9/13
09
床の上の少年が血相をかえた。
肩をゆすって、溺れるようにばたばたと、コンクリートの床をかく。
ぐったりした下半身を、目いっぱい引きずりあげて、血走った目でこちらを見る。
その紫色の唇が、ぱくぱくと動いた。
助けて。
なにを言っているのか、声が聞こえなくても、わかった。
助けて。
大男が袖をまくって、ラグビーボールのような足を、一歩大きく踏みだした。
シャツからつきだした太い腕が、振りかぶられ、その手に握られた棒が、ぐるりと弧を描いた。
距離はあったが、身の丈ほどはゆうにありそうなそれは、じゅうぶん届いた。
しなった棒の先の巨大な鉤爪が、少年の肩にたたきつけられて、ばっきっとまた破裂音がした。
それが手前に引かれたことで、つづけて胸に食いこんだ。