〜1日目〜
何か仕掛けでもあるのではないかと疑ってしまう程に空きの目立つ本棚と、半球の形状をした暖炉が存在感を主張する小さな部屋がある。
暖炉の反対側には質素で角張ったオークダークの木の机があり、同じデザインと色の少し大きめの二人掛けの椅子がセットになっている。
机のやや左側にある窓から見える景色はまだ眠りについていて、早起きな鳥たちの歌声が心地良く響き渡っている。
世界と同じく椅子の上で猫のように丸くなって眠っているミミだったが、特徴的な大きな耳は周囲の音にピョコピョコと反応していて、動物のように自然の音楽を楽しんでいる。
そんな愛らしい彼女の耳に突然不快なノイズが混じる。
「う~っす!ミミ店長!商人ギルドのエイルに店を押し付けられたんだって?」
いつも通りの軽いノリで挨拶をしながらミミと一緒にブリランテ公国へと派遣された冒険者ギルドのアドルが部屋へと入ってくると、物珍しそうな目でまだほんのりと薄暗い部屋の中を見回しミミを探した。
前日リシアに痛い所を突かれ冒険者ギルドを飛び出してきたミミは、商人ギルド長であるエイルが用意した事務所で不貞寝を決め込んでいたのだった。
アドルの声で少し眠りから覚めたのだろうか?ぐっすりと寝ていたミミだったが寝言を言い始める。
「むにゃむにゃ…はっ!!本棚の中にパンがっ!!」
状況がよく分からない寝言を繰り出すと、ガバっと起きたミミは勢い余って椅子から落ちる。
普段と何も変わらぬ光景に安心したアドルは、まだ少し寝ぼけているミミに話しかける。
「あのなミミ?本棚は本を入れる場所だ。パンは入ってない。そしてもうすぐ夜明けだぜ?そろそろ起きろな?」
夜は魔物が本来の力に目覚めるが故に冒険者たちの朝は早く、探索などは昼間に行うというのが彼らの基本行動であり常識なのだ。
ふと現実へと戻ってきたミミの頬は赤くなり、ジワジワと恥ずかしさが込み上げる。
「う…うっさい!ばかアドル!本棚の仕掛けなんだよ!パンが大事なんだよ!」
「そりゃどんな仕掛けだよ!めっちゃ気になるわ!っつか冒険者協会の頃からの長い付き合いなんだから、恥ずかしがるような事でもないだろ?」
今でこそ冒険者ギルドと名乗ってはいるが、その前身は冒険者協会という小規模な冒険者たちの集まりに過ぎず、二人はその協会時代からの仲間だった。
アドル自身はトレジャーハンターを名乗っており風変わりな格好も冒険者というよりは探検家だ。
特に彼のツンツン頭に掛かっている魔導ゴーグルは探検家が好んで使うアイテムであり、冒険者が使用しているところは見た事がない。
しかしアドルがお宝と呼べる程のものを発見した事はほとんどなく、冒険者ギルドの仲間たちには宝探しに行くと言えばネタだと思われ、からかわれる始末だ。
ミミとのたわいもないやり取りに「ははは!」と爽やかに笑うアドルは、話を本題へと移しミミに質問をする。
「なぁミミ?エイルから引き受けてしまったものは仕方がないが…商売のやり方分かってるよな??」
真顔で核心を突くアドルの言葉が流し目のミミに刺さり耳が下がる。
嘘や誤魔化しを見破るのは得意なミミだったが、それをする側になると全然ダメだ。
人差し指の先端同士を突き合い吹けない口笛を吹こうとする古典的な誤魔化し方まで披露している。
「だよな。いや、俺が呼ばれた時点で察しは付いていたさ。」
「だってエイルのヤツ。何も説明しないで任せた!って逃げたんだよ!」
「そりゃひどいな。でも引き受けちまうミミだって…」
「思い出したらイラッとしてきた!アイツの討伐依頼を冒険者ギルドに出してやる!」
「おいぃぃ!まぁ、程々にしてやれよ?ギルド戦争とかにならないようにな?」
頭を掻き悩ましい仕草を見せるアドルだったが、深く息を吐くと決心した顔つきへと変わる。
