先行視察の在り方
「じゃあソラン、よろしく頼む」
「ほんとは嫌なんだぞ?けどこれが俺の役目だからな、そらやるさなん(略)」
ソランさんは色々しゃべりまくった後、親指の腹を噛んで血をだし針につけ、手の甲に線を書き始めた
タトゥーの水で消えた部分は、自分の血で書いていたみたいだ
そして、線が繋がる直前
『現実と泡沫の狭間、有と無の狭間、朝と夜の狭間、あるべき物を無くし、全てを消して、全てを包め、私が保管庫の鍵の所持者である』
そう唱えた後に、線を繋げた
コテンと頭が落ち、後ろのスペースの物資が瞬く間に消えた
「すごいですね・・・!」
僕は率直な感想を口にする
「そうだな、彼がいなければ、我々の旅はもっと過酷になっていただろう」
ゴウ隊長がそう言った
「それでは進行を開始する!!」
ゴウ隊長がそういって、僕たちは歩き出した
と、そういえば大事な事を忘れていた
「隊長!出来れば前の方を視察してきていいですか?」
そう、僕が魔物の血を吸わなくなってから、結構な時間が経っているのだ
「お前、私の獲物を横取りするきだな?」
レフィさんがトンチンカンな質問をしてきた
「ち、違いますよ!・・・そう、僕はこの先を見たことがないので、ちょっとひとっ走りして、先が見てみたいんですよ」
咄嗟に理由をつけて、説明する
「うむ、まあいいが、無茶はするなよ?」
隊長がそう言った
「はいっ!」
「あっしもついて行くでやんす」
スーハが着いてくるみたいだが、まあ大丈夫だろう
「わかった、一緒に行こう!」
僕たちは少し先に走って行った
しばらく行くと、魔物がいた
「ダンナ、あっしはちょっと催してきたんで、影で小便してくるでやんす」
助かった、これでなんの疑いもなく血が吸える!
「わかった、僕はあの魔物を退治しとくね」
僕は魔物に向かって走りだし、いつも通りに影に入って血を吸った
足りるかどうかはわからないけど、とりあえずは大丈夫だろう
ちょっと戻って、スーハを迎える
「ダンナ、そういえばバンダナはどうしたんでやんすか?」
「えっ?」
そこでようやく気付いた
僕はさっきの村で魔物を狩るとき、口や鼻を覆うバンダナをしていなかった!
不味い、さらに変な奴だと思われる
「これ、あっしの予備でやんす、使ってください」
「あ、ありがとう」
そういって予備を受け取った、スーハ、なんていい人なんだろう・・・!
「まったく、さっきの村でも偶然、口や鼻に血が入らなかったからよかった物を、気をつけるでやんすよ?」
「そうだね、うん、気をつけるよ!」
どうやらスーハは全然疑ってないみたいだ、助かった・・・
そうやってしばらく行き、小高い場所を越えると、大きな川が見えた
「うわ、すごい大きな川だね~」
「そうでやんすね、どうやって渡るんでやんすかね?」
僕は川を観察すると、一本の橋が見えた
「スーハ、橋があるよ!」
「そりゃ助かるでやんす、そういえば魔物が渡ってるんだから、そう言った物があって当然でやんすね」
そうだよね、魔物が船を操縦しているのって、想像出来ないもんね
「それじゃ、もう戻るでやんすか?」
「うん、そうだね」
そうして僕たちは遠征部隊の元に戻って行った
「隊長、この先に大きな川がありました!」
「そうか、ようやくか」
どうやら隊長は川の存在を知っているようだ
「おう!!ちゃんと橋も架かってたぜ!!」
グランさんが言った、なんでその事をグランさんが知っているのだろう?
「どうしてグランさんは、その事を知っているんですか?」
僕は思った事を、そのまま質問した
グランさんはこっちを見て、馬鹿にするように言った
「当たり前だろぅ!?だって俺は数日前にそこを通ってきたんだからよ!!!」
え?だってここは人間の住んでる場所じゃなくて、だからさっきの村も魔物がたくさんいて、・・・??
「そうか、それも説明してなかったな、グランは視察として、補給期間の見極めのため、単独で敵地深くに潜り込んでいたんだ」
な、なんて危険な任務なんだ!?
「へっ!!俺にかかればちょちょいのちょいっよ!!」
グランさんは自慢げだ、うん、それは自慢していい
「なんといっても驚きなのが、この男が副隊長だということだな」
レフィさんが言った、え?副隊長??
「なんだとっ!!??俺が副隊長なのは当然だろ??なんてったって俺は強ぇからなっ!!」
いや強いとかの問題じゃないと思うけど、そうなのか・・・
「うむ、強さは認める所ではあるが、その我侭な性格をどうにかしてくれたら、隊長を譲ってもいいんだが・・」
ゴウ隊長が言う、そんなに強かったんだ、グランさん
「へんっ!!隊長なんてお断りだぜ!!!俺には自由が似合ってるんだよ!!」
そういってグランさんは気にも留めない様子だ
「あ、もうすぐ川が見える場所に着くでやんすよ」
そうスーハが言った
そうして少し歩くと、その言葉の通り、川が見えた
「うむ、じゃあもうそろそろ野営の準備に取りかかるか、そこの少し広くなっている場所で野営を行う、皆準備に移れ!」
ゴウ隊長がそういうと、皆がテキパキと動き出した
「あ、そうそう、ミコト」
ゴウ隊長に呼び止められた、なんだろう?
「お前、遅刻の罰として夜の見張りをしろ」
そうして、初めての遠征部隊での野営が始まった
僕、見張りなんてしたことないけど、大丈夫なのだろうか?
スーハの事ですが、ネタバレになるので言いません
でも、皆さんが思っている通りであっていると思います