ボスキャラの在り方
話は変わるが、皆はゲームをやったことがあるだろうか
所謂テレビゲームという奴だ
僕も男子高校生の例に漏れず、何本かプレイした事がある
そういったゲームの中のボスキャラはとても強くて、倒すのに苦労した事がある人も少なくないだろう
そんな時、友人から助言をもらった事がある
敵のある所を狙え、という助言だ
どんな強大な敵でも何処かしらにあって、そこを狙わなければ倒せない敵もいるという話だ
敵の体の中で、一際目立っているのが大体そうだ
そう、弱点だ
弁慶の泣き所、アキレスの腱といった所だ
液状のボスには大抵の攻撃が効かない
凍らせるのも一時しのぎにしかならない時もある
そう言った時、狙うべきなのは・・・
僕は中央の広場まで走って戻り、急ブレーキをかける
勢いが強すぎて、石で舗装されている道が砕けて一本の筋が出来る
気にせず振り返って敵を見る
距離は十分、力も十分、覚悟は・・・走りながら決める!!
僕は穴の空いた魔物に向かって、全力で走りだした
それなりに距離があるけど、僕が全力で走ればすぐに港に着く
魔物の穴は塞がりつつあるけど、まだ完全には塞がってない
僕は走る勢いのまま、さらに海の上を走る
昔何かで読んだ水の上の走り方
片足が沈む前に片足で水面を叩く
現実には不可能な事だが、僕の怪力で可能にする
いや、それだけじゃない、さらにスピードを上げる
そして、両足を揃えて全力で跳んで、魔物の穴に飛び込む
空気抵抗を利用して、穴に飛び込めるように調節する
結果、見事に穴に入り込んだ
勢いはそのまま、穴の中を走る
魔物の体は液状だけど、海の上よりは走りやすい
遠くから見ても巨大だが、やはり間近で見ると・・・やっぱり巨大だ
体の横幅だけで、イーアからクスクまでの距離があるんじゃないだろうか?
兎に角走る
もう穴は殆ど塞がってしまっているが、最後に思いっきり魔物の体に飛び込む
確かこのあたりにアレがあったはずだ
魔物の体は液状だが、透明でなく黒く濁っている
殆ど視界はない
だけど懸命に泳ぐ
もしアレがそうなら、恐らくもう僕にしかこの魔物は倒せない
僕は息を止めたまま、全力で泳ぐ
手を前にだして、必死に魔物の体を掻いて進む
足はバタ足だ
視界がないから、上がどっちかも分からない
僕が進む方向は正しいのだろうか
もし間違っていたら、その内息が切れて、そのまま窒息死だ
僕は必死に泳ぐ
もう結構泳いだけど、どこにも見当たらない
まさかあれは見間違いだったのだろうか
だとしても、もう後戻りはできない
まだ僕は、必死に泳ぐ
段々と、意識が朦朧としてきた
無酸素でこれだけ泳いだのだから当然か
まだ、目的の物は見えない
それでも泳ぐ
泳ぐ
泳ぐ
それだけに集中する
魔物の体を掻く
足を動かして前に進む
ただ、ただ、ひたすらに
もう、魔物の体の中に入ってどれぐらいの時間が過ぎたのだろう
5分?
1分?
30秒?
わからない
けど、兎に角泳がなくては
アレを見つけないと・・・
あれ、アレってなんだっけ?
兎に角進まないと・・・
朦朧とした意識の中、ただただ手足を動かす
きっと届くと信じて
?
今、何かに触れた・・ような・・?
っ!!見つけた!!これだ!!!
僕はそれに向かって進み、すぐに掴む
それは白い、骨格のような物だった
そして掴んだ手に力をいれて、体を引き寄せて中心に近づく
そうやって進んでいくと、
見えた!!あの紅い物体だ!!!
僕はそれに手を突き刺す
そして片っ端から壊していく
これには実体があるみたいで、脆いガラスみたいだ
でも、遠くからだと砂粒に見えたそれは、僕の体の5倍はある
このままじゃ、意識が持たない
僕は覚悟を決めて、
それに噛みついた
そして、
一気に吸い込む!!
その紅い物の紅さが、一気に失われていく
そうして、完全に紅さが失われたが
(そうか、いくら魔物の体だからってこの大きさだ、直ぐには消えないよな)
まだ僕は液状の体の中にいた
(でも、これできっとこいつは倒せただろう、あとは、みんながなんとかして・・・)
僕は、そこで意識を失った
「ぶはっっ!!!ゲホッゲホッ!!!」
意識を取り戻すと、僕はクスクの港にいた
「大丈夫か!?心配したんだぞ!!」
この声はレフィさんだ
いったいどうなったんだ?
どうやら僕はまだ死んでいないようだ
「ゲホッゲホッ、どうなったんですか・・?」
僕は側にいたレフィさんに聞く
「いや~~!!ビックリしたぜ!!!いきなりお前が飛び出したかと思ったら、そのまま魔物の中に飛び込んでさ!!??しかもそれっきりな~んも起きないと思ってたら、今度はいきなり魔物が倒れて、津波っつったか?が起きて危うく流される所だったぜ!!敵の攻撃で死ぬならともかく、味方の攻撃で死にそうになるとは!!!」
ケラケラ笑いながらグランさんがまくし立てる
「その後海岸に戻ってみたら、お前が打ち上げられていて・・・っ、兎に角!助かってよかったよ」
レフィさんの顔が赤いけど、それほど心配していたんだろうか?
「と、いうことは・・?」
「そうだ、あの魔物は倒れた、遠征は、
成功だ!!」
隊長が言う
ああ、そうか、僕も役に立てたんだ
皆の役に
「おいおい!!泣くこたぁねぇだろう!?そこは笑う所だ!!」
グランさんに言われて初めて気付いた
僕は泣いていたようだ
「兎に角中央の広場に戻ろう」
ゴウ隊長に言われて、僕は歩き出す
「あのデカ物が出たときゃ駄目かと思ったぜ!!」
「そうだな、でもなんとかなるものなんだな!」
「フーには感謝してもしきれないな」
「そうですよ、フーさんの攻撃が無きゃ僕だって諦めてましたよ」
皆で話ながら道を歩く
広場に着くと
「みなさ~ん!無事でしたか!?」
スーハがやってきた
他の皆もやってきているようだ
そのまま、僕たちはこの国の中で起きたことを話し出した
巨大な魔物についてはスーハたちからも見えていたようだ
突然現れて、突然消えたからビックリしたとか
その前に何かが2つ魔物に飛び込んだように見えたけどあれはなんだったのか
皆に聞かれて正直に話すが、どれも信じられないみたいだ
僕自身も信じられないのだから当然か
兎に角、これでこの遠征も終わりだ
後は帰るだけだ!
・・・?
あれ?なんでこんな・・・?
この感じ、
この、背筋が凍るような、この感じは・・・
僕は周りを見渡す
喜んでいる皆の顔が見える
ただ、スーハだけが、気付いたみたいだ
顔が、いつにも増して緊張している
そう、この感じは
死の、予感だ
今回の敵の補足:
とにかくでかい、その一言に尽きる
体は柔らかいが、魔物の一部なので一口でも口に含んだら即死亡
さらに再生機能あり
弱点は体の何処かにある紅い丸だが、体が余りにもでかいため見つける事はほぼ不可能
フーの超絶ラッキーショットで死にかけたがニアミスに終わる
そこにミコトが根性で食らいついてなんとか討伐
本来の倒し方としては、偉大な魔導士を千人連れてきて一気に吹き飛ばす
つまりムリゲーです、そりゃ遠征なんて成功しないわな・・・