表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔血吸の在り方  作者: スクロー
暖かな村と自覚の章
2/67

怪物の在り方

とりあえず投下、誰かが読んでくれたらうれしいです。

「っっっ・・・・・・・・!!!!」


危うく叫びそうになって、何とか声を押さえつける


相手は見たことも聞いたこともない化け物、叫ぶ事で警戒させる事が出来るかもしれないが、それが発端になってすぐに殺される可能性の方が高い


命の危機に瀕したことで、死んでから今までいまいち回転の遅かった頭が、いつもより速く回り出す


痛い、熱い、痛い、嫌だ、いたい、イタイ、アツイ、イヤダ、イヤダ、イヤダ、


左手で右肩付近を握り、一応の止血をする


右肩から心臓の鼓動に合わせて血が吹き出す、嫌な汗が全身から吹き出す


いやだいやだイタイイタイイタイイヤダアツイイタイ


今までだってこんな絶体絶命を生き延びてきたんだ、大丈夫、きっと生き延びる可能性は残ってるはずだ!


太陽に向かって走り出す、と同時に化け物がこちらに飛びかかってきた


イタイイタイイヤダイヤダナンデイヤダイヤダツライイタイ


体の大きさに見合わずとんでもなく速いっ!僕の全力疾走の2倍ぐらいの速さだ


木々を盾にしながら、できる限り不規則に走り太陽を目指す


イヤダイタイいたいいたいいたい痛いよぅ・・・


大量の出血のせいで頭がくらくらする


化け物は僕を追い詰めるよう、僕の通った跡そのままに着いてくる


大丈夫、しっかり冷静に考えればきっと生き残れる


時々背中に掠めるような感覚があるが、振り返らない


痛いよ、熱いよ、寒いよ、辛いよ、痛いよぅ


大丈夫、この先にきっとあそこがある


化け物の追撃を何度となく避けながら、目的地をようやく見つけた


僕は遂にあの美しい崖までたどり着いた


僕が振り返ると化け物がこちらを不満げに見ていた


大丈夫、勝負は一瞬だけど、速さは僕より少し速い程度、大丈夫


僕は自分に少し嘘を吐きながらタイミングを図る


・・・化け物が笑った様な気がした


瞬間飛びかかってくる化け物


僕は奴の股の下を滑り抜ける


野球のスライディングの要領で股下をくぐり抜け、化け物の尻目掛けて蹴りを放つ!


弱者が使う強者に勝つための常套手段、それは他の力を使う事


例えば敵の力、例えば重力、例えば相手の油断、それらをフルに使って初めて弱者は強者に勝てる


これで決まればよかったが、僕の蹴りは空を切った


僕が的外れの蹴りを放った訳じゃない


怪物が、僕の認識できる速度よりはるかに速く動いて視界から消えたのだ


音を便りに右を向くと、やはり奴は笑っていた、僕を嘲笑っていた


そうだ、奴は僕が五感で認識出来ない程の速度で、僕の右手を奪っていった


これまでの追いかけっこは、奴にとってはただの遊びだったのだろう


駄目だ、失敗した、おわりだ、しぬ、しんじゃう


ならば次は、さらにこの命を賭けるのみ!


僕は崖に向けて駆け出し、飛んだ


あの川の所に落ちれば、もしかしたら生き延びれるかも知れない


しかしその希望も、すぐに打ち砕かれる


いつの間にか怪物は僕の後ろに立っていて、飛んでいる僕の足を掴んだ


そしてそのままゆっくり振り上げ、反対の地面に叩きつける


咄嗟に左手で頭を守ったが、脳が揺れる、体が軋む、口の中に血の味が広がる


怪物は握っていた僕の右足を根元から握りつぶした


痛いいたいしぬしぬしぬしぬシヌシヌシヌシヌシヌシヌ


僕は奴の手を左足で蹴り、反動で距離を取る


しかし怪物の遊びは終わったのか、即座に近づき拳を僕のお腹に向けて振り落とした


左足で拳に対抗しようとするが、難なく縦に押しつぶされた


その反動で少し距離が取れたが、もはや僕の命は風前の灯火、春の夜の夢だろう


シヌシヌシヌシヌシヌシヌシヌシヌイヤダイヤダイヤダ


怪物は満足気に僕に近づいて、右手の掌を僕に近づける


万策尽きた僕が思うことは、ただただ一つ


一矢報いてやりたい、何か奴に、少しでいい、蚊に刺され程度でいい、せめて、一矢


左手を動かし、火事場のバカ力で奴の手に噛みつく


僕の足の骨が僅かに手に刺さっていたのだ


そこに全身全霊死ぬ気で噛みつく


奴は少し驚いた様子で僕の左腕を掴み、自分の右手から僕を引き離そうとして、勢い余って僕の左腕を握りつぶした


僕はそのまま放り投げられて中に浮かぶ


世界がスローモーションになる


走馬灯という奴だろうか


色々な事が思い浮かび、それと同時に思考も加速する


死んだと思った、でもまたすぐにGAMEOVARか


まああの美しい崖の方に投げ捨てられたんだから上等か


僕は奴から出た僅かな血と噛み千切った皮を飲み込んだ


シヌ?しぬ?死ぬ?死んだ?もう死ぬの?死にたくない死にたくない


いや~我ながら最後の抵抗は見事だった、うん


なんてったって奴に血を出させたんだから、普通の人間にゃ出来ないぜ


よくがんばったよ僕、えらいえらい


死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない


僕はゆっくり崖に向かって放物線を描く


崖の端に生えている木の枝の下をもうすぐ通り抜ける


嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!


・・・僕の本能はまだ諦めてないみたいだな


あの枝、手を伸ばせば届きそうだな


まあ伸ばす腕がないんですけどね


死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない!


腕があれば、もっとあの化け物に、痛い目に合わせてやれるのに


足があれば、もしかしたらあの化け物から逃げられたかもしれないのに


目に小さな小さな村が見える


あそこに住んでる人たちは、この化け物に対抗できるのかな


もし生きてたら、ここに危険な化け物がいることを警告できるのに


もっと強い腕があれば、もっと強い足があれば、もっと強い体があれば



・・・畜生、生きたいな


お腹の底が熱くなる、今の僕の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃだろう


あの枝に届く腕が欲しい、あの化け物を蹴り飛ばせる足が欲しい、無茶な行動に耐えれる体が欲しい!


死にたくない、生きたい、生きたい、まだ、生きていたい!!








気付けば僕は、枝を掴んでいた

とりあえず主人公覚醒、次号待たれよ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