「しゃーない!俺が基本からみっちり教えてやるか!ギルドではミミの方が上だが、ここでは俺の事を先生と呼んでもいいんだぜ?」
「おおお!先生!!よろしくお願いします!」
アドルの一言で途端に輝き出す目とシャキッとする耳に、アドルは心の中で(犬かよ!)とツッコミをせずにはいられなかった。
しかし教えるとは言ったものの、正直なところ冒険のことしか頭にないミミにどうやって教えたら良いものか分からないアドルは、とりあえず基本的なところから質問をし様子を見ることにする。
「ではまず商売をするのに必要なものは何だ?」
「んと……!才能だっ!」
「あのな、身も蓋もない事を言うなよ。それだと既にゲームオーバーだぜ?」
「そっか!…ん?どういう意味だ!こらぁ!」
「いやほら!必要なものの話をしような?お店なんだから、まずは商品が必要だろ?」
噛みつきそうなミミの注意をどうにか話へと戻したアドルは、すかさず続ける。
「基本的には安く仕入れて高く売る!これができていれば問題はない!当然の事だな!」
「なーんだ!簡単じゃんっ♪」
「そうか?じゃあ、ここにアクセサリーがある!今公国で流行りのものなんだが、これを1つ250CRで仕入れてほしいと交渉されたらどうする?」
CRというのはこの国の通貨の単位であり<Crystal>の頭文字を取ってCRと表記される。
「流行のアクセサリーなら売れるじゃん!もちろんオッケーだよ!」
ウィンクをしながら得意気に親指を立てるミミにアドルがきついチョップをくらわせると「うにゃー!!」というミミの悲鳴が部屋に響いた。
「あのな…これは売値の相場が200CRのアクセサリーだ。それを250CRで仕入れてたら赤字だろ?こういう知識がないと仕入すら満足にできないんだぞ?」
結果など分かりきっていたアドルはミミに優しく教えようとするが、ふとミミに目をやると彼女の耳は閉じていて聞いていなかった。
少し不貞腐れた顔で肘をつき、顎を乗せて外を向いている。
やっぱり座学はダメか?と悩むアドルだったが、めげずに方向を変え冒険に関連させて話を続けた。
「よーし、それなら!回復薬を5個持ってダンジョンに挑み200CR獲得しました!これは…」
「はぁ!?何だそりゃ!!大損じゃん!!」
アドルが言い終わる前に食いついたミミが答えた。
彼の予想通り、やはり冒険絡みになるとミミの頭は良く回るようだ。
「そうだぞミミ!こういう基本的な知識が大事なんだ!じゃなければ冒険者なんてやってられないだろ?」
「なるほど!分かりやすいです!アドル先生!」
途端にやる気になるミミをアドルが見逃すわけもなく、間髪をいれず更に話を進める。
「ではダンジョンで討伐したモンスター…そうだな。プチの素材を手に入れました!これを1つ150CRで…」
「売れるわけないじゃんっ!どんだけ上乗せしてんのさっ!悪徳商人だな!」
「そうそう!安く手に入れたものは高く売りたいんだが、高過ぎてはダメだ!ちゃんと適正価格の範囲内で売らないとな!」
「ふむふむ!安く手に入れて、適正範囲内でできるだけ高く売る!バッチリ覚えたぜっ!」
すぐに調子に乗るのはミミの短所であり長所でもあるのだが、またやる気を失くされても困るアドルはポンポンと優しくミミの頭を叩くと、小さい子供に接するように彼女を褒めた。
犬みたいに嬉しそうに笑顔になるミミを見てアドルの心も温かくなり、大好きなペットとスキンシップをしている時のような感覚になる。
「さて、1度にたくさんを教えても覚えられ…大変だからな!今日はこのくらいにして、実際に商売を始めてみたらいいさ!分からずともやっていれば次第に覚えるもんだぜ?」
この後ギルドで雑務をこなした後、日課のトレジャーハントの予定があるアドルは、言いながら帰り支度を始めた。
