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1 私のこと、褒めてくれますか?

 ずっと心がふるえてる。


 いつも笑っていたい。

 あなたとどこかで偶然、出会ったときも絶対に笑っていたいから。

 あなたに私の笑顔を見てもらいたいから。

 ……心から安心して、欲しいから。


 私のこと、褒めてくれますか?


 真っ白な大地の上に一つの足跡が伸びている。

 その足跡は山の中を進み、森を抜けて、白兎姫の住んでいる山奥の家の前まで伸びていた。

 白兎姫の住んでいる家はとても小さな家だった。

 その家の中で白兎姫は泣いてばかりいた。

 悲しくて、寂しくて、辛くって、ずっと泣いてばかりいた。

 そのことをその足跡の主はずっと昔から知っていた。


「こんにちは、白兎姫。いるかい?」

 そう言ってとんとんと白兎姫の暮らしている小さな家の玄関の扉を叩く音がした。

「はい。どうぞ」

 そう言って白兎姫が玄関を開けると、そこには白兎姫の予想通りの人がいた。

 そこにいたのは小さな女の子だった。

 小柄で黒髪の真っ赤な色をした鮮やかな牡丹の刺繍がされている立派な着物を着ている女の子。

 背中には薄い紫色をした風呂敷に包んだ荷物を背負っている。

 頭の上には笠をかぶっている。(笠の上には白い雪が積もっていた)

 その顔はにっこりと笑っている。

 一見すると都や近くにある小さな村にでもいるような、普通の小さな女の子に見える。 

 でも、その女の子には普通とは違うところが一つだけあった。(そもそも、普通の女の子は一人でこんな雪の降る寒くて山深い場所にまで、やってきたりはしない)

 それは『女の子には頭に角が生えている』、と言うことだった。

 小さな女の子の額には確かに二つの角が生えていた。

 それほど長い角ではないけれど、それは確かにその場所にあった。

「いやー、参った、まいった。思ったよりも山登りに時間がかかってしまった」

 ふふっと笑いながら女の子は言った。

「まあ、薄明ちゃんにしては珍しい。山の中で迷ったりでもしたの?」

 同じようにふふっと笑いながら、(角の生えた女の子を家の中に招き入れながら)白兎姫はそういった。

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