転属の在り方
遠征部隊に配属されたと気付いた次の日、僕は自分の部屋にいた
何故なら指示が何も無いからだ
もし指示があるなら呼び出しがかかるはずだし、兵長に確認しても、
「お前はもう私の部下じゃない、よってお前に指示する必要もない」
などと言って取り合ってくれない
・・・どうすればいいんだろう?
コンッコンッ
初めてまともなノックがこの部屋に響いた気がする
「ダンナ?あっしでやんす、いれてくれやせんか?」
「あ、うん、開いてるよ」
「では、失礼して」
そういって入って来たのは、いつも食堂か戦場でしか合わないスーハだ
「ダンナ、決めやしたか?」
「何を?」
「・・・そうか、ダンナはもう大分前から腹を決めてたんでやんすね」
だから何を?
「・・・ならあっしも腹を括りやしょう!最悪逃げ回ればきっと生きて帰れるはずでやんす!」
随分後ろ向きな決意だな、じゃなくて
「さっきから話が見えないよ、何の話なの?」
「いや、遠征部隊の話でやんすよ?ダンナも転属の話、聞いたでしょう?」
「え、あれって強制じゃないの?」
「そんな訳ある筈ないじゃないでやんすか、死ぬかも知れない事に強制で当たらして、うまく行く訳ないでやんすよ」
あ、そりゃそうか
「でも、僕は強制だって聞いたけど」
「あ~、それは転属して欲しい人がそう言ったんじゃないでやんすか?」
僕の回りで転属を願ってる人は・・・スーハ以外全員だな
「なるほど・・・」
「だからあっしはここ2日、悩みに悩んでたんでやんすよ」
「それでここに来たんだ」
「そうでやんす、ダンナと一緒ならきっと生きて帰れるでやんす」
スーハ、そこまで僕の事を信用しているんだね・・・
「それにうまく行けば報酬もでかいでやんすし!!」
・・・わかってたよ、くそう
「まあ、僕は転属する気だよ」
「ほんとでやんすか!」
「ここでも、遠征部隊でも、どこでも生きやすいとは言い難いけど、遠征部隊には大槌を持った隊長さんもいるし、あの女性の人もいるし、味方に狙われることは少なそうかなって」
「後ろから狙われ続けるのも怖いでやんすよね・・・」
「だから、転属するのも悪くないよね」
「よく言った!!!」
ドカンッッ!!
ドアが必要以上に勢いよく開かれた
そこには半分顔が見えない男がいた
「元気だったか?坊主!」
隊長さんだった
「えっ!!?どうして僕の部屋に!?」
「いやなに、紅い目の奴の部屋は何処か聞いて回って教えてもらったんだ」
「いやだから何故!?」
「そういやお前の部屋も手配しないとな!」
「そうじゃなくて!」
「ああ、そうだな!飯でも食いに行くか!」
嗚呼、会話の一方通行・・・
その後、隊長に連れられて食堂に来た
「おう!俺の分は3倍でな!!」
そう言って、給仕の人から3倍ぐらいの量を貰う
流石に隊長の前で量を減らすほど度胸はないらしく、僕たちも普通の量を貰えた
「それじゃあ話を聞かせてください」
「そうだな、でもその前に、自己紹介だ!」
は、初めて話が通じた気がする・・・!
「俺は遠征部隊の部隊長をしているゴウ・ホーク=ライラだ!ゴウ隊長とでも呼んでくれ!!」
「僕は一 命です、ミコトと呼んでください」
「あっしはスーハでやんす」
「そうか、では、」
やっと本編に入るか・・・
「飯を食おう!!」
わかってたよ、うん、わかってた・・・
暫くご飯を食べながら話をする
「しかし、俺の槌を耐えたのは、どうやったのだ?」
「いや、生まれつき体が強くて」
「ダンナは生まれつきでなれる限度を大きく飛び越えてやすがね」
「ほう、まあいい、スーハと言ったかな?君は何度か見かけた事があった気がするが・・」
「ああ、あっしは何だかんだで兵士になってから長いでやんすから、何度か見かけていてもおかしくありやせんよ」
「そういえばスーハの傷ってやっぱり戦場で?」
「いや、それだけじゃありやせんけど・・」
「そうか、あの反応は戦場で磨かれたのだな」
「命がかかってやすからね」
「そういえば隊長さん、どうして僕の部屋に来たんですか?」
「うむ!この筋肉は日々の鍛錬の賜物だぞ!」
「・・・(さっきまで通じていたのに、急に話が通じなくなった)」
そんなこんなで食事が終わり、最後にゴウ隊長が話しかけてきた
「ところで、転属のことだが、本当にいいのだな?」
「あ、はい、誘われる前から考えてまして、いい機会かなと」
「そうかそうか!それは結構だ!して、スーハ、君はどうだ?」
「あっしは、悩みましたが、ミコトのダンナが転属するなら悪くはないと思ってやす」
「そうか!ならば二人揃って来るがいい!!面倒な事はこちらでしておく、荷物をまとめたら西門に来い!」
そう言って、ゴウ隊長は去っていった
「すごい人だったね・・・」
「そうでやんすね、ああやって隊員を集めているみたいでやんすよ?」
なるほど、突然訪ねて来たのはそういう事か
「スーハは、本当にいいんだね?」
「たった一度の人生でやんす、ここで一花咲かせるのも悪くないでやんすよ!」
「そっか、じゃあまた、西門で!」
「またでやんす!」
そういって僕たちは別れた
果たして、門の向こうには希望が待っているのだろうか、絶望が待っているのだろうか・・・
スーハの話し方が安定しない・・・何度「でげす」って言わせそうになったことか
ゴウ隊長ですが、名前を考えた結果、妙にかっこいい名前に
ホーク=ライラって、なんぞ?
どっかのゲームに出てきそうだ・・・もしかして既にいます?