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笑い方を忘れた令嬢  作者: BlueBlue
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捕縛

 向こうに気付かれないようにと、離れた場所で待機している竜たち。

「こんな後方で麓の行動がわかるものなのですか?」

思わず聞いてしまうアリアンナに、ジルヴァーノは穏やかな顔で頷いた。

「ロワにはここでも十分、あちらの様子がわかるので大丈夫です」

「ロワはやっぱり凄いのですね」


アリアンナの言葉に気を良くしたのか、銀の竜がアリアンナに鼻先を擦り付ける。

「凄いのね、ロワは」

そう言って鼻筋を軽くこするように撫でてやれば、銀の竜は気持ちよさそうに瞳を閉じた。


一方、王太子と騎士団長は、森の中を進んでいた。

「そろそろ麓に近い場所になります」

小声で団長が言うと、王太子が「シッ」と口に指を当てた。耳を澄ますと何やら話し声が聞こえる。その声は、確実にこちらに近づいていた。


「どうやらお出ましのようだな」

気配を消し、彼らの動向を窺う。


「しかし……本当に生け捕りなんて出来るのか?」

懐疑的なセリフを吐く男に、隣を歩いていた男がニヤリと笑う。

「この人数で行けば大丈夫だろう。なんせAランクのパーティーが5組合同で挑むんだ。ギリギリまで弱らせればいい」


「捕まえた所で竜を従える事なんて出来ないのにな」

また違う男が馬鹿にしたように笑う。

「うちの王様は、残念ながら頭が悪いからな。それでも捕まえさえすれば、一生遊んで暮らせるほどの金が手に入るんだ。やらない訳にはいかないだろう」


先頭を歩く男が皆に聞こえるように言う。

「とにかく1頭でいい。何度か偵察に来たが、この辺りは巣立ちした若い竜が来ることが多いんだ。成獣になった竜はもっと上の方にいるし、成獣にはとてもじゃないが勝てない。だが若い竜なら話は別だ。いいか、間違っても死なせるなよ」

「ああ、大金が待っているんだ。しくじるもんか」

下卑た笑みを浮かべながら、冒険者たちはその場を通り過ぎて行った。


「反吐が出る」

「本当ですね」

王太子と騎士団長、二人の眉間に皺が寄る。


「どうやら隣国出身の冒険者たちで構成されているようですね」

騎士団長が、通り過ぎて行った冒険者たちを目で追いながら言うと、王太子が馬鹿にしたように鼻を鳴らした。

「ふん、隣でAランクという事は、この国ではCかよくてBランク程度だろう。一網打尽だな」

隣国は王族も腐っているが、ギルドも腐っていた。なんせ金を積めばランクが上がるのだ。隣国発行のギルドカードの冒険者は、他国では誰も信用していない。隣国出身の賢い者は、わざわざ他国に出てギルドカードを発行するのが常となっていた。


「皆の配置は整っているな」

「勿論です」

「あとは、本当に竜が降りてくるかどうかだな」


そう言っていると、上空に竜らしき影が見えた。3頭いる。

「やはり予知夢だったようだな」

王太子が上を見上げながら言うと、騎士団長も頷く。

「アリアンナ様は、本当に竜の姫神子のようですね」

「よし、竜に攻撃を仕掛けた所を一気に捕らえるぞ」

「はっ」


 後方では銀の竜が上空を見上げた。他の竜たちも上を見ている。つられるようにジルヴァーノも見上げると、何かの影に気付いた。

「あれは、竜の影ですね」

アリアンナも竜たちの影を確認する。

「本当に来たわ」

3頭の竜の影が、下降しているのが見えた。


「ロワ、出るぞ」

言われた銀の竜が、首を下げる。

「アリアンナ様は、他の竜騎士たちとここにいて下さい」

本当は一緒に行きたいアリアンナだが、自分が乗る事で足手まといになる事は分かっていた。


「はい、気を付けて下さい」

「はい」

ジルヴァーノは銀の竜に乗ると、一気に上空へ飛んだ。他の2頭も騎士を乗せて上空へ飛んだ。


 今、正にアリアンナの言った通りの光景が広がっていた。降りて来た3頭の竜の前に出て来た冒険者たち。1頭の竜が冒険者たちに向かってブレスを吐いている隙に、残りの2頭は飛んで逃げる事が出来た。

ブレスを避けた冒険者たちが、一斉に残った竜を囲み武器を身構えた。後方で5人いる弓使いが矢を放った時だった。


「捕縛しろ!」

王太子が叫んだ。


四方から一斉に、騎士たちが飛び出す。竜めがけて飛んだ矢は、銀の竜がいとも簡単にブレスで弾いた。そのまま銀の竜は、若い竜を覆うように降り立つ。騎士たちもAランクと言っていた冒険者たちを、ものの数分で捕縛してしまう。


「はっ、やはり隣国のAランクはお粗末だったな」

王太子が冒険者たちの前に仁王立ちになる。

「竜を捕えるどころか、自分たちが捕らえられてしまうとは残念だったな。一攫千金の夢も絶たれてしまったか。ああ、でも心配するな。これからおまえたちを我が国の城に招待してやる。まあ、城と言っても地下にある牢屋という所だが」

そう言った王太子は、悪い顔でニヤリと笑った。


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