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笑い方を忘れた令嬢  作者: BlueBlue
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竜の贈り物

 そんな王太子の執務室の扉を、何者かがノックした。

「誰だ?」

ドマニが扉を開けると、そこにはジルヴァーノが立っていた。

「どうした?」

王太子は頭を抱えていた顔を上げ、困惑の表情をしたジルヴァーノに問いかける。


「実はロワ……銀の竜がアリアンナ様の為にとこれを」

王太子のそばに来ると小さな布に包まれた物を開く。

「なんて青だ」

「アンナの瞳そのものですね」

布の中から出て来たのは、アリアンナの瞳にそっくりな色をした宝石だった。


「これは一体どうしたんだ?」

「隣国からの冒険者の動向を窺う為に、北西の岩山へ行っていたのですが、ロワがいきなり岩山の途中の洞窟に入りまして。何事かと思ったら、この原石を見つけて自分で掘り出したのです」


「その洞窟には他にも石が埋まっていたのか?」

王太子の質問に、ジルヴァーノは首を振る。

「いえ、暫く周辺を探しましたが見つかる事はありませんでした。宝石商に見せた所、非常に珍しいブルーダイヤモンドだそうです」

綺麗に研磨されたそれは、どの角度から見ても輝いていた。


「それで?何故、銀の竜はアンナに?」

「それは私にもわかりません。ただ、アリアンナに渡せと」

「本当にアンナは、恐ろしいほど竜たちに愛されているな」

王太子の言葉に、ドマニもジルヴァーノも頷いた。


「せっかくだ。ジルヴァーノからアンナに渡してやってくれ」


王太子の執務室にやって来たアリアンナ。

「ジョエル兄様、私にお話とは?」

扉が開かれると王太子とドマニに加えて、ジルヴァーノもいる。


「一体どうしたのですか?」

何かあったのかと身構えるアリアンナに、柔らかい笑みを見せた王太子。

「ジルヴァーノがね、銀の竜からのプレゼントを持って来たんだ」

「ロワから?私に?」

キョトンとしているアリアンナの目の前にジルヴァーノが立つ。


「北西の岩山に行った際に、ロワが自身の手で掘った物です。アリアンナ様に渡すようにと」

そして、先程のブルーダイヤモンドを見せる。


「わあ!なんて青……あら?私の瞳に似ているようですね」

「そうなのです。洞窟内にたった一つ、これだけが埋まっていました」

ジルヴァーノは、アリアンナの手にブルーダイヤモンドを載せた。

「頂いてしまっていいのでしょうか?」

「ロワ自身がそれを望んでいるので。受け取ってやってください」

「ありがとうございます。近いうちにロワにもお礼を言いに行きますね」

いい笑顔のアリアンナに、ジルヴァーノも笑顔を返した。

「是非、お待ちしております」


「アンナ、それを持って母上の所に行っておいで。加工してもらうようにお願いするんだ。上手くすれば舞踏会に間に合うかもしれない」

王太子の言葉にアリアンナが喜んだ。

「そうね、そうなったら素敵。早速お母様の所へ行ってみるわ。ジルヴァーノ様、本当にありがとうございました。ロワにくれぐれもよろしくと伝えて下さい」


アリアンナはもう一度礼を言うと、そのまま跳ねるように執務室を後にした。


「あんなに喜んで……可愛いな」

「本当に。羽でも生えたのかと思う程、軽やかに出て行きましたね」

「……ですね」

しばし、アリアンナが去って行った扉を見つめる三人。


「しかし……どうして銀の竜はアリアンナに贈り物をしたのだろう」

「わかりません。そんな素振りも見せていませんでしたし。ロワが何故あのような物を見つける事が出来たのか……」


「はは。私たちが躍起になって探していたアンナの瞳の色の宝石を、竜がいともたやすく見つけてしまうなんてね。完全に負けた気分だよ」

「ははは、竜と勝ち負けを考える事自体、間違っていると思いますよ」

ドマニの言葉に王太子も、ジルヴァーノも、大きく頷いたのだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 楽しく読ませてもらってます。 [気になる点] 近々お礼になんて言わずに、すぐに行ってあげてほしいな。くれぐれもよろしくなんて、他の人からの代理のお礼なんて、人間以外には意味がない気がする。…
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