101校時目 私と3年H組・第5章
「じゃあ……ここで応急処置しますね」
私は3年H組のメイド喫茶で痔が「再爆発」し、悶え苦しんでいました。そこへ巡さんという生徒さんがやってきてそう言うと、すぐに天パの生徒さんの元へ行き何やら話をし始めました。そして……
「屋敷内におられますご主人様! お嬢様! たった今、緊急事態が発生しましたので一時閉鎖するっス! ご主人様お嬢様には大変申し訳ないっスが、一度外出をお願いするっス!」
天パの生徒さんが店内(教室内)に響き渡る声でそう叫ぶと、当然のように客がざわつき始めました。しかし彼女たちは、
「みんな! カーテン閉めて! それから机を並べ替えて」
「おいアンタら! はよ出かけてこいや! 今食うとるモン持ち出してええで!」
「マカちゃん、アレ用意して! ニコちゃん、例のモノはある?」
「部室にあります! 取ってきますね」
「よろしく!」
全員が瞬時に行動し、あっという間にお客さんを締め出してしまいました。教室の隅にはベッドぐらいの広さに机が並べられています。
えっ何このクラス!? ただ美少女が集まってるだけかと思ったら、まるで軍隊みたいに統率がとれているじゃないの……すごいチームワークだわ。
私が呆気に取られていると、天パの生徒さんが
「先ほどは無理なことをしてしまい申し訳なかったっス! 私はH組のクラス委員長の愛宕っス。お詫びに今から応急処置をしてお嬢様を保健室に連れてくっス」
えっ何? 応急処置って……すると巡さんが
「とりあえずこの机に上ってください。そして頭がお尻より下にくるような体勢になってください」
「えっ、えっ? どういうこと?」
「お尻が心臓より下だと血が止まりにくいんですよ」
あぁそういうことか! でもこの体勢はちょっと……。私は机の上で四つん這いになりお尻を突き出す……ネコの背伸びのようなポーズをさせられた。
いや、私アイドルなんですけど! いくら同性だからって衆人環視の中、机の上に乗ってこのポーズ……これは恥ずかしい!
すると、この生徒さんたちはさらにとんでもないことを始めました。
〝バッ!〟
「きゃあっ!」
突然、私のスカートをまくり上げたと思ったら、
〝ずりっ〟
「ひぇええええっ!」
私のパンツを一気にずり下げました!
やめてぇええええっ! わっ、私アイドルなのに! 今からここで学園祭ライブやるのに! 何で今日初めて会った女の子にパンツ脱がされてんのよぉ~!
「げっ! これはひどい……」
「うわぁ~痛そう、これは大変ですね」
でも……彼女たちは真剣でした。
「マカちゃん、止血お願いするっス! ところでお嬢様、薬はお持ちっスか?」
――もう「お嬢様」の設定いらなくね?
「そっそれが……車の中に置き忘れてきちゃって」
「じゃあ仕方ないっスね! ニコちゃんのアレを使うしか……」
「うわぁ~、アレめっちゃえげつないでぇ~!」
えっ!? 何その「えげつないアレ」って? すると
「持ってきましたー!」
と言って名札に「虹」と書かれた、女子中学生のような風貌をした生徒さんが
「あっ、あの……これは痔のお薬になります。ただしこれは民間療法なので、あくまでも気休め程度だと思っていただければ……」
「もっ、もう何でもいいです! お願いします!!」
もうここまで来て背に腹は代えられません! 私がそう言うと「先」という名札を付けた生徒さんが
「じゃあ私が塗りますね」
と言うや否や、痔の「患部」に指を這わせてきました。ひえぇっ! よく考えたら医者でもない、同世代の女の子に私は自分の「肛門」を触らせているんだ……メチャクチャ恥ずかしい状況だぁ!
でも……この「先」という子の指使いはとても気持ちがいい!
あっ、そういえば……
「あの……ところで、この薬って一体何なんですか?」
すると「虹」という子がニコッと微笑みながら
「ナメクジを黒焼きにして黒砂糖や薬草と混ぜたものです」
――なっ、ななな……ナメクジぃいいいいっ!?
わっ、私は……ナメクジをお尻に塗られてしまいました。そのとき
「そんなに緊張しないでください……もっとリラックスして……」
静かに声をかけてきたのは名札に「寿」と書かれた生徒さんでした。何やらさっきから私の腕を指で押しているけど……
「孔最というツボを押します。痔に効果があるんですよ! どうです? ここ、痛くないですか?」
「えっ? あっ……痛いです」
「血行を良くしてうっ血を取り除くんですよ……他にも痔に効くツボを押しておきますね!」
何なのこのクラス? さっきから薬作ったりツボ押ししたり……いろんなエキスパートの集合体じゃないの!? ただの美少女軍団じゃなかったわ!
「ねぇ、出血は止まったけどさぁ……何か不安じゃない?」
先ほどから大量の生理用ナプキンを使って止血してくれた、「贈」という名札を付けた生徒さんがそう言うと、「縫」という名札を付けたちょっと大人びた感じの生徒さんが
「あっ、だったらコレ使ってください」
取り出したのは「紙おむつ」でした……えっ、何でこんな物が?
「私が愛用している物です。よろしければ専用のおむつカバーも差し上げますよ」
――えぇええええっ! なっ、何なのこの子たちはぁああああっ!?