「さてと、また何か分からない事があったら呼んでくれよな!朝と夜だったら顔を出せるからさ。それじゃ頑張れよ!」
「え?何言ってるの?アドルもここで働くんだよ?」
「…は?」
ミミが冗談を言うタイプではないことをアドルは良く知っている。
彼女がそう言うのであればこれはもう決定事項なのだろうが、それでも一応は無駄な抵抗を試みる。
「いやいや、俺もやる事があるからさ。伝説の宝が俺を待ってるんだぜ!」
「ならアドルも討伐依頼のリストに加えようっと。アドr…」
もう一度言うが、ミミは冗談を言うタイプではない。
もちろん断れば本当にこのままアドルの名前もリストに入るだろう。
「だーもう!!分かった!俺も手伝うからやめてくれ!エイルと違って俺は本気で討伐されそうだしな」
「そかっ!手伝ってくれるか!じゃあコッチでもよろしくね!」
「ったく、ウチのギルド長には敵わないや!」
どこかこうなる事が分かっていたアドルは爽やかに笑って気持ちを切り替え、開店の準備をするために事務所内にある倉庫へと移動する。
どうやら商品についてはエイルが試験的に用意しておいてくれたようで、武具や書物・雑貨に生花や食料まで、幅広い品揃えで在庫についてもそれなりの数がある。
「さすが世界3大ギルドの1つ商人ギルドといったところか?後はこれらが尽きる前に仕入れの方法を確立させなければ、公国で最も早く潰れた店として不名誉な形で商人ギルドの名を轟かせる事になるってわけだな。求められている品を見極め、人脈を使って仕入れを行い、軌道に乗せろと。それで俺をご指名か。ホント商売の才能だけは神がかってるな。」
ここまでの全てはエイルの計算通り。
癪ではあったが、ミミに話をしてから1日も経たないうちに抜かりなく開店準備を完了させたエイルの手腕を、アドルは認めざるを得ないのだった。
「まずは全部の商品を並べてみて、需要の動向を探るところからだな。」
ミミに指示をしようと表に出たアドルは、目の前の光景に思わず言葉を失った。
世界は眩く煌めき始め、露店は既に商品で埋め尽くされている。
そう、露店は既に商品で埋め尽くされている!!
「あ、アドルー!!どうだ、私のこの商売の才能は!エイルにだって負けないぜ!」
ジャジャーン!と効果音が鳴りそうな程とても得意気な顔でアドルに露店を見せるミミだったが、そこに並んでいたのは武器や防具、回復系や攻撃系の戦闘アイテムばかり。
それはもう冒険者用品の専門店と言っても差し支えない程に一般客向けの商品が並んでいない上に、倉庫にあった品なので全てが初心者用だ。
「あのな…ミミ。この程度の装備やアイテムは冒険者ギルドのメンバーなら誰にでも支給されるよな?」
「だね!って事は、必要な品なんだから絶対売れるよね!さっすが私!」
「そうだぞー。必要な品だから支給されるんだぞー?つまり買う必要はないんだ。分かるかー?」
投げやりな態度と呆れた目でツッコミを入れるアドルを見て、ミミはようやく自分の失敗に気付いた。
「じ…じゃあ何で用意されてるのさ!売れるからでしょ!?」
「こういうのはな、一般市民が自衛のために買うんだ。防災用品みたいなもんで、それほど需要は高くない。」
「な…!!」
どうにか反論したかったミミだが流石にアドルの言うことが正しいと理解できたようで、拳を握ったかのように丸くなっている耳からもグッと堪えている様子が分かる。
それを見ると呆れていたアドルも気を取り直し、ミミを元気付けながら指示を出す。
どうにか全ての商品をバランスよく、そして客の目を引くように配置し終えた頃には、市場にお客が見え始めていた。
「さーて、それじゃ始めようぜ!ミミ店長!」
「よっし!やってやるぜ!」
やがて公国一とも謳われる事となる伝説の店は、この瞬間に幕を開けたのだった。
ーーー
