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笑い方を忘れた令嬢  作者: BlueBlue
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新たな仲間

 銀の竜の後ろには、ここにいる竜たちよりも二回りほど小さな竜たちがいる。

「もしかして……」

更に近づくと、そろそろとその中の一頭が自らアリアンナに近づいた。


「あなたは、岩山で会った子ね」

冒険者たちから救った竜だった。アリアンナが手を伸ばせば、ゆっくり首を下げ彼女の手に鼻先を擦り付ける。

「後ろの子たちは、あの時あなたが逃がそうとしたお友だちなのね?」

銀の竜の背後から二頭の竜が、警戒した様子でアリアンナを見ている。彼女に寄って来た竜は返事をするように「クウ」と鳴いた。


成り行きを見守っていた銀の竜が後ろの竜たちをアリアンナの方へ誘うと、竜たちは警戒心を残しつつも彼女の手に首を伸ばした。

「ふふ、初めまして。私はアリアンナ。お友だちになってくれたら嬉しいわ」

二頭はアリアンナの手をクンクンと嗅ぐと、安心したようにそのまま手に鼻先を擦り付けた。


「良かった」

呟きながら二頭の鼻先を撫でる。二頭とも気持ち良さげに瞳を閉じた。

「ちゃんとロワの気配を追って来られたのね。遊びに来てくれたの?」

若い竜たちに問いかけると、銀の竜が「クウ」と鳴きジッと彼女を見つめる。


「ん?なあに、ロワ?」

まるで何かを語り掛けるような瞳の輝きを見たアリアンナが考え込む。

「うーん。もしかして、遊びに来た訳ではないみたいね」

金の瞳がゆっくり閉じられた。


「まさか!?」

アリアンナの顔色が変わる。

「岩山でまた何かあったの!?」

すると銀の竜は首を振った。

「違うの?なんだ、良かったぁ。そうなると、何かしら?」

色々考えてみる。その間にも、他の竜たちは撫でろと鼻先を彼女に擦り付けている。


「困ったわね……集中して考えられないわ」

そう言いながらも竜たちの鼻を撫でていると、数頭の竜たちが何処からか採って来たらしい果物を三頭に分け与えているのを見た。


「お腹が空いているの?」

銀の竜は動かない。

「違うのね。じゃあ何だろう?」

竜たちを観察していると、まるで皆が保護者のように三頭の面倒を見ているような気がする。


「もしかして……ここにいたいという事かしら?」

何気なく言ったアリアンナの言葉に、銀の竜の金色の瞳がゆっくり閉じられた。

「そうなの?ここで暮らしたいという事?」

再びゆっくりと瞳を閉じた銀の竜を見たアリアンナの顔が嬉しそうに破顔した。


「そうなのね。素敵!仲間が増えるのね。わかったわ、ジルヴァーノ様には私から話してみる。でも、そうなると騎乗の竜として生きて行く事になると思うけれど……いいの?」

すると三頭の竜が「クウ」と、まるでそうだと言っているように鳴いた。


「ふふ、そっか。じゃあ、これからよろしくね……って、まだジルヴァーノ様に話していないからわからないわよね。でも私、たくさんお願いするから」

満面の笑みを浮かべて言う彼女に、三頭の竜は嬉しそうに鼻先を擦り付けて来た。


その時だった。ふいに、事務所の方が騒がしくなる。

「どうしたのかしら?」

アリアンナが不思議に思い、事務所の方へ目を向けるとジルヴァーノらしき声が聞こえてきた。


「ですから母上!勝手に行ってはいけないと言っているでしょう!」

「ほほほ、大丈夫よ。入り口で見るだけだし、私はロワに認めてもらっているはずよ」

「母上がそうでも、ピアはそうではないのですから」

「あ、そうか……困ったわ……あら?」


ジルヴァーノの母であるユラと、ピアが事務所に入って来たようだ。だが、竜騎士の誰かが慌てたように扉を閉めた事で、アリアンナにはそれ以上の会話は聞こえて来なかった。



ユラは机の上に置かれている籠を覗き込んだ。中には一つ一つラッピングされたシュークリームが入っていた。

「ねえねえ、これは?」

一人の騎士がユラの質問に、嬉しそうな顔で答えた。


「あ、王女殿下が持って来て下さったのです。殿下の手作りなんですよ」

「めちゃめちゃ美味かったです」

「俺、おかわりしたい」

もう食べた竜騎士たちが、ニマニマしながら感想を述べていた。

「ええっ!?アリアンナ様が?お菓子を作れるなんて凄いわねぇ。もしかして竜舎にいらっしゃるのかしら?」

驚きながら一つのシュークリームを取り出したユラに竜騎士たちがニッコリと答えた。

「はい、今頃きっと竜たちに囲まれていると思いますよ」


竜舎の扉を開けたユラがひょっこり顔を出す。そこには聞いた通り、竜たちに囲まれているアリアンナの姿があった。

「まあ、本当に囲まれているわ。あんなに懐かれて……なんだか童話の竜の姫神子みたい」

ふふふと笑みを浮かべながら呟くユラ。そんな彼女の視線を感じたアリアンナが振り返ると、ユラが彼女に向かって手を振ってきた。竜たちを撫でている事で両手が塞がっているアリアンナは、軽く頭を下げる。そんな彼女を見たユラは、にこりと微笑みながら竜舎の中へと足を踏み入れ、彼女の方へと歩き出した。


「え?」

驚いたアリアンナだったが、一緒に彼女を見ている銀の竜は黙っている。どうやらユラは大丈夫なようだ。ホッとして彼女が来るのを待っていた時だった。


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