旅立ちの在り方
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「そうです、・・・か」
「なに、別に今すぐという訳じゃない、準備として2、3日ならいてもよい」
「わ、わかりました、それじゃあ今日のところは、宿に戻りますね?」
「ああ、それがいいじゃろう、今日はゆっくり休んで、明日準備するといい」
「そう、ですね、それじゃあ、また」
「ああ、またのぉ」
僕は宿に向かって歩き出した
下を向いて、必死に泣きそうになる顔を隠した
声をかけようとした村の人には、体調が悪いと断って
そうやって宿に着くと、おかみさんが2階から降りてきた
「あれ?どうしたんだい?もう帰って来たのかい?」
「は、はい、今日は休憩だそうです」
「そうかい、夕飯はどうするんだい?」
「き、今日はいいです」
「そうかい・・・ゆっくり休みな」
きっと僕の様子から心情を察したのだろう、おかみさんは必要以上に声をかけてこなかった
部屋に戻ってベッドに倒れこむ
僕が外に出ている間にシーツを替えてくれたのだろう、清潔な匂いがする
僕はそのまま、声を押し殺して泣いた
何故なんだろう、どこで間違ったのだろう
血を吸わなければよかったのだろうか?
しかしそれでは死んでいたし、魔物の攻撃で村は滅んでいたかもしれない
じゃあ戦わなければ?
しかしダイジさんだけで、あれだけの魔物を退治出来ただろうか?少なくとも最後の2体は、無傷では済まかっただろう
僕がこの世界に来たのが間違いだったのだろうか?
それこそ、どうしようもない
もういっそ、村を無茶苦茶に壊してしまおうか?
・・・ダメだ、出来る訳がない!
でも、このまま魔物の血を吸い続ければ、いずれは・・・
僕はやはりこの村にいない方がいいんだろう
そういった事をグルグル、グルグルと考え続ける
何故ダイジさんは僕に優しくしてくれたのだろう?
最初から魔物として扱ってくれれば、こんなに胸が痛まずに済んだのに
何故おかみさんは僕なんかを泊めたりしたんだろう?
そうしてくれなかったら、もっと旅立ちは楽だったのに
何故僕はここに留まること選んでしまったのだろう?
なぜ魔物の血を吸わなければ、手足は維持出来ないのだろう?
何故?なぜ?ナゼ?・・・
・・・答えは、出なかった
いつ、どんな状況でも、朝は平等に訪れる
また、日が昇ってきた
散々悩んで、考えて、結局なんにもなんなかったけど、少しだけ気持ちが落ち着いた
明日、出発しよう、また辛くなる前に
1階に降りると、おかみさんが受付に座っていた
「あらおはよう、酷い顔だねぇ、さっさと洗ってきな」
「そんな、いきなりの発言で酷いのはどっちですか」
おかみさんが寄越したタオルを受け取りながら会話をする
・・・このやりとりも、明日の朝で最後だ
僕が井戸で顔と、ついでに体を洗って戻ると、暖かい朝食が待っていた
ご飯と、ハムエッグと、スープと、サラダと、漬物と、果物のジュースだ
僕はいただきますをして、食べ始める
やっぱり今日もおいしかった、普通の定食なのに、何故だろう?
前に聞いたら、
「愛情だよ」
と、答えが帰ってきた
満更嘘でもないのかもしれない
ごちそうさまをして、おかみさんに向き直った
おかみさんに、最初に伝えなければいけない
「おかみさん、俺、明日この村を出発します」
「・・・そうかい、そりゃあ寂しくなるね」
「でも、おかみさんとこの宿のこと、絶対忘れません!」
「ははっ、そうしてくれるとうれしいねぇ、今夜は忘れられないように、より手をかけて料理するよ」
おかみさんは少し涙ぐんでいた
「あ~やだやだ、歳をとると涙もろくてねぇ」
「おかみさん・・・」
僕も、つられてまた泣きそうになった
「そうだ、あんた旅の準備は出来てるのかい?」
「いや、これからしようかと」
「なら丁度いい!手伝ってやるよ!」
おかみさんはそう言うと、僕を連れて村を回った
回った先の村人は、事情を聞くと快く協力してくれた
何故これほど協力してくれたのか、おかみさんに聞くと
「あんたが森から持ってきたもん、みんなに分けてやったのさ」
どうやらおかみさんは、僕が持って帰ったものを、村のみんなに僕の代わりだといって配って回ったそうだ
段々と村の人が優しくなってきたのは、そういう理由があったのだと、この時初めて気付いた
テント、寝袋、ナベ、リュックサック、燃料、火打石、水筒、コート、いろいろな旅に必要な物をもらった
火打石は行商人から珍しいものとして買ったとか何とか
そうしている内にあっという間に夜になり、おかみさんの最後の夕食をいただくことになった
昨日に続いて、さらにグレードが上がった気がする料理は、どれももはや芸術的な出来栄えだった
特性のソースがかかった鹿のもも肉のステーキ、マカロニと野菜がたくさん入ったグラタン、骨まで溶けるほどじっくり煮た魚の煮付け、黄金色のスープ、香り高いリゾット、甘くとろけるようなフルーツ
どれもが全て、極上の味わいだった
僕は食べた、食べた、食べまくった
お腹に余裕がなくてもまだ入った
隠し味の愛情が、どの料理にも溢れていた
「こんなにおいしいものを食べたのは、生まれて初めてです!」
「記憶喪失の人の意見じゃ、当てにならないねぇ」
そう言って、おかみさんは笑った
その夜は、思いのほかぐっすりと眠れた
朝起きて、顔を洗い、朝ご飯を食べて、荷物を持って受付の前に立つ
「本当に行くんだねぇ」
「ええ、行かなくちゃいけませんから」
「・・・止めはしないよ」
「・・・大丈夫です、僕は、きっと大丈夫です」
「そんな顔じゃ、信用できないね」
そういっておかみさんは包を僕に渡した
「昼にでも食べな、簡単なものだけど、少しは足しになるだろう?」
正直僕の今の顔は決壊寸前で、見られたものじゃないだろう
「ほら、行きな!戻ってくるんじゃないよぉ!」
おかみさんの声も、どこか頼りなかった
僕は宿に一礼して、門に向かって歩き出した
道の節々に、村の人たちが見える
みんな、僕を送っていた
門にたどり着いた
ダイジさんがいるかも、と期待をしていたが、どうやらいない様だ
そのまま行こうとして、声がかかった
「ミコト、これを持っていけ」
その声は、間違えなくダイジさんの声だった
僕が振り返ると、ダイジさんが、森に入るときに貸してくれた物を一式持って立っていた
「ぃ、いいんですか?」
「ああ、いいから持っていきなさい」
僕はそれを受け取って、いつもの様に装備した
僕はもう、我慢できなかった
一筋、涙が溢れた
「ほ、ほんと゛うに゛、あ゛りがと゛うございま゛し゛た!!!」
「こちらこそ、ありがとう、向こうでも達者でな」
そういうとダイジさんは僕の肩を押して、向きを変えて、
「ほら、もう行きなさい」
そういって背中を押した
僕は途中、もう一度だけ振り返って、深く一礼し、そのまま歩き去った
「絶対に、生き残ってくれ・・・」
そう呟いて、一筋の涙を流した、ダイジさんのことも知らずに
これにて第一章終幕です。
街、村、国、全てが僕を拒絶した
それでも、僕は生きつづけた
石を投げられながら、それでも諦めなかった僕の前に、現れた人物とは・・・?
次章、黄昏の出会いと結束の心
乞うご期待!
嘘予告です、まあ本文書き終わった瞬間に作ったんでw
全くの嘘かっていうと、そうじゃないんですけどね、なんせ一発書きですから、その時の気分で内容が変わりますから
今日書いた話の別れのアレはリスペクトです、リスペクトって言っておけば大概は許されると思うのです、もしくはトレビュート?
何に対してだよ、って思われた方は気にしないでください
あれかっこいいですよね~