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「はやく!」
光一が小さく叫んで、翔太の腕を引っぱった。
「はやく、こっち、はやく!」
手を貸しあって、工作機械の陰にとびこんだ三人のほうへ、這いずる少年も向きをかえた。
その足の向こう、暗がりへつづく汚れの先にそのとき、ぬうっと影があらわれた。
黒ずくめの大男だった。
背中を丸めてはいるが、二メートルぐらいありそうだ。
蜘蛛のように、異様に細長い手足を先へ先へ動かして、すべるように工場を横切ってゆく。
あっけにとられていると、奥からもうひとりあらわれた。
筋骨隆々とした、こちらも負けず劣らずの大男だった。
赤茶色い染みだらけのワイシャツに、ゴム製の黒い吊りズボンをはき、手に持った金属の棒で、床をガリガリひっかきながらこちらに向かって歩いてくる。