ハイン・シィーカーのスカウト道具セット
ハイン・シィーカーのスカウト道具セット
「こいつがあって、俺の体が十全で、魔物が出ないなら
大迷宮の・・・どんな階層だって攻略してみせる」
そう豪語し、そして証明してみせたