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現代→古代  作者: 一理
エジプトのようで
120/142

気にしないようで

アリー視点。

ちなみにアリーは表面上「ちゃん」ってあざとい感じを醸し出しているけど、内面とても上から目線。

 カオルは記憶がないまま三日間エジプトにいた。

 警戒心の強いはずのカオルが割と悠々と過ごしているのは正直意外だ。

 本人も「自分でもなんでこんな落ち着いているか分からない」と言っていたが、嘘を吐かない彼女のことだ。本当に記憶がないのだろう

 アリーは近寄ってきた犬の頭を撫でた。

「……」

 カオルはこの世界の人間ではない。

 女神と同じ世界からきた人間……とは、たまたま二人が会話しているのを聞いたから知っているが

 どうも神の世界とは違うようだ。

「イルタさん……あの人イブンさんですよね? なのにイブン『さん』っていっただけで、イブンさんにめっちゃ嫌そうな顔されたんですけど、なんでか知ってます?」

「さあ、私は存じません。何故私に聞くのですか?」

「一番正直そうですから」

 俺が一番嘘つきっぽいなんだろうな。カオルの中では

 間違ってはいないが

「紀伊さん~」

 女神がカオルに近寄っている。

 そういえば「キイサン」ってカオルの別名なのだろうか……。まさか女神名とか(笑)

「アリー様」

「んー?」

 振り返ればイブンが居た。

「あの女の怪我はたいしたことがないそうです」

「そう」

「ですから、しばらく安静にしていれば記憶も戻るかと」

「カオルちゃんだからねー……意外と荒療治のほうがすぐ戻るかもよ?」

「アリー様」

「痛い思いしたくないから、やらないけどね」

 べっと舌を出すと、後ろを向いて舌打ちされた。

 え、傷つく。

「あ、そうだ。ねえカオルちゃん」

 にこっと笑顔で「おいでおいで」をすれば素直にやってくるカオル。

 カオルって警戒心強いんじゃなくて、俺に対してシビアすぎるぐらい強かったのね

「なんですか?」

「家の中飽きたっしょ? 外出てみる?」

「いいんですか?」

「勿論」

 手を取って歩き出すと、犬が着いてきた。

「可愛い……」

 ぼそりとつぶやくカオル。

 犬好きなんだなぁ。

「少し行ったところなんだけどね」

「私も行きたい!」

 女神様が走ってきた。別に二人きりになれるとは思ってなかったけど、空気呼んでくれてもいいのに……。

 小舟で移動して、少し家から離れた。

 今日もいい天気だ。

「どう?」

 着いた場所は自分専用の土地。

 そこにはラクダが座って何かをもごもごしていた。

 馬を世話する専用の土地にしようとしたら、いつのまにか誰かのラクダが入り込んで普通に馴染んじゃってんだよね。

「わー、ラクダだラクダ!」

「ほんとだ……砂漠にいるものだと思ってた」

「こいつだけはどっかから紛れ込んでね。そのままいるんだ」

 背中をぽん、と叩くと

「ぶふう」

 と、嫌そうな声を上げられた。可愛げねえなこのラクダ。雄だろ絶対。

「ねえアリー」

「何?」

「このラクダさあ」

 カオルは足元を見てる。

「なんか刺さってるけど、これなに?」

「え?」

 吹き矢が刺さっていた。

 痛くないのか痛すぎて動けないのか、微動だにしないラクダ。

「抜いてあげたほうがいいんじゃない?」

「そうだね、じゃあ今使用人呼ぶから……」

「えい」

 勢いよくサッと抜くカオル。

 怖いもの知らず過ぎて悲鳴すら出なかったわ。

「ぶふ」

 鼻を鳴らしてラクダは立ち上がった。

「こんぐらいの痛み、屁でもねえみたいな面してるな」

「アリー、ラクダの気持ちわかるの」

「いんや、分かんないけどさ」

 何しても動かなかったラクダが立ち上がって、どこに行くのかと思えば、川の水を飲んで再び定位置に戻って座った。

 いや、そこお前の席違うから。

「きゃあああ!」

 悲鳴が上がった。

 カオルは驚く前に声のほうへ走って行った。どんな兵士よりも役に立つんじゃないのあの人

「七菜ちゃん!」

「ちゃん!?」

 助けに行ったはずなのに驚かれてる。

 驚いていたはずの女神様は切り替え早く。サッ! と両手をあげ、こっちに助けを求めてきた。

 なんというか、面白いぐらいびっくりできるなぁ、あの光景。

「ワニに囲まれるなんて珍しい光景ですね」

「だね」

「のんびり言ってる場合じゃないから」

 イブンと遠くからその光景を見ていると

 どこからか手に入れてきた馬の鞭を手にカオルはワニの中に飛び込もうとした。

 が

 ワニが駆け足気味にこっちに突進してきた。久しぶりにワニの駆け足見た、とても怖い。

「ちょおおおお、怖いから怖いから怖いからねえええ」

 珍しくカオルが奇声を放ちながら逃げて戻ってきてラクダの上に乗った。

 あ、ラクダいたの?

「なんか、一瞬だけデジャヴを感じた」

「だとしたらカオルちゃん、結構面白い人生積んできてるね」

「人生摘んだことはないけどね!」

「なにそれ笑えない。っていいから! 早く助けてよー!!」

 カオルのブラックジョークに突っ込みいれながら女神様は悲鳴にも近い声で救いを求めてを叫んだ。

 イルタとルシアも輪の中に居るわけだが、女神とは対照的でとても静かだ。

 この差はなんだろう。

「わあああ、口開けてるよぉぉ!!」

「大丈夫、最初っから開いてたから!!」

「女神様もテンパってるけど、カオルちゃんも超テンパってるね」

 アリーはイブンに頼んでいた弓矢を手に取り、ワニに向けて放った。

「うぎゃあああ!!」

 あたったのはワニのはずなのに大絶叫の女神。

「カオルちゃんもやる?」

「目を当てるとか! えぐい!!」

「話にならないようですが……というか、何故この女こんなに混乱しているのですか?」

「さあ、過去になんかあったんじゃない?」

 ワニは攻撃され威嚇モードに入った。

「うううん、うむ」

 女神様はイルタに口をふさがれ、こちらの様子をうかがっている。

 あの眼は、道をつくれということか

「じゃあーまあやろっかな」 

 弓を構え、ワニの目を狙う。

 別のワニは口を大きく開け、跳ねる様に唸ったり呻いたりしていたが、やがて矢を射られ逃げ出した。

 女神様たちもワニが少なくなったのを見て、こちら側に走ってきた。カオルはそれをみてラクダから降りて一息ついている。

(へたれてるカオルも可愛い……)

 珍しい一面を見た。

「はぁ~……驚いたね」

「え?」

「……なんでアリー、満足そうな顔してるの?」

「別に~」

 しかし今までこんなことなかったのに、ある意味もってるな~この人たち

「きゃ」

 小さな悲鳴。イルタかと思えば、カオルだった。可愛い悲鳴出せたんだな

「どうしたの?」

「なんかスカートを引っ張られた気が……え」

 顔が固まったカオルの視線にみんなは目を向けた。

 小さいワニが一匹、カオルのスカートにぶら下がっていた。

「紀伊さん、高級かつダイレクトな飾りだね」

「殴るぞ!」

 小さくとも怖いのか、女神様は遠くからそれを眺めていた。

 対するカオルは、そうでもないのか、スカートを持ち上げ困り顔。

「離してくれないかなぁ」

 結構恥ずかしげもなくスカートを持ち上げ、ワニを振り回している。

 ワニの砲丸投げでもする気だろうか。

「こうすればいい」

 イブンが剣を抜いて、ワニが咥えているスカートの布の部分を切り裂いた。

「わ」

 ぼと、落ちたワニの子は微動だにしない。

「……なんだったんだろう」

「さあ……」

 とりあえず、戻るという話になり、再び船でのんびり移動した。

「ラクだねー」

 川の近くって移動が楽だけど、氾濫起きると致命的なんだよねってことは言わないでおこう。

「なんでラクダもついてきてるの?」

 船の後ろのほうにさりげなく乗っているラクダ。

「いいんじゃない?」

 川を移動していると、市場が見えた。

「なんかにぎわってるね」

「行く?」

「わー行きたい行きたい」

 カオルに聞いたんだけど、まいっか。

 イブンに指示し、向きを変えた。

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