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98校時目 私と3年H組・第2章

 〝ピンポーン!〟


 私・忍野(おしの)萌海(もえみ)の事務所「スモモもモモプロダクション」の玄関チャイムが鳴りました。事務所とはいっても「四尾連荘(しびれそう)」という築50年以上経ったオンボロアパートの一室なんですけど。


 あっ! そういえば今日、私が出演する予定の高校から学園祭実行委員の生徒さんが打ち合わせに来るんだっけ。

 この日は社長兼マネージャーの「内野乙人(いつひと)」が仕事で不在……なので所属タレント兼社長秘書兼お茶くみ兼電話番兼掃除係兼スマホゲーマーのこの私が内野の代わりに打ち合わせをすることになりました。


「はーい」


 私が玄関ドアを開けると……


「あれ? 誰もいない……」


 近所の小学生たち(ガキども)のピンポンダッシュ!? いや、でもここは2階……わざわざこんな所まで来てやるようなことじゃない。


「あっ、あのぉ~しゅ()みましぇ()ん……ここでしゅ()


 私のお腹辺りから声が聞こえました。下を向くと……見慣れない制服を着た小学生の女の子が立っています。


「あれ? お嬢ちゃんどうしたの? 迷子? ママは?」

「あっあの……シュ()モモもモモプロダクションはこちらでよろしいでしゅか?」


 ずいぶん滑舌が悪い子だなぁ~、まぁでも子どもだからしょうがないか……っていうか、


「えっ、ウチの事務所に何か用なの? あっ、もしかして生活科の職場見学?」

「あっあの……わたしは虻野丸女学園高等部の学園(しゃい)実行委員の者でしゅ」


 ――え?



 ※※※※※※※



「すすっ、すみません! すみません!!」

「あっ、いえ……慣れていましゅから」


 私はお客さんを事務所(アパート)に入れ、応接室(居間)ソファー(座布団)に座らせるとお茶を出して……その場で土下座しました。


 まさか高校生だったとは……しかも私より年上!


 彼女の名前は「鴨狩(かもがり) (つむぎ)」、私立虻野丸女学園高等部の3年生で学園祭実行委員のメンバーだそうです。

 身長は130センチ台といったところ……どう見ても小学生にしか見えません。しかし……年上だけどネコみたいにカワイイ!


「それにしても、よくココがわかりましたね。近くに来たら電話していただければ迎えに伺いましたのに……」

「実は道に迷っちゃったんでしゅけど……たまたまこのアパートを知っていた女子中学(しぇい)(たしゅ)けていただいたんでしゅ」

「中学生?」

「えぇ、銀髪で青い目をしたハーフの……とってもカワイイ子でしゅ」


 あぁ、そういえばこの辺にメッチャ可愛いハーフ美少女が住んでいるって噂だけど……でも何でこんなボロアパート知ってるんだろ?


「あっそういえば……鳥居地先生はお元気ですか?」

「相変わらじゅ(しぇい)徒に人気でしゅ! 真剣に結婚を考えてる子もいましゅよ」

「アハハ……」


 鳥居地新名(ニーナねーちゃん)という共通点があったせいか、紬ちゃんとはすぐに打ち解けて打ち合わせはスムーズに進みました。

 本当はその学校に「不逢(バカ)彦」という共通点もあったけど、私がムカつくのであえてその名前は出しませんでした。


 後でわかったことだけど、バカ彦は何と紬ちゃんの担任だったらしい……よかったぁ~話題にしなくて! それ知ってたら関係こじれたかも?


「じゃあ当日はこのスケジュール通りに進行しますので、よろしくお願いし……」


 ひと通り打ち合わせが終了したとき、紬ちゃんが突然、


「ちょっとしゅみましぇん! あの……トイレお借りしてもよろしいでしゅか?」


 何かモジモジしていたと思ったらトイレに行きたかったようです。


「あ、どうぞ! 右側の手前のドアですよ」


 彼女がトイレに入っている間、私は打ち合わせ資料をまとめていました。すると



 〝ブォオオン! ブブブブブブッ……〟



 どこからか爆音が聞こえてきました。こんな真っ昼間から暴走族かよ!?


「あっ……しゅみましぇん、失礼しました」

「いえいえ! それじゃ当日よろしくお願いします」

「こちらこしょ! よろしくお願いしましゅ」


 私は玄関まで紬ちゃんを見送りました……まぁ数歩移動しただけですが。


「帰りは大丈夫ですか?」

「駅までの道はわかるので大丈夫でしゅ」

「あっ、そうだ! ちょっと待っててね」


 と言うと私は冷蔵庫からある物を取り出しました。


「よかったらこれ……帰りの電車の中ででも食べて」

「えっ!? シャインマシュ()カットじゃないでしゅか! いいんでしゅか? こんな高級ブドウを……」

「あぁいいのよいいのよ」


 知り合いの農家からタダでもらった「はねだし」だからね。


「ありがとうございましゅ!」

「それじゃ、当日はいいライブにしましょうね!」

「はいっ! しょれじゃ、忍野萌海しゃんにもよろしくお伝えくだしゃい!」

「はーい、さようなら~」

「しゃよ()()()~」


 こうして……年上だけどカワイイ女子高生との打ち合わせは終わりました。



 ……ちょっと待て!



 ――忍野萌海は私だぁああああああああっ!!



 あの子……私をずっとスタッフだと思ってたんだ。うぅっ、県外の人間からしたら私の知名度なんてこんなモンなのかぁ。一応、「萌海ちゃんねる」なんてネット配信やってるけど……。


 無事打ち合わせも済み、安心した私はトイレに行きたくなりました。トイレのドアを開けると……



 う゛っ! くっ……



 ――くっせぇええええええええっ!!



 なにコレっ!? まるで卵の腐ったような……火山の噴火口のような異様な臭気だぁ! おっ、おぇええええっ!


 消臭スプレーを思いっきり吹きつけてもしばらく臭いは消えず……結局、膀胱がパンパンになるまでトイレに入れませんでした。



 なっ……何なのよあの子はぁああああああああっ!?


「女子高の問題教師と40人の変態たち」から特別出演です。


【出席番号9番】鴨狩 紬(かもがり つむぎ)

https://ncode.syosetu.com/n8445gw/10/


それじゃ、ジ回も見てねー!

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