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「やああっ!」
少年が、絶叫した。
大男がぐいっと、両手で棒を引きあげた。
激痛に身をよじらせる少年の体が、ゆっくりと宙に吊りあげられていった。
しなる金属棒の先で、ふわふわと少年の体が浮いた。
あきらめたのか、息絶えたのか、揺れにまかせて頭を振るだけの少年をかつぐと、大男がくたびれたゴム長靴で、赤黒いわだちを踏み消しながら、いま来た道をもどりはじめた。
金属の棒は、中が空洞になっているらしい。
手もとにくくりつけられたビニール袋に、みるみる赤い液がたまってゆく。
ふう、と息をついたかと思うと、翔太がよろけてそのまま、ひっくり返りそうになった。
光一と圭介が、とっさにそれを抱きとめる。
工作機械の向こう側で、帰りかけていた大男が、ぴたりと足をとめた。