レガシーでの働き
ー自宅ー
支給された目覚まし時計のうるさい音が鳴り響く。
無視してもう少し寝ようかと思ったが、そういえば今日から働くんだった。
無理やり重い体を起こし、顔を洗い、帰る時に買った安い菓子パンを食べ、着替えて家から出た。
するとそこには眠そうに大あくびをしている葛城が立っていた。
「よう葛城元気か?」
『あぁ、二之部か。おれぁ見ての通り元気だよ。今から仕事か?』
「うん、葛城も一緒に行くか?」
『そうだな』
そうして2人でファミレスレガシーに向かった。
ーレガシー前ー
裏口から店に入るなんてなかなかないよな...
そう考えながら裏口の扉を開けると、
なにかしらのバラエティー番組を見ながらくつろいでいる草葉店長がいた。
『お、二人とも~おはよ~』
「おはよう店長」
『おはようって、店長あの番組好きなのか?!』
『私結構バラエティー好きなんだよね~葛城君』
『店長の好きな芸人はなんなんだ?』
『私はいぬっこアースが好きかな~』
「いぬっこアースって店長、同じネタしかしてなくて詰まんなくない?」
『二之部君、私はそういう一回ブレイクしてそこからずっと擦られてるのが好きなんだよね~』
「変わってるってよく言われないか?店長。」
『よく言われるよ~私はそうは思わないんだけどねぇ?』
いや変わってるだろ!そういうつまんなそうなのが好きなだけで変わってるだろ!
『話は置いといて、店長。』
『なんだい?葛城君』
『マニュアルはもう渡してるか?』
『あ』
「え?」
『店長しっかりしろよー』
『ごめんごめん二之部君、すっかり渡し忘れてたよ~』
「えぇ...」
そういうの忘れないでほしいよ...
『え~っとねぇ~これこれ。はいどうぞ~』
「どうも。えーっとなになに...」
(サル以下でもわかる!お仕事マニュアル)
俺サル以下なの?
『店長、渡すマニュアル間違えてないか?』
『えっ?ちょっと見せて!』
そう言われてサル以下でもわかるマニュアルを渡した。
渡されたマニュアルを見るや否や草葉店長の顔は青ざめて、すぐに何かを探し出した。
『本当にごめんねぇ~これがちゃんとしたのマニュアルね~』
タイトルを見ると、
(イヌでもわかる!仕事マニュアル)
何故〇〇でもわかる!って付けたがるんだろう...
内容をよく読むと、
・普通の客にも迷惑客にも丁寧な対応をしよう
・注文を間違えないように!
・食品を落とさないように!
・客は神様だと思ってる馬鹿がいればすぐに店長に報告!
・みんな仲良く働こう!
この街のルールってマジで小学生が決めてるんかな...
「これ本当にマニュアルなのか?」
『そうなんだよ。店長は教えるのがめんどくさいからそれにまとめてるんだ。』
それってありなもんなのか?
『まぁこれでここのやり方はわかったと思うから、初仕事お願いするね~』
『そういう事で二之部!まずは制服に着替えるぞ!』
「お、おう!」
『二之部君のロッカーは103ね~』
そうして連れていかれたロッカーを開けると、
「作業服?」
『あぁすまんかったな二之部。先に説明しておけばよかった。』
「というと?」
葛城は小声で
『実は店長、作業服癖持ちなんだ。』
どういうことだよ...
『作業服を見ると仕事が捗るとか言うもんだから仕方ないんだよ』
「へ、へぇ。」
『まぁ慣れちまえばそんな苦ではないから安心しとけ!』
「てか絶対草葉店長ってよく変わってるって言われてるよな?!」
『そんなことないって~!頭おかしいはよく言われるけど、そんなこともないって~!』
絶対頭おかしいだろこの店長...
『それじゃ、着替えてくれたところで初仕事頑張ってもらうねぇ~』
そう草葉店長が言った瞬間、まるで待機してもらっていたかの様に、客が入ってきた。
「いらっしゃいませーって生川!?」
『お?にのじゃん。お久ー。』
「なんで来たんだ?」
『そりゃ飯を食いに来たからに決まってるだろ!後、カゲさんに呼ばれたってのもあるかな。』
カゲさんって草葉店長の事でいいんだよな...
「店長に呼ばれた?」
『うん。’’飯奢るからきて~’’って呼ばれたよ。タダ飯食えるなんて嬉しいもんだね。』
「店長そんな金あるのか?」
『うん。店長はねーこの街二番に金持ちで一番に頭おかしいって言われてるよ。』
『ちょっと~!そんな事言わないでよ~金持ちなのはそうだけど、別に私そんなに頭おかしくないし!後さぁ~あの不動産屋の方が頭おかしくない?だよね?葛城君』
『すまんが店長擁護できない。家瓜はただ古いもんが好きってだけで別に頭はおかしくない。』
ごもっともな意見だ。
『ちぇ...二之部君!さっさとそのお客様を案内してあげなさい!』
こえ~この店長
そうして生川をテーブルに案内をした。
テーブルの席に座った瞬間、生川はチーズピザとミカンジュースを頼んだ。
しばらくして出来上がったチーズピザとミカンジュースを運び終えると、
『にのお疲れ様。これチップね。』
「この街ってチップがあるのか?」
『そうだよ?ゴトさんから聞いてないの?』
「全くそんなこと言われなかったけどなぁ...」
『じゃあ簡単に説明するね。チップの事については多分にのでも知ってると思うから説明は省くけど、導入された理由はね、ゴトさんが’’チップってなんかいいよな’’という理由でチップ制が導入されたんだよ。』
「へぇ...それじゃあ俺の対応が良かったってことでいいんだよな?」
『そそ。だから有難く受け取っておきな。』
「それなら有難く受け取っておくよ。」
『それじゃ初仕事頑張ってねー』
「おう!」
そう手を振り合い、俺は仕事に戻った...
数時間後...
多分6,7時間程経ったと思う。
あれから色々あった。
客は神様だと言い張る客が現れて、店長に報告すると、対応に向かった店長と言い合いをし、挙句の果てには、店長が『そんなら私が客になりまーす!私は神様です!これで対等だぜ?』とか言い出して1時間位経過していたこともあった。
『いやー2人ともお疲れ様だね。本当にお疲れ様。』
『いつも通りだったな。』
「いつもこんな事起きてるの?!」
『二之部。続けていればいつかなれるさ。』
「慣れるもんかな...」
『まぁ、よく頑張ったと思うよ。これ初任給と合わせた今日の分の給料ね。』
「ありがと。てかなんか分厚くないか?」
初任給とか入っているから分厚いのかな?
と思い封筒を開けると、中には100万程入っていた。
「なんでこんな入っているんだ?初任給って大体20万位だろ?」
『あ~、家今殆ど何もないんでしょ?その金で色々家具買っときなよ~』
多すぎるだろ...金持ちの無駄遣いか?
『まぁ、貰っておきなよ二之部』
「それじゃあ有難く貰っておくよ。」