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廃工場にて  作者: Sigint
6/13

06

 物陰から這いだしてきて、その理由がわかった。

 派手な刺繍入りのスウェットパンツが、ぐっしょりと濡れていた。

 下半身を引きずるたびにずるずると、赤黒い液体がコンクリートを汚していた。

 あとずさった翔太が、足をひねって、よろけそうになった。

 光一と圭介のふたりが、とっさにその体を支えた。

 少年がそれに気づいて、床の上から、ゆっくりと三人を見あげた。

 細い眉の下で、少年の目が、かっと見ひらいた。

 紫色の唇が、ぱくぱくと動いた。

 なにか言っている。

 その手が、慌てて向きを変えた。

 助けを求めようというのか。

 死に物狂いの形相で、こちらめがけて下半身を引きずってくる。

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