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「……ゆるして、ごめんなさい」
工場の奥のほうから、泣き声が聞こえてくる。
「ごめんなさい。ごめんなさい、ごめん、あっ、ああっ……」
すべてをあきらめたような、大きなため息が漏れて、嗚咽がやんだ。
と思うと、ばきっと木が割れるような破裂音がして、なにやらドロドロしたものが、暗がりのそとにまでとび散ってきた。
壁にはりついた白い塊が、ずるずると垂れて、コンクリートの床の赤い粘液の中に落ちた。
きれいなピンク色のなにかが、ひくひく動いて、その粘液に波をうっている。
うっすら聞こえていた低い音が、少しずつ高まり、あたりの空気を震わせはじめた。
誰かが、獣のようにうなって、ときどき喉を鳴らしている。
コンクリートの床を、なにかがガリガリひっかいている。
床の上の少年といっしょに、それらがこっちへ近づいてくる。