表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代→古代  作者: 一理
エジプトのようで
128/142

大人しく聞けないようで

「お姉様ぁあああ!」

 アズラーにタックルかまされそうになったので、カオルはすぐさま避けた。

 背後にあった木にダイレクトアタックしたようだけど、大丈夫だろうか……。

「えっと、記憶もどったよ」

 手をあげながらアリーたちに報告すると、七菜が目をまんまるに見開いて凄い勢いで手を掴んできた。

「頭うったの? 急に思い出したの? ねえねえ、記憶喪失ってどんな気分?」

「ウザい」

 一言で撃沈した七菜を無視して、カオルはアリーのほうを向いた。

「ありがとう、いろいろ世話になったみたいで」

「いやいやなんのその。っていうかさ、記憶無くしたときのことは覚えてんだ?」

「わりとハッキリ」

 失った理由の直前が思い出せないけど。……あれ?

「どうした」

「え、いや……べつに」

 カオルは、ふとこの感覚が初めてではないということに気が付いた。

 記憶を失っている間の記憶はあるのに、『記憶を失う直前の記憶』が『思い出せない』

 この感覚……

「……そうだ」

 古代に来た時に感じた感覚。

 カオルは七菜を見た。

「ほえ?」

 イルタに甘えようとして、逃げられていた七菜と目が合うと、不思議そうにこちらを見つめ返してきた。

「話したい内容って何? 聞いてあげるよ」

 なんども交わした会話。今なら、謎を解けそうな気がした。

「……本当? 聞いてくれる?」

 七菜も真面目な顔で、確かめるように言葉を口にした。カオルは小さく頷いた。

 アリーはその様子を見ながら、手を叩いた。

「はいはい、話するのは構わないけどさ……ここ玄関だから、中入ろうよ」

「そうだね」

「お前帰れ。青臭い坊や」

「せっかく来たんだ入れろよハゲ」

「おま、俺地毛のまんまだし、ハゲ馬鹿にすんなよ!」

「そうだよ、ロスタム」

 カオルは間に入った。

「鬘は立派な服飾の一つだし、ここでは綺麗好きの象徴だって聞いたことあるよ」

「誰に?」

「姉さん」

 アリーとイブンが微妙な顔で話し合っている。

「間違っちゃないけどさ」

「なんでそんな微妙なところなんでしょうか」

 カオルはさりげなくロスタムの手をひいて家の中を入って行った。

 その後ろで七菜がぽつり呟いた。

「ずる賢い」

「なんか言った?」

「別に」

 広いという理由で中庭に移動した。

 ここに来るたび思うことは一つ

「ラクダよ、何故ここにいる」

 ふつう家の外にいるんじゃないの? 意外と日陰好むよね

 カオルはラクダに近寄ると、ワニが足元まで寄ってきた。それを拾い上げ振り返ると、ロスタムがずささっと後ろへ下がった。

「……」

 じりっ……。

「なんだよ」

 じり、じり

 微妙な横移動をする二人。

「いや、良いリアクションするなって」

「カオルちゃんって、前から思ってたけど……嗜虐趣味あるよね」

 アリーの言葉に七菜が手を打った。

「年取ると、ドSになるって聞いたことあるー!」

 七菜のほうに全力で走ると、悲鳴を上げて逃げ出した。

 しかし、運動ではカオルのほうが大きく上回っているため、あっけなく捕まりお仕置きタイム。

 イルタがこほん、と咳払いした。

「お話はどうなさったのでしょうか」

「「あ」」

 遊んでいる場合ではなかった。

 七菜のほうを見ると、七菜はアリーを見て、周りの人も見た。

「二人きりにしてほしい」

「……いい?」

 カオルがアリーに聞くと、頷いた。

「兄さん、どこいってたの?」

「お前わざと俺を置いて行ったな」

「気のせいだよ。自意識過剰」

 星のつきそうな爽やかな笑みを見せながらサイードは兄を連れて去って行った。

 最近反抗期なのだろうか。

「さてと、人払いも済んだし……で?」

「うん、大事な話」

 ベンチに七菜は座った。向かい合う様にカオルも横に座り、七菜の言葉を待った。

「とりあえず、私が本当に伝えたいことを先に言うね」

