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第2部 その1「流れ星だよー」

 レイラ・レイラックは窓から外の景色を見つめた。見渡す限り真っ暗だが、遠くの方に瞬く光が見える。レイラック家の専用機はレイラひとりを乗客に、暗闇の中を進んでいた。


「ふふふっ」


 まだまだ距離はあるが、目的地へは近づいている。その事実にこらえきれず、レイラは小さく笑い声を上げた。長く、透き通るような金髪が揺れる。

 バカンスを利用しての短期留学はこれで二回目だ。向かうは憧れの日本。

 前回は父の意見に従って別の国にしたが、当初の予想通りあまり楽しめなかった。それどころか、嫌な思い出までできてしまった。あの国は優しさと下心の区別がつかない。

 だから、今回は反対を押し切って日本への留学を決めた。今からわくわくして仕方ない。


 日本はとても良い国だと聞いている。治安、利便性、国民性、食べ物など申し分ないらしい。父の経営する企業の関連会社もある。そして、何よりもアレがある。父が反対する理由が理解できない。

 レイラは座席の前に据え付けられたモニターに、視線を移した。蛍光色のバトルスーツを着た女の子が、空を飛び回り怪人と戦っている。

 レイラは日本の変身ヒロインアニメが大好きだった。


 きっかけはまだ小さい頃、たまたま見た動画配信だ。翻訳もされていなかったので、何を言っているのかはわからなかったが、レイラにとっては衝撃だった。

 父に頼み込み、家業の手伝いをするという条件で映像ソフトを買ってもらった。何度も何度も見た。翻訳されたそれは、レイラを高揚させるには充分ではあった。ただ、あの時ほどの衝撃は感じなかった。その理由に気付くまで、それなりに時間がかかってしまった。


 声の問題だと気付いたレイラは、日本語の猛勉強を始めた。元々優秀な頭脳を持っていたため、あっという間に大抵の台詞を理解し聞き取れるようになった。併せて日本の文化を学び、よりいっそうの憧れを抱くようになる。

 本来の音声で視聴すると、あの時の気持ちが戻ってきたような感覚を得られた。感動のあまりレイラはひとり、涙を流した。


 大企業の経営者を父に持つレイラの周りには、人が絶えなかった。その威光に預かろうとする者もいれば、美しい容姿に惹かれる者もいた。もちろん、友情を育む相手も少なくない。社交性も優しさも、人並み以上にはあるつもりだ。

 ただ、趣味を分かち合う仲間には恵まれなかった。それを寂しいとは思えど、悲しいとは感じない。遠い国の、その中でも偏った嗜好なのは理解していたからだ。


 だからこそ、日本に行くのが楽しみで仕方がない。聞くだけでなく、話す方もたくさん練習した。少し発音に違和感はあるけれど、聞き取れない程ではないと思う。

 趣味の話が通じる相手と知り合えるとは限らないが、可能性はあるはずだ。それで浮いてしまったとしても、短期留学だし早めに切り上げてしまえばいい。


 思い起こすと、前回の留学は散々だった。

 仲良くなり信頼できると思った男の子に全てを話したら、逃げるように去っていかれてしまった。あれは辛かったし、その後の対応も大変だった。反省は生かさないといけない。

 次は、早めに宣言してしまおうか。いや、もっと深く知り合うまで黙っておくべきか。


 期待は多めに、不安は少なめに。

 想像を膨らませたレイラは、いつの間にか眠りに落ちていた。


『お嬢様、間もなく到着します』


 運転席からのアナウンスで、レイラは目を覚ました。

 どれくらい眠っていたのだろう、窓からは青い海が見えていた。


『シートベルトの装着をお願いします』

「はーい」


 シートに深く座り直し、ベルトを装着する。

 アニメを流したままになっていたモニターの電源も落とす。


『管制の許可が出ました。着陸準備に入ります』


 専属運転手の声からしばらくして、レイラを乗せた宇宙船は大気圏へと突入した。





「あ、よういちー、流れ星だよー」

「こんな昼間によく光るなぁ」

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