表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔血吸の在り方  作者: スクロー
黄昏の出会いと結束の章
32/67

秘密のご飯の在り方

初めて感想いただきました!ありがとうございます!

ビュンッ


風を切る音の後、矢の行方を追うと、一匹の兎がいた

フーさんは、これまで仕留めた獲物の全てを一撃で決めている、恐るべき弓術だ

これも例によって僕が獲物の処理をしていると、フーさんの挙動がおかしくなった

なぜかあたりをキョロキョロと見渡している

そりゃ警戒はすべきだと思うが、それは常にしているし、ここまで警戒しているフーさんは初めて見た

何か大物が迫っているのだろうか?


僕が処理を終えると、フーさんは僕たちを見て、手招きしだした

その時薪を集めていたので、僕もそれに倣う

誘われるまま少し開けた場所に移動すると、即席のかまどを作り、何処に隠していたのか鍋をそこに置いた

その後、食材をいくつか手に持ってまた


『洗え』


と唱え、食材を洗う

ここまでくれば、僕でも何をするかわかった

そしてその後


『水』『水』『水』『水』


と連続で唱え、鍋に水を満たしそこに適当な大きさに切った食材を入れ、さらに塩などで味をつける


『火』


そう唱えて薪に火をつける

後は待つだけだ


すぐに食材のいい匂いがしてきた

山の幸の雑多煮だ

これも何処に隠していたのか、先がフォークのようになったスプーンを取り出して僕たちに渡そうとした


「いや、僕はあたりを警戒しますよ」


そういって僕は断った


「だったらあっしが警戒しやすよ、今日はあまり働いてやせんし、これぐらいはさせて欲しいでやんす」


フーさんは尚も僕たちに勧めたが、流石に先に食べるのは申し訳ない

話し合った結果、強行に主張したスーハが警戒することになった

その間に僕は鍋をいただいた

鍋は兎の肉の出汁と、鮮度が抜群な山菜の風味、キノコのうまみ、わずかな塩味が混ざり合って、とてもおいしかった

それぞれ自身の味もとてもいい

ふと、フーさんの顔を見ると、とてもやわらかい笑顔をしていた

フーさんの顔に表情があるのをはじめて見た

しかし僕が見ているのに気付いたのか、すぐにいつもの無表情に戻ってしまった

いつも笑顔ならいいのに・・・

しばらくして、鍋が1/3ぐらいになったので、全てをスーハに残して僕たちはあたりの警戒をはじめた


「そういえば、フーさんはなんでしゃべらないのですか?」


この機会に、ずっと疑問に思っていたことを聞いてみた

呪文を唱える時は確かに声を出しているので、生来からしゃべれないということはないはずだ

ならば何故普段は無口なのだろうか?

とても気になる


「・・・」


フーさんはしばらく迷ったような、困ったような挙動になった後、僕に向き直り


僕の両肩に手を置いて、口を僕の耳に近づけて

(はずかしい・・から)

と、ささやくような声で言った

その後すぐに僕を軽く突き飛ばすように離れて外を向いた


僕はしばらく呆然としながらその背中を見ていた


「ん?何かあったでやんすか?」


「え、あ、いや、何でもないよ!」


スーハに言われて初めてボケっとしていたことに気がついて、僕も外を向いて警戒に戻った

少し顔が熱かった



その後はまた午前のように食材を集め、渡すのを繰り返した

スーハもだんだん慣れてきたようで、順調に食材を集める

魔物が出た時の行動も同じだ

ただ、フーさんが獲物を仕留めようとして、弓を出していた時はそのまま魔物も射殺してしまった

あまりに一瞬で射てしまうから、僕たちが魔物を認識する前に魔物は息絶えていた

遠征部隊はやっぱりすごい人が多いんだなと、納得した瞬間だ



しばらくして、日が沈んできたので、おそらく最後になる採集をしている

スーハはもう完全に慣れていて、もしかしたら僕より早いかもしれない

もうそろそろ籠がいっぱいになってきたので、帰ったほうがいいんじゃないだろうか


「もうそろそろ帰ります?」


僕はフーさんに聞いてみた


「・・・」


フーさんは相変わらず無言だが、頷いたのでそうなのだろう

僕たちは門の方に歩き出す


しばらくして、フーさんが僕の肩を軽く叩いた

その後にスーハの肩も


「どうかしましたか?」


僕はそう聞いて、フーさんの行動を待つ

フーさんは迷うような仕草をした後


「ああいう話、は、食堂では、しない方がいい、と、思う・・・」


最後の方は消えるような声だったが、そういった

それにしても、ああいう話?何のことだ?

僕たちはしばらく?を頭の上に出していたが、しばらくして、


「昨日・・・」


という言葉を聞いて気付いた

ああ、昨日の溜まってるとかどうとか・・・


「そ、そうですよね!すみません・・・」


「あっしもちょっと配慮がたりやせんでした、すみませんでした」


僕らがそういうと納得したのか、フーさんが前を歩き出した

やはり聞いていたんだな

は、恥ずかしい・・・


僕たちは無言のまま、今日の採集は終わった



晩御飯を終えた僕はベッドの上でボケっとしていた

魔物を退治してもいいのだが、別にしなくてもいいことをわざわざするのもなぁ・・

そんなことを考えていると、ノックの音がした


「スーハでやんす、ちょっといいでやんすか?」


「ああ、大丈夫だよ」


そういって僕はドアを開けて、スーハを通した


「どうしたの?」


「いや、昨日のこと、どうするのかと思いやして・・」


「ぼ、僕はいいよ!ほら、別に今日も変なことしてないでしょう!?」


若干焦りながらそういった


「そうは言ってもダンナ、溜めすぎは体に毒ですぜ?ここらで一発「いいからっ!」そうでやんすか?」


如何に異世界といえど、価値観がいきなり変わる訳じゃない、まだ高校生なのにそういった所にお世話になる訳にはいかない


「とにかく、僕は大丈夫だから、もしその気になったら僕から言うから」


「そうでやんすか・・・じゃあ、あっしはそれだけなんで、帰りやすね」


そういってスーハは部屋の扉を開けた


「・・・」


そこにはフーさんがいた


「・・・」


「・・・」


「・・・」


誰も何も言わずに、時間だけが過ぎていった

よく見ればフーさんの手に毛皮があった

どうやら毛皮はそれぞれがもらえるようだ


「あ、えっと、その・・・食堂じゃないし!」


僕は何を言ってるんだ


「・・・」


フーさんは一つ頷くと、毛皮をスーハに渡して歩いていった


「「・・・はあ」」


僕たちがため息をついたのは、全く同時だった

萌えって、なんですかね

それは、とても難しいと思うんですよ

燃え上がるような感情、う~ん

萌える草木

やはり芽生える感情なのでしょうか・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