 七菜は目を閉じて、深呼吸を一度したのち、そっと目を開けた。

「私は、この世界で生きてみたい……歴史を変えることになっても」

 カオルは七菜の目を見た。

「ほう」

 としか言いようがない。

 私は神ではない。聖人君子でもない。ましてや、七菜の人生を決めるほどの決定権もない。

 けれど、彼女がわざわざ私に言うのは……彼女なりの覚悟の表れなのだろう。


「紀伊さんが、この世界に来てしまった理由は私にも分からない。けど、紀伊さんが来たことによってこの『古代』という世界はおかしくなった」

「その理由は」

「『未来』の情報を持った紀伊さんが、すでに『終わった古代の時間』に、再び新しい『時』を持ってきたから」

 世界は回り続ける、その中でも時代の変動は緩やかに早い。故に神が記憶として処理するまで時間がかかり、異空間に放置されていた。はるか昔に『古代』という時代は終わり、神に記され再び新しく巡る時がくるのを眠りながら待ち続けていた……しかし

「紀伊さんが、起こしてしまったの。眠っていた時代を」

 眠った時の中に、生きた時を持つものが入り込んでしまった。それは全くのイレギュラー

 『古代』は再び時を刻もうと歪曲し、結果『アッシリア』のみならずいろんな『古代の時代』が混じりあうことになった

 

 カオルは腕を組んで七菜を見た。

「そんなこと、信じろって言われても信じれないけど……まあ、私たちがこうしてここにいる時点でまともじゃないからね」

「うん」

 一番聞きたかった、『何故私が古代にいるのか』という理由は聞けなかった。

「私が死ぬっていうのは?」

「未来の情報を持っている以上、『古代時代せかい』は紀伊さんを離さない。たとえ、魂だけの状態になっても」

「ほほう」

 なるほどね。それはホラーだ。世界がまるで生き物だなんて

「で、今なら帰れるってこと?」

「うん」

「そして、お前が囚われると」

「……」

 七菜は小さく微笑んだ。

「ううん」

 風が急に強く吹いたが、それはほんの一瞬だけ。

 流れていく葉っぱと同じように、彼女の頬から冷や汗が一滴流れるのが見えた気がした。

「私は少し違う」

 自分の服を強く握ってにこりと笑う。

「肉体を失って、魂だけの存在になって……本物の女神になる」

「は?」

 眉が崩れた笑み。だけど必死に笑おうとする彼女の心理をカオルには理解できなかった。

「私の肉体を持ってして、世界のほつれを直すんだって……私の中の『未来の情報』を『古代の情報』に変えて世界の糧にするんだって」

 情報の上書きの、上書き。

 七菜がカオルを帰そうとしたのは……帰さなければ、カオルの魂ごと『上書き』され、死ぬ

 いや、初めから居なかったものとされるから

「……魂だけになって、それが女神っていうの……?」

 七菜は頷いた。

「もう、私の躰には古代の情報が入ってる……だから、言葉通じたんだよ。えへへ……本当に神補正だったよ」

「意味わかんない。神ってのは……信じてないけど。全知全能なんじゃないの?」

「ピンからキリまでだよ」

「じゃあできる奴つれてこい」

「いやいや紀伊さんそれは無茶―――」

「お前が言うな!」

 カオルは七菜の胸倉をつかんだ。

「女神になる? 魂になって? 私に帰れっていってたのは、お前が私を想ってのことだろ? だったら、察しろよ」

 七菜の目が怯えているが、叫ぶように怒鳴った。

「お前も、死んでほしくない人間がいるってことを!」

「……き、い……紀伊さん、私は死なないよ」

「肉体がない魂が生きてる状態って言えんのか!?」

「この世界に居る限り、この世界そのものが私の『肉体の一部』みたいなものだよ」

 相変わらずの屁理屈。

 無意識のうちに七菜の服を掴む手が強くなる。

「それに……その言葉、そっくりそのまま返すよ」

「は?」

「肉体がないのは、紀伊さんだって同じってことだよ!!」

 ……は? 今、なんていった?

書きなおしたけど、うーん

最後のほうはやはり難しいですね

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