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ep.7 焦土の決戦

夜明けの霧がマジノソリス要塞を包む中、平原の彼方からエルドラシア本隊の黒い影が迫る。術者500、騎兵200、重装剣兵300――その軍勢は地平線を埋め尽くす。術者の詠唱が空気を震わせ、青い魔力が渦を巻き、炎の柱や雷の閃光が霧を裂く。騎兵の馬蹄が地響きを上げ、重装剣兵の鎧が朝日に鈍く光る。エルドラシアの旗が風に翻り、魔石の輝きが不気味に揺れる。


リディアは丘陵の茂みに身を潜め、SVDスナイパーライフルを構える。彼女の瞳には冷徹な戦意が宿る。視界に、術者のリーダーと思しき青いローブに身を包み、魔石の杖を握る長身の男が映る。彼の周囲で、青い魔力が渦巻き、巨大な炎が平原に這う。


「私が攻撃したら術者を狙え。魔法を封じろ。」


リディアは弓兵達に囁く。


そして、


パーン


とリディアの狙撃銃から乾いた音が鳴った。

リーダー格の術者が倒れた直後、


「攻撃!!!!」


とエランの声が響いた。

そして、弓兵達が一斉に矢を放つ。矢が術者の肩や腕を貫き、詠唱が乱れる。

それに気づいたエルドラシアの騎兵が丘に突進するが、落とし穴に落ち、馬が嘶く。そしてそこをリディアが素早く撃ち抜く。

別の術者が雷の魔法を放ち、稲妻が木々を焦がし、土煙が上がる。


カイルは正門で近接部隊を率い、重装剣兵と激突する。剣が鎧を打ち、火花が散る。血と汗にまみれた彼は叫ぶ。


「押し返すんだ!クロムヴァルトの命運は俺たちにかかってる!」


エランは丘で弓兵を指揮し、術者を狙う。矢が術者の胸を貫き、青い魔力が霧散する。だが、騎兵の一団が落とし穴を突破し、弓兵に迫る。エランは弓を手に、叫ぶ。


「陣を崩すな!リディア殿の指示に従え!」


---


リディアは丘を駆け下り、設置しておいたM2重機関銃を二つ組み合わせたものに乗り込み、騎兵が突進する中、彼女は冷静に照準を合わせ、引き金を引く。


ドガガガガガガガ!!!


と圧倒的火力と威力の弾丸が鎧を貫き、騎兵を馬から引きずり落とす。血が土に染み、馬の嘶きが響く。


黒いローブの術者が杖を振り、巨大な炎の蛇が要塞に向かう。炎が石壁を焦がし、兵士たちが悲鳴を上げる。リディアはSVDを構え、術者の頭を狙う。だが、別の術者が風の魔法で援護し、突風がリディアの視界を揺らす。彼女は素早く身を翻し、M1911で風術者を撃ち抜く。弾丸が術者の胸を貫き、血飛沫が霧に混じる。


炎の蛇が歩兵達を焼き払う。リディアは急いでRPG-7を肩に担ぎ、照準を合わせる。ロケット弾が火を噴き、炎の蛇を突き破り、術者に直撃した。術者の体が粉々に砕け散る。それを見た術者が膝をつき、掠れた声で言う途切れる。


「な…なんなんだ…クロムヴァルトのクソッタレどもは魔法が使えないんじゃなかったのか…!?」


そうして、エルドラシア兵に戦意を喪失するものも出始めた。


その間にも弓兵が矢を放つ。矢が術者の喉や胸を貫き、魔法の光が消える。だが、リディアが捌ききれなかったエルドラシアの騎兵が丘に突進してきた。

それを歩兵の何人かが止めようとする。しかし、制止を振り切って弓兵の列に突っ込んだ。


「ぎゃあああっ!!」


馬に踏み潰され、剣で刺され…どんどんクロムヴァルト兵の死者が増えていく。


「クソッ!!」


エランがパシュンと素早く騎兵を撃ち、体勢を立て直す。


正門でもカイル達が重装剣兵を押し返そうと努力するが敵の数が圧倒的だ。


その時、遠くから馬車がやってきた。


「おーい!!!」


その声の主はガルドだった。


「何を考えている!!ここは戦場だぞ!!」


リディアが激しく叱責するが、ガルドは言う。


「嬢ちゃん!!あんたの銃ってやつをとうとう量産できたんだよ!使ってくれ!!」


クロムヴァルトから急遽運ばれた試作品のAKライフルが、要塞の兵士に配られた。ガルドがクロムヴァルトで人員と技術を総動員し、完成させた数十丁ほどの試作品は、魔石弾の爆発力が向上している。

矢が尽きた弓兵たちは輸送業者達からAKの試作品を手渡された。


「連射はするな!なるべく一発で仕留めろ!!」


リディアの声に従い、兵士が試作品を構える。魔石弾が術者の胸を貫き、青い魔力が霧散する。だが、銃身の熱がうまく排熱されず、一部の兵士が銃を落としてしまった。リディアは冷静に指示を出す。


