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笑い方を忘れた令嬢  作者: BlueBlue
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日記1

 3月17日

今日、家に知らない女の人とその娘が来た。伯父様が「君の新しいお母様とお姉様だよ」と言った。


お父様は「アンナが嫌なら断るから気にしなくていい」と言ってくれた。新しいお母様もお姉様も綺麗な人だった。ピンクがかった髪色にチョコレートのような瞳の二人。お母様が天国に行ってから10年。本当は嫌だったけれど、お父様が幸せになるなら喜んで迎えようと決めた。



 5月9日

お父様が倒れた。乳母のサマンサが泣きながら私を抱きしめた。家令のトマスが去年から具合が良くなかったのだと教えてくれた。侍女のベリシアとコック長のノーランドが食事を部屋に持って来てくれた。


お父様は「心配ないよ」と笑ってくれた。でも、とっても辛そうだった。お義母様とお義姉様は、お父様の寝室には来なかった。


私は神様に一生懸命お祈りした。お父様のご病気を治して下さいって。



 5月23日

お父様が日に日に弱っていくのが、私にもわかった。毎日神様にお祈りしているのに……


伯父様がやって来て、当然のように家を仕切り出した。トマスたちは渋々動いていた。お義母様が嬉しそうに伯父様をもてなしていた。お義姉様も伯父様に抱きついていた。


昔から伯父様の事は好きでは無かった。お父様のお姉様の旦那様。いつも私を見るとニヤリと笑うのがとても気持ち悪い。今日もやって来て早々、私を抱きしめた伯父様。全身に鳥肌が立った。それでもなんとか笑顔で返した。



 6月5日

お父様が私を寝室に呼んだ。

「もし私が死んだら、今ある公爵位は消滅する事になっている。この事は私とトマス、サマンサ以外は知らない。その後の事は、兄上である国王がとりなしてくれるはずだから、アンナは心配するな。それと、この事はお義母様たちには勿論、伯父様にも言ってはいけないよ」

そう言われた。


「ちゃんと約束するわ。だからお父様は早く元気になって。私を置いて行かないで」

そう言うと重そうに腕を上げ、私の頭を撫でてくれた。

「私の可愛いマリアンナ。おまえが妻のお腹の中にいる時からずっと愛しているよ。これからもずっと永遠にお前を愛している」


そう言ってくれたお父様は、夜になって容体が急変し、そのまま天国へ行ってしまった。



 6月10日

朝起きたら、見知らぬ侍女が部屋に入って来た。誰かと聞いたら、今日から働く事になった者だと言った。サマンサやベリシアはどうしたのかと聞くと、この屋敷を出て行ったと言った。


私は慌てて屋敷中を探した。サマンサやベリシアだけではない、トマスもノーランドも。私の知っている使用人や侍女たちが皆いなくなっていた。


食事をしていたお義母様に問いただすと、心機一転の為に使用人を全て入れ替えたと笑った。


お父様のお別れが終わったばかりで、私はこの屋敷でたった一人になってしまった。



6月28日

伯父様がやって来た。最近は3日とあけずにやって来る。

「あと3年だ。楽しみだな」

そう私に言って笑った。どういう事なのかわからなかったけれど、言い知れぬ不安と恐怖に全身が震え出してしまった。


部屋に戻ると、お義姉様が私の部屋にいた。

「あんたはこれから私たちが面倒を見てあげるの。わかる?お義父様が亡くなった今、公爵位を継ぐのは私の夫になる人なのよ。あなたはこの家から追い出されたら何処にも行く所のない可哀想な子なのよ」


そう言って笑ったお義姉様は、私の宝飾品を持って行ってしまった。

「ああ、ついでにこれも頂こうかしら?」

そう言ってドレスも皆、持って行ってしまった。



10月11日

伯父様がやって来る時だけ、お義母様は私を綺麗に着飾らせた。

「いい?なるべく肌の露出のないドレスを着せなさい。ヴェリアったら調子に乗って首元まで鞭打ちして……バレない場所にしろと言っているのに」


「アリアンナ、元気にしているか?これから君に家庭教師をつける事にしたよ。ナターラの大事な忘れ形見だからね。ナターラのように美しく、賢く、気高くあらねばならない。今からみっちり勉強するといい」


何故、伯父様の口からお母様の名が出て来たのか、不思議に思ったけれど何も言わない方がいい気がしたので黙っていた。


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