ、クエスチョン浮かびますよね。

 男の一人が茶化されたと思ったのだろう、肩を振るわせ武器を構えた。

「我らと同じく、アテン神信仰するなら許してやるぞ」

「だが断る」

 ここで「はい、そうします」っていえばいいのは分かってるけど。こういうのって許せない性質なんだよね。

 何の神様を信じるかって、そんなの個人の勝手じゃないか

 それを、武力で押さえつけて、無理やりなんて……そんなの神様だって求めてないだろう。

 大体、今絶賛神様に反抗中なんだよ。

「あんたらはあんたらで、自分たちの神様崇めればいいじゃん、もともと幅広くいろんな神様を崇めてたんでしょ? 別に一柱に定めないで視野広くすればいいじゃんか」

「偉そうなことを、我らは他の奴らのように上辺だけの信者ではないのだ!!」

「へえ、そう」

 カオルは目で周りを探った。どこか抜け道はないだろうかと思って希望を探したのだが……

 うん、なんでここにこれだけの人いるんだろう。涙出てきた。

「カオル」

 バットタイミングにロスタムが出てきた。

「うわあ」

「なんだよ、そのリアクション」

 水浴びてこなかったのか、すす汚れている。彼も武装集団に気が付いたのか、目つきの悪い目をさらに悪くさせ相手を睨んだ。

「なんかどんどん、悪化していく気がする」

「火の中戻るか?」

「二酸化炭素中毒で死ぬよ」

 なんだか地面を蹴る様な音がふたつ響いたと思ったら、武装集団の背後に馬が現れた。

 彼らは悲鳴を上げて蹄から逃げる。

「!」

 その馬の背に乗っているのは、アリーとイブン。……私の中で馬に乗る=あの二人。という方程式が出来上がった。

「カオル!」

 急に呼び捨てか、と思いつつカオルはアリーの手を掴んだ。

 イブンもロスタムを乗っけて走り出した。

 馬に飛び乗りも慣れてきた。人生生きていると何があるかわからない。

「ラクダって、走れたんだ」

 馬よりは遅いけど、めんどくさいという感情丸出しで後ろを着いて来るラクダ。

「そりゃ走れるでしょ。っていうかカオルちゃん、俺の寿命縮めることはやめてくれよ」

「どういうこと?」

「君が心配過ぎて、心臓が張り裂けそうってことさ」

「……」

 後ろからイブンが追い上げてきた。その後ろにいたロスタムがアリーに声をかけた。

「おい、ナンパ野郎」

「なんだよ」

「こういうのってよくあるのか?」

「んー。いや、あんまりないね」

 空の色が暗く、日が雲に覆われ隠れていった。

「王様が我を通したやり方を見せたから、それに感化したんじゃないの?」

「なるほど、上に立つものってやっぱり大事なのね」

 カオルはアリーの頬をつついた。

「アリー、あんた王様の血ひいてんだってね」

「え、今このタイミングで俺のグレーゾーンつつく?」

「真っ向から言うほうが気まずいでしょ。っていうか別にそんな難しい話するわけじゃないし」

 それに、イブンに睨まれるのも嫌だしね。

 あ、もう睨まれてたわ。

「わたしバカだから難しいこと分からないし、若干最近適当になってきたんだけどさ」

「適当……」

「アリーも適当に流せば? 王様の血をひいていようが、なかろうが、アリーはアリーだし。あんたほどの狡猾な頭脳の持ち主なら、あの家に居なくても生きていけるでしょ」

「まあね」

「居させてもらってるってことで、恩義感じて家に居ついて。でもやっぱり息苦しくて外に出て」

 カオルは声を小さくさせた。

「でも一人じゃ寂しいから、イブンを連れて行くんでしょ」

「……」

 カオルはアリーの背中にそっと頭を押し付けた。

「アリーは強いよ」

「……カオルちゃん」

 雨が降ってきた。

 空を見上げれば、灰色の雲が空を染めあげ、天の滴を地に落としていた。

 冷たく湿った空気が、上がっていた黒煙を崩していく。

「あれ、あそこにいるの七菜じゃない!?」

 カオルが指差す方向には、明らかこの国の者ではない兵士が七菜たちを取り囲み、抑えているのが見えた。

「あいつ、ほんっとトラブルメーカーだな」

 そういったカオルに、男たちは同時に「お前もな」と呟いた。

「うわああ」

 再び馬で輪に飛び込み、兵たちを蹴散らした。イブンは馬から飛び降り、兵士たちを蹴散らしていく。

 一人相手に四人の男たちは倒されていった。弱くないですか……?

「紀伊さん!」

 七菜がカオルに抱きつこうとしたが、馬で差がありすぎたため、しょぼくれた顔で離れて行った。

自国アッシリアの兵士たちがここまで追ってきたようです」

 イルタは冷静にそう言いつつ、兵士たちが乗ってきた馬を奪った。それに跨り背に七菜を乗せた。

「ルシアと、サイードさん、それにアズラーは?」

「わかんない。先行ったのかも」

 あの人込みではしょうがないか。

 とりあえず、王宮をめざし馬を走らせることとなった。

 ぴっしゃーん。

 走らせてすぐ、背後に雷が落ちた。

「……ッ!」

 カオルは後ろを振り返って後悔した。

 なんで、今なの?


「白いライオン!!」


 

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