あまりの騒がしさに衛兵までもが出動する騒ぎとなっている商業区の中央広場の端では、一般区の人気者ミミがお店を始めたという噂でとてつもない人集りができていた。
もちろん噂の出所はエイルなのだが最早そんな事は関係なく、ここまで来ると人が集まる原因はミミでも露店でもなく人そのものだ。
騒ぎの中心にいるアドルとミミの胸は躍り、初日から伝説の1ページを刻む事を確信していた。
だがーー
「おい…ミミ店長?」
「何だね?バイトのアドル君。」
「俺はバイトなのかよ!っつうか、さっきから人の多さの割に何も売れてない…よな?」
「偶合だねアドル君。私も同じ事を考えていたよ。」
「よく偶合なんて言葉知ってたな…」
「でも何で売れないの?」
「俺も自分がアホかと思ってるよ…そりゃ当然だよな。並んでいる品物を見てみろ?どこにでもあるような普通の品で、価格も普通。わざわざここで買う意味はないだろ?」
確かにエイルの目論見は成功したのだが、それは半分だ。
すなわち話題性に関してはこれ以上ない程の成果を挙げたのだが、肝心の商品についてはコストを節約しようとした事が仇となり、他店との差別化を図れず売り上げは伸び悩んでいた。
「このままだとマズイのは私にも分かるよ。どうするアドル?」
「幸いまだ人集りは続いている。今のうちに対策を考えるぞ!」
目に見えて焦り始めるミミとは対照的に冷静に今できる最善の手を考えるアドル。
次第に少なくなっていった人々の間から見える街頭の灯が、2人に夜の訪れを教えてくれた。
まだ注目のある内に方向転換をし価格を大幅に下げた事が功を奏したため、辛うじて首の皮一枚繋がった状態に留めることはできたが、話題性を繋ぎ止めるまでには至らなかった。
「おつかれ〜アドル。」
「おう…ミミ店長。ホント疲れたな。」
「あんなに人いたのに…売れ残ったね。」
「商品に問題ありだったな。俺も気付くべきだったぜ。」
「どするの?明日も同じような商品しかないよ?」
元気なく垂れ下がっているミミの耳を見るとアドルは思考を巡らせ、ミミにも教えるかのように声に出して現状を確認する。
「そりゃどうにかして他店との差異を強調したいのは言うまでもないが、肝心の仕入れルートもお金もまだない状態だ。オマケにミミも慣れない作業で…ん?慣れない作業??」
そこまで言うと、激務の割に得られたものがなく疲れ切っていたアドルの目に輝きが宿る。
「そうだよミミ!俺たちは冒険者が本業だぜ!どうして気付かなかったんだ!」
「そうか!そうだなっ!こんな店放っておいて、冒険に行こうぜっ!」
ド天然なミミの回答に思わずコケるアドル。
「違うだろ!!俺たちの店でしかできない事があるだろ!?」
「…夜逃げ?」
「初日からかよ!!そりゃ伝説だな!!」
疲労困憊のアドルは、とりあえず座って冷静に話をしようと促す。
ミミも彼の提案を受け入れ、アドルの向かいに座った。
「いいか?俺たちは冒険者だ。本来なら商人相手に売るはずの探索で得た素材を、自分たちの店で直接扱えるんだ。どういう事か分かるか?」
「うーん……はっ!!私たちは卸売の商人から商品を買う必要がないって事か!」
「その通りだ!自分たちで採取した素材を直接売ればいい!もしくは加工品を売るのもいいだろう!」
「なるほど!それなら一般に流通しているものよりもレアな物を売れるし、仕入れ費用も抑える事ができる!!何より私が楽しい!!素晴らしいぞアドル君!」
冒険者たちが探索で手に入れた素材などは、余程稀少な物でもなければ全て商人に売ってしまうのが基本だ。
その商人がミミたちの言っている卸売商人に分類され、冒険者などから素材やアイテムを買い取り露店の商人などに売る専門の人たちだ。
当然その分仕入れ価格は高くなるので露店商人は冒険者から直接仕入れたがるのだが、通常の露店商人は素材の良し悪しや適正価格の知識までは有していない。
更には真っ当な冒険者ばかりとは限らず、商人を騙し粗悪品を高額で売りつける者も中にはいる。
そのようなリスクを避けるため、鑑定のできない露店商人は多少高くとも卸売商人を利用するのだ。
しかし露店商人の本業が冒険者であるならば話は違い、先程ミミが言った通りである。
無論商人の利権を守るためギルド間条約によって冒険者の直接販売は禁止されているが、その商人ギルドの長であるエイルから販売許可が出ているのならば違反にはあたるはずもない。
ミミがこのような仕組みを知っているとは到底思えないが、それでも彼女の次の質問にアドルは一驚を喫した。
「でもさ、冒険者が直接販売ってのはエイルが色々とマズイんじゃないの??」
「っ!!ミミ…時々鋭い所があるよな。それも獣人族の察知スキルなのか?」
「いやいやいや、常識だよアドル君」
旧に博識を気取り偉そうになるミミが面白くて、アドルは少し意地悪を言う。
「あぁそうかい。なら説明しなくても分かるよな?」
「うっ…一応確認のために聞いているのだよ!」
「じゃあまずミミがどう考えているか聞かせてもらおうか?」
「ア、アドルが言うんだよっ!」
もう少し続けたかったが、これ以上はミミが怒り出しそうなのでアドルは自然にミミの主張に乗った。
「そっか?じゃあ俺から説明しよう。ミミの指摘の通り冒険者に許可を出し店の経営をさせる事を良しとするならば、誰も露店商人などやらないだろ?実際その方が冒険者としても儲かるんだから、当然ながらそのような行為には対策が行われているわけだ」
やはり座学は苦手なミミの耳は面白い形に曲がっているが、それでも彼女なりに一生懸命考えているようで食らい付いてくる。
珍しく真剣なミミにアドルの語りも熱を帯び、ミミの頭も熱を帯びる。
「つまり冒険者の直接販売は条約で禁止されている行為の1つであって、直接販売を行った冒険者及びそれに加担した露店商人は、両ギルドのブラックリストに載る事となるわけだ。リストに名前のある者はどちらのギルドとも一切の取引ができなくなるため、永久にその職を追放された事に等しい。そりゃ特例も存在するけど、それをギルド長という職位を利用し私的に行うことは言うまでもなく悪だな」
予想外の猛攻だが、どうにか耐え凌いだミミは理解した風を装い話を繋げる。
「だ、だよね!だからさっきの話の事はソレに当たるんじゃないの?」
「ま、大丈夫なのさ!なんと言っても、公国には商人ギルドの店がまだない!そもそもギルドの支部すらない未開の地だ。だからギルド間条約も適用されない!」
「おい、それってヘリクツじゃね?」
難しい話に立ち向かったミミの怒りは尤もで、鋭い視線とツッコミが容赦なくアドルに刺さるが仕組み上では確かにセーフなのだ。
付け加えるならば、そのような行為が誰でも成功するほど未所属の商人たちも甘くはない。
故に見逃されている部分でもある。
「ま、何でもいいや!早速明日から冒険に行こうっ!マスターの要請で公国に来てからは冒険者ギルドの設立に時間を取られてて行けなかったもんね」
「そうだな!行くのはいいけど冒険者の朝は早いんだぜ?いつも昼に起きるようなミミ店長が早起きなんてできるのか?」
アドルは皮肉に対しての反応を見ようと目を遣ったが、見事なまでにミミの耳は伏せられており嬉々とした様子に溢れていた。
こりゃ先が思いやられるな…と覚悟をするアドルだったが、冒険者としてのミミは噂に違わぬ人物だ。
久しぶりにミミの実力を目の当たりにできると思うと、密かにアドルの心も弾んだ。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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