「銃が熱を持ったら水を掛けろ!応急処置だ!」


カイルは正門で剣を振り、重装剣兵を投げ飛ばして刺し殺す。彼の部隊は槍兵と連携し、敵を押し返し始めていた。カイルは血に濡れた剣を握り、叫ぶ。


「リディアの戦術を信じろ!俺たちで門を守れ!」


エランは丘で弓兵を鼓舞し、術者を次々と仕留める。だが、またもや騎兵が弓兵に迫りくる。だがそれは先程とは違く、弓兵達のAKの連射によってすぐさま排除された。



戦場が膠着する中、黒いローブの術者が新たな魔法を準備する。杖を高く掲げ、地面から黄色い魔石の柱が突き上がる。柱から放たれる雷の波動が要塞を襲い、壁が崩れ始める。リディアは丘の頂に戻り、SVDを構える。術者の額を捉え、引き金を引く。弾丸が頭を貫き、術者が倒れる。魔石の柱が崩れ、雷の波動が弱まる。


その時、別の術者が炎の魔法を放ち、業火がリディアに襲いかかった。


(ああ…こんな時にまで…)


リディアは思わずシェラハードの記憶を思い出してしまい、反応が鈍った。


(まずい…!やられる…!!!)


リディアが覚悟した瞬間、


「リディア様ぁぁぁあ!!」


一人の兵士がリディアを庇う。そして彼に火球が直撃した。


「ぐわああぁぁぁぁぁっっっ!!!」


炎が彼の体を嬲り尽くし、たちまち消し炭になってしまった。


彼女は素早く身を翻し、炎術者を撃ち抜く。血が土に染み、炎魔石の光が消える。エルドラシア軍の士気が揺らぎ、騎兵が混乱し始める。


(なぜ私のために…)


と兵士だったものを見つめ自身のトラウマとそれを繋ぎ合わせながらリディアは考える。


「何やってんだ!!!あんたがぼーっとしててどうすんだよ!!」


直後、カイルの声でハッとしたリディアは思考を中断し、即座に戦いに戻る。


リディアはRPG-7を再装填し、騎兵の密集した一団を狙う。ロケット弾が炸裂し、馬と騎兵が吹き飛ぶ。爆発の衝撃で土煙が上がり、敵の隊列が乱れる。カイル達がエルドラシア兵を完全に押し返し、弓兵が術者を仕留め続ける。


「突撃!敵を殲滅しろ!」


リディアの声が戦場に響き、クロムヴァルト軍が一斉に前進。槍兵が騎兵を突き刺し、弓兵がさらに術者を射る。試作品のAKを持つ兵士が魔石弾を撃ち、術者の魔法を封じる。エルドラシア軍の隊列が崩れ、退却が始まった。


---


夕暮れ、戦場に静寂が訪れる。平原は血と魔石の破片で覆われ、焦げた木々が立ち尽くす。


「勝った…勝ったぞおおおおおお!!!!!」


兵士たちの喊声が響く。リディアは丘に座り込み、AKを下ろす。彼女の戦闘服は新たな血で汚れ、少し火傷が痛む。彼女の瞳には微かな安堵が宿る。


カイルが血まみれの剣を手に、笑顔で近づく。


「リディア!!また勝っちまったぜ!!どうやら戦の女神は俺たちに微笑んでるみたいだな!!」


エランが弓を肩にかけ、敬礼する。


「リディア殿、貴女の指揮がなければ、我々は持ちこたえられませんでした。」


リディアは静かに答える。


「…ああ」


彼女の中ではまだあの名もなき兵士のことが頭に浮かんでいた。


クロムヴァルトでは、ルナリアが勝利の報を受け、城の広場で民に向けて演説をする。髪の毛が風に揺れ、彼女は叫ぶ。


「皆さん、私たちがとうとうエルドラシアに勝ったわ!クロムヴァルトの希望は、皆さんの手で守られたのよ!」


民衆が歓声を上げ、ひと足先に帰還したガルドが鍛冶場で試作品を手に笑う。


「嬢ちゃんの銃、やってくれたな。次はもっとちゃんとしたのを作ってみせるぜ!」


---


夜、リディアは自身の手で名もなき兵士を丁重に弔った後、クロムヴァルトへと戻った。クロムヴァルトでは前回とは比べ物にならない程の歓声が巻き起こっていた。


エルドラシアの兵力は壊滅し、国民の戦争協力度も地に落ちただろう。

そんなことを考えていると、ルナリアが駆け寄りリディアを強く抱きしめた。


「リディア!!よかった…無事で…」


彼女が泣きながら言う。


「そんな泣かなくても…」


と、言いかけたところで、リディアは黙ってルナリアを受け入れるのだった。

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