魔法の本
クララは小屋で無題の本を見つける。開くと、城や村、生き物たちがページから飛び出す。本はクララに語りかけ、クララは浮かび上がる存在たちと交流する。まるで彼らが声を聞きたがっている登場人物であるかのように。
穏やかな午後、クララは部屋の中をぶらぶらと歩き回っていた。テーブルの上に古い本が置いてあるのに気づいた。表紙には題名も文字もなく、ただ息をしているような質感があった。彼女はそれを注意深く手に取った。
「誰があなたをここに残したの?」彼女は表紙を撫でながら尋ねた。
まるでそれに応えたかのように、本は優しく振動した。クララがそれを開くと、たちまち部屋は光に包まれた。ページから、天井まで届く塔を持つ、光り輝く城が姿を現した。その周囲には小さな村々や小道、そして歩き手を振る生き物たちが現れた。
「ようこそ、守護者よ」ページから聞こえてくるような低い声が聞こえた。
クララは驚いて見つめた。村の端から小さな騎士が手を挙げた。「やっと私たちに本を読んでくれるの?」と、騎士は澄んだ声で尋ねた。
彼女は微笑んだ。「ええ、読んであげるわ!」
ページが揺れ、子供たちの集団が現れ、文字の間を走り回りながら笑い声を上げた。青いドレスを着た女性が、本の端からクララに身を乗り出した。
「開いてくれてありがとう」と彼女は囁いた。
クララが次のページをめくると、景色が一変した。黄金色の森、頭上を旋回する鳥たち、歌声を響かせる川。生き物たちは皆、彼女の存在に気づいているようだった。
「あなたは私たちの物語の語り手なの?」と、行間から現れたキツネが尋ねた。
「私は聞く者よ」とクララは優しく答えた。
本はさらに明るく輝き始めた。声が合唱のように溶け合った。「私たちを忘れないで」「あなたの物語を語って」「私たちを生きさせて」。クララは、この本が単なる物ではなく、記憶されるのを待つ世界がいくつも繋がっている扉なのだと理解した。
彼女は長い時間をかけてページをめくり、そこに現れる登場人物たちと会話を交わした。どのページも一つの宇宙であり、それぞれの声は宙に浮いたメッセージだった。彼女が本を閉じると、まるで感謝の気持ちを表すかのように、本は柔らかく輝いた。
「必ず戻るわ」とクララは約束した。
部屋は再び静まり返ったが、今やその静寂は物語の形を成していた。




