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物陰から這いだしてきて、その理由がわかった。
派手な刺繍入りのスウェットパンツが、ぐっしょりと濡れていた。
下半身を引きずるたびにずるずると、赤黒い液体がコンクリートを汚していた。
あとずさった翔太が、足をひねって、よろけそうになった。
光一と圭介のふたりが、とっさにその体を支えた。
少年がそれに気づいて、床の上から、ゆっくりと三人を見あげた。
細い眉の下で、少年の目が、かっと見ひらいた。
紫色の唇が、ぱくぱくと動いた。
なにか言っている。
その手が、慌てて向きを変えた。
助けを求めようというのか。
死に物狂いの形相で、こちらめがけて下半身を引きずってくる。