遠征部隊の在り方
ドンッ!!ドンッ!!
目が覚めた僕は伸びをする
「ん~~~っ!」
命がけの肉体労働を毎日しているので、体がどうしても固まるのだ
今日は夕方から深夜の討伐なので、時刻はお昼を過ぎたくらいだ
ドンッ!!・・・・ドンッ!!
確か今日は遠征部隊の人たちが肩慣らしにくるけど、いつも通りの生活でよかったよな
しかし、遠征部隊か・・・、この生活を抜け出すには絶好の機会かもしれないけど・・・
ドンッ!!!
・・・さっきから鳴っている音は、僕の部屋のドアを蹴る音だ
トイレに行くついでに皆蹴っていくらしい
目覚ましなどには丁度いいけど、楽しいのだろうか・・?
ドンッ!!
まあいいか、僕はタオルを持って井戸に向かった
食堂で、スーハに会う
「おはよう」
「おお、ダンナ!おはようでやんす!」
嫌そうな給仕の男から、食事を受け取り席に着く
あまり目立たない角の席が、僕の定位置だ
「しかしダンナは本当に少食でやんすね?人の5倍10倍は動いてるのにそれだけで足りるんでやんすか?」
「それはスーハも一緒でしょ?」
「いや、あっしは色々間食もしやすし、ダンナほどは動いてやせんぜ?」
まあ、そうかもしれないな
「ん~、まあ昔からあまり食べる方じゃないからかな?」
おかみさんの料理は別だ
「しかしそこまで効率がいいと、もはや神秘でやんす、何か秘訣でもあるんでやんすか?」
魔物の血を飲むことです
「そんなのないよ、体質じゃないかな?」
・・・言える訳がない
「羨ましいでやんすよ、あっしももっと効率がよければもっと稼げるのにぃ・・!」
本気で悔しそうだ
「給仕さんにもっと多めの量を頼んだら?スーハは別に大丈夫だと思うけど?」
「いやいやいや、これはダンナについて回るための税だと思ってるでやんす、そこまですると本気であっしが睨まれるでやんす」
基準は何処にあるんだろう?
そうこうしている内に食事も終わり、持ち場(南門・外)に入る時間が近づいてきた
「じゃあ行くでやんすか!」
「そうだね」
僕たちは僕たちの持ち場に足を向けた
「これは・・・すごいね」
そこには、これまでの魔物が引っ切りなしに沸いてくる光景と違い、魔物が一匹もいなかった
「まあこんなもんでやんすよ」
スーハは経験があるらしく、当たり前のように受け入れていた
「ダンナ、行くでやんすよ?」
「行くって何処に?」
「そりゃあもちろん、最前線でやんすよ」
「・・・持ち場を離れる事になるんじゃないか?」
「何言ってるんでやんすか、あっしらは魔物を狩るのが仕事でやんすよ?門にいないなら、いる場所に行くのも仕事でやんす」
だといいけど・・・
「何か、あんまりよくない気配がする」
「?何か言ったでやんすか?」
「いや、なんでもない」
ただ、同時に行かなければならない気もするんだよな・・・
夕日が、僕たちを照らしていた
しばらくスーハと僕は駆け足で最前線に向かった
「しかし本当にすごいね、遠征部隊」
「そりゃあ領土を取り戻そうって連中でやんすから、生半可な人なんていないでやんすよ」
地面には所々、穴があいていたり、焦げていたり、戦いの跡が見られる
「お、あれじゃないかな?」
最前線が見えてきた
「もう少しでやんすね」
僕たちは足を速めた
最前線では、たくさんの人たちが、僕と同じぐらいのペースで魔物を狩っていた
「じゃあ、あっしはまた後で」
そう言って、スーハが森に消える
味方を抜ける時は、スーハが襲われないように、一旦スーハと別れるのだ
「それじゃあ、僕も行きますか・・・」
僕が最前線に近づいたその時、ある女性と目が合った
自然な茶髪で目は明るい黄土色、スタイルがよく、遠目で見ても美人だとわかった
(綺麗な人だな・・・)
と、見とれていると、その人がやってきた
(あ、目があったからかな?どうしよう、とりあえず南門の兵士だって事を言えばいいかな?)
そういって考えを巡らす内に、今までの経験を思い出す
(あれ?そういえばこのパターンって・・・)
女性は問答無用で斬りかかって来た
「ですよね~~っ!!」
ガキンッ!!
言いながら腕で斬撃を受ける
「・・・」
一撃で腕力の差を感じたのか、攻撃の仕方を変えてきた
キンッ、キンッ、キン、キン、キキンッ、キンッ、キンッ、キンッ、キンッ、ギンッ!
「ちょ、っと、は、な、しをっ、聞い、て、くれま、せん、かっ!!」
とても柔らかく、それでいて鋭い斬撃は決して止まることはなく、次々と連撃を放ってくる
そのどれもをなんとか両手で捌くが、向こうはこちらが攻撃されると不味い、手足以外を的確に狙ってくる
(このままじゃ、いつまでも持たないっ!)
しかし、向こうも同じ事を思ったのか、一旦剣を引いた
(よかったっ!)
「僕は魔物じゃ、」
言いかけた所で、引いた剣が、弓矢の様に引き絞られている事に気付いた
(この型は・・!)
ダイジさんも、何度かこの型からの斬撃を放った、それは最短を最速で切り裂く技
(突きだっ!)
僕は咄嗟に、切先を向けられている心臓を庇った
引き絞られた矢が放たれるように、恐ろしい速度で剣が放たれる
・・・が
(えっ!?)
途中で切先が跳ね上がる
それは心臓を庇う結果、無防備になった頭上に上がり、振り落とされる!
とても柔らかく、美しい、剣技を極めた者の剣だった
一瞬の逡巡の間に、剣が迫る
一秒がとても長く感じる
普通なら今から腕を動かしても、間に合わない
だが、僕の腕は普通じゃない
ゆっくり迫る剣を見つめながら祈る
間に合え、間に合え、間に合え、間に合え!
(間に合えっ!!!)
結果、腕はなんとか間に合い、偶然にも白刃取りの形に落ち着いた
(・・・はぁぁぁ~~っ)
こうなってしまえば、怪力の僕から剣を奪うことはできない
よって話をする猶予があたえられる
・・・はずだった
(・・・・・っ!!)
背筋を襲う恐ろしい予感
それは、この世界に来る直前に幾度となく感じた
そう、それは、死の予感!
僕は剣を離しながら、後方に全力で跳んだ
直後、
『燃えろっっ!!』
女性が唱えた呪文により、剣の下に炎が炸裂する
それは、赤く揺らめく、喰らえば即灰になってしまいそうな程高温の炎
僕が元の世界で想像した
正真正銘の魔法だった
咄嗟って、ルビ振った方がいいんですかね?
それ以外も結構色々大丈夫かなって不安になるんですけど、大丈夫でしょうか・・・
これを読んでくださってる奇特な方は気にしないかもしれませんが、何かあったら感想いただけるとうれしいです
あと、メインキャラが増えるよ!やったねミコ(ト)ちゃん!