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笑い方を忘れた令嬢  作者: BlueBlue
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見限り

 ドメニカがクスクスと笑った。

「ナターラが初恋だったのよね。惚れ込んでいたのよね。でも見事に振られて、挙句ダヴィデに奪われたって。まあ、ナターラからすれば、あなたはおじさんっていう位歳が離れていたものね。あの時の打ちひしがれた姿を見て、ほだされて結婚しちゃったのよねぇ。結婚なんてするんじゃなかったわ。ああ、でも。ドマニという素晴らしい息子を持てた事だけは感謝しなくてはね」


「私もだよ。ドメニカという偉大な母を持てた事は幸せだよ。だから父上、もう爵位を私に譲ってね。私が立派な侯爵になるよ」

息子の言葉に侯爵が首を傾げる。


「では私は?私はこれから何をすればいいんだい?」

「いやねえ、わからないの?」

ドメニカが楽しそうに笑った。

「あなたは罪を償うのよ。大丈夫、一生にはならないはずだから。炭鉱でたくさん掘ってらっしゃい。帰って来る事が出来れば、だけれど」


「え?どうして?私は何も悪い事はしていないよ」

「いやだ、あなたったら自分のした事覚えていないの?」

「犯罪なんて犯していない!」

「そう?じゃあ聞くけど。この国って王族だろうが何だろうが、一夫一婦制なのはご存じ?」

「そんなの当たり前じゃないか」


「ふふふ、そんな胸を張って言わなくていいわ。知っているのに愛人を作って子供まで産ませて?その愛人を王弟であるダヴィデの後妻におさまらせて?乗っ取りをしようとしたのよね。実際、あなたノヴェリアーナの屋敷に行っては、家の事に口出ししてお金を使いまわしていたのでしょう?」


「そ、それは……」

「言い忘れていたけれど。あとね、未成年に対する暴行未遂っていうのも加わるから」

これには侯爵は驚いた。


「どうして?私はまだ手は出していないよ。成人になるまで待とうって……」

「あら?言っちゃった」

「だから手は出していないんだ」

「そうかな?ノヴェリアーナの使用人たち数人の証言で、アリアンナを抱きしめている時に、お尻や腰を撫でまわしていたって証言が取れているらしいよ」


「そ、そんな!?」

「ああ、残念ね。とりあえず、もうすぐ騎士団のお迎えが来るから。大人しく刑に服しなさいな。こちらで爵位譲渡の手続きや、離縁の手続きはしておくわね」

「わ、私のサインがないとどちらも承認されないぞ」

悪あがきをする侯爵に、ドメニカがにっこり笑った。


「大丈夫よ。私を誰だと思っているの?元王女よ」

パチンとウィンクをする。そのタイミングで騎士団の迎えが来た。侯爵はそのまま連れて行かれてしまった。


「ああ、せいせいした」

「次に見つけるなら、もっとマシな男にしなよ」

「はいはい」

侯爵がいなくなった事を楽しむように、ドメニカとドマニは笑った。




 地下牢から連れ出されたシドニアとヴェリアは、一瞬外に出たと思ったら再び地下に続く階段を下った。簡素な作りながらも大きくて威圧感のある部屋に連れて来られる。

「よし、揃ったところで裁判を始めよう」

二人が入ると、先に座っていた国王の声が響いた。


裁判と言ってはいるが、確実に普通の裁判ではない。国王と王太子、宰相に数人の厳しい表情をした貴族らしき人たち。あとは、騎士たちが10人程立っているだけだった。


「まずは罪状を申し上げます。お二人には暴行罪、傷害罪、詐欺罪、横領罪。この四つの罪で裁かれる事となります」

宰相が巻紙を読み上げる。


「詐欺罪?横領罪?」

「順番に行きましょう。まずはその二つからですね」

王太子が立ち上がる。


「詐欺罪は心当たりありますよね?」

「知りませんわ」

シドニアが素知らぬ顔をする。


「どんなに誤魔化した所で、調べはきちんとついています。君は、ボノミーア侯爵と結託してノヴェリアーナ公爵家を乗っ取ろうとしていましたね」

「どうして乗っ取るなんて?私はボノミーア侯爵の紹介でノヴェリアーナ公爵と再婚をしたんです」

シドニアは、勝ち誇ったように言った。対する王太子も余裕の表情を浮かべた。


「あなたはボノミーア侯爵の愛人ですよね?そしてそこのヴェリア嬢はボノミーア侯爵の娘」

「なっ!?」

「調べはついていると言ったでしょう」


しかしシドニアも言われているだけではなかった。

「過去は愛人だったとしても、ノヴェリアーナ公爵と再婚したことは事実。それに横領罪の意味がわからないわ」


「その辺りの説明は私がしよう」

国王が立ち上がった。


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