サバイバルの在り方
前方80m、目標、補足しました
(それでは作戦を開始する、3、2、1、GO!)
僕はできるだけ静かに、そして素早く、手足をゴムの様にして目標に近づく
(ここでやらなきゃ、僕が死んじゃうんだ!)
決して気付かれてはならない、少なくとも攻撃範囲までは・・・
その時、目標がゆっくりとこちらを向きだした
(クソッ!こうなったら・・!!)
僕は全力で足を踏み込み、
全力でコケた
派手な音がしたので、目標である犬っぽい猪はすぐに逃げ出した
ご飯を探して1時間、獲得数、ゼロ
「イテテテッ・・」
僕はご飯を探しながら川沿いを、下流に向けて歩いていた
所々木の実や食べられそうな草、キノコなどが生えてはいるが、前世の死因がキノコの毒なので、とても食べようとは思わない
それにこの体なら、きっと簡単に動物が狩れると思うんだ
・・・思い上がりだったみたいだけど
普通に歩いたり、走ったりする分には問題ないのだけど、元の自分のスペックを越える力をだそうとすると、なかなか思う通りにいかない
力が強すぎるんだ
下手に踏み込むと地面が砕けて、思うように動けないし
ゆっくりでは当然、獲物に逃げられる
攻撃手段は考えてあるけど、それにしたって近づかなければ当たりようがない
獲物を見つけるのはそんなに難しいことではなかった
この体になってから、視力も上がっているみたいで、普段なら見逃すような動物でも気付けるんだ
と、そんな時、鹿っぽいのが川で水を飲んでいるのを見つけた
(よし、今度こそは!)
僕はもう、気付かれずに近づくのを諦めた
もういっそのこと気付かれよう
気付いても逃げられないようにしよう
ある程度まで近づいて、
(いっせいの、せっ!!)
全力で立ち幅跳びをした
やはりというか何というか、この体、化け物である
目測40m程の距離を、一気に詰めて、目標は目前である
驚いた顔をした鹿がこっちを見ている
(ここであせっちゃいけない、秘密兵器だ!)
僕は右手に集めてあった小石たちを、軽く振りかぶって、投げた
超常の力で投げられた小石の群れは、目標に向かって亜音速で飛んでいった
すぐに逃げの体制に入っていた鹿の後頭部にHIT!
(よしっ!!僕が考えた必殺技、砕石銃が見事に命中した!)
説明しよう、砕石銃とは、当時中学生の僕が、もしすごい力を手にしたら、どんな技を使うかを考えた結果、コストと威力、命中率に優れたこの技を思いついたのだ!
ありがとう、昔の僕!恥ずかしいぞ、昔の僕!
僕はガッツポーズを解くと、素早く獲物に近づくが
(あ~・・・)
見事に顔が消えていた
威力が強すぎたようだ
兎にも角にも食べれる様にしなければ
(とりあえずは、血抜きかな?)
後ろ足を持ち、頭を下にして、木の枝に引っ掛ける
ここに来て僕の枝に対する好感度は急上昇である、枝loveだ、子供が出来たら名前に枝という文字を一文字入れよう
(そして次は、内蔵の処理か)
魚を捌いた時の知識で処理をしようとするが、生憎包丁がない
僕は川にある石をいくつか割って、鋭利な物を作り出す
こうやって作られた物を打製石器と呼ぶ
本来はこれを研いで摩製石器を作りたいとこだが、間に合わせなのでこれでいいだろう
ビバ!社会科の知識!
とりあえず人差し指と親指に思いっきり力を入れて、毛皮に穴を開け、そこを起点に捌いていく
お尻の穴まで開くと、デロンと胃と腸が出てきた
口の方の端を指で取り出し、肛門のあたりは怖いので、丸々千切り取り、そのまま少し遠くに捨てる
他の内蔵も、生で食べれるところがあると聞くけど、わからないので全部捨てる
次は、皮を剥ごう
皮沿いに石器をいれると案外簡単に取れていった
足のあたりで止まったけど、面倒なので千切る
皮は川で洗って干した
もうそろそろ血抜きもいいと思ったので、肉を下ろして川で洗った
ぶっちゃけ作業中、何度か吐きそうになったけど、気合で乗り切った
っていうかなんでこんな真面目に解体してるんだろ?
これが日本人の性なのか
もったいない、もったいない
かまどは少し開けたところに適当に石で組んで、乾いた木を拾ってくる
動物が肉に寄ってきたので本気で威嚇する
かまどに木を組んで、真ん中に燃えやすそうな枯葉を据える
太めの木を手刀で割って、そこに枝を突き立て、回転させる
火おこしだ
最初は枝がすぐに折れて失敗
次は結構もったけどやっぱり失敗
そんなこんなで失敗しまくる
イラッときた
枯葉に木の粉をかけて、もう片方の割れた太い木を手に持ち
枝を突き立ててた木に、力任せに擦る、擦る、擦る!
流石怪物の力と言うべきか、少し火が出たのでそれを枯葉に近づけて火を大きくする
かまどに火が灯った
危うく満足しかけたけど、肉を適当な大きさに切って炙る
そして齧りつく
「う、うめぇぇ~~!!?」
なんだこれ、何だこれ!?
この世で食べた肉の中で一番おいしい!
僕は焼く手間が億劫になってきて、燃料の枯れ木と共に、何本か枝を取ってきて、火で軽く炙ったあと水で洗い肉を刺す
そしてかまどで一気に炙る
これほど原始的な焼肉があるだろうか
夢中になって焼きつづけていると
(あれ?やっぱりそんなにうまくない?むしろ味がない?)
調味料を一切使わない焼肉の味の無さに気付きだすのであった
*ここで表現されているサバイバルの仕方は作者の妄想です、実体験ではありません、注意してください
なんとなれば異世界だからでご勘弁を