ハグベンチ
クララは小屋の庭で、華やかなベンチを見つける。座ると、愛情で包み込まれるような存在感を感じる。ベンチには、森が今も記憶している、太古の抱擁の記憶が宿っている。
朝は穏やかで、山小屋の庭は静かに息づいていた。クララはゆっくりと歩みを進め、まるで空気が新しい発見へと誘っているかのようだった。茂みの間に、これまで気づかなかった一脚のベンチが見えた。濃い鉄でできており、肘掛けには繊細な渦巻き模様、背もたれは翼を描いているように見えた。
彼女は近づいた。ベンチは清められていて、まるで誰かが彼女のために用意したかのようだった。腰を下ろすと、肩にやわらかな圧力を感じた。目に見えない腕がそっと抱きしめているようだった。それは不気味ではなく、温かかった。
クララは目を閉じた。ベンチには記憶が宿っているようだった。周囲の空気は響きに満ち、かすかな笑い声、短いささやき、止まる足音が漂った。見えないままに、二人の姿が並んで座り、一人がもう一人を抱きしめていた。その上には、空に浮かぶ淡い桃色のハートがあった。
「誰だったのかしら…」と、クララは小さな声で問いかけた。
ベンチは言葉で答えなかったが、感覚は強まった。クララは、自分のものではない記憶の中にいるのに、それが彼女を受け入れていると感じた。
庭は変わり始めた。花々は彼女に向かって傾き、まるで挨拶しているようだった。風はやわらかく渦を描き、蝶が彼女の膝にとまった。クララは悟った。ベンチはただの物ではなく、愛情の守り手であり、抱擁が時の中に留められる場所なのだと。
彼女はしばらく動かずに座っていた。見えない抱擁は消えなかった。まるで森が「ここでも愛は記憶されている」と囁いているようだった。
立ち上がると、ベンチは一瞬輝いた。クララは感謝を込めて触れた。彼女はまたここに座るだろう、思い出すためではなく、耳を澄ますために。
庭は再び静けさで彼女を迎えた。しかしその静けさは、今や抱擁のかたちをしていた。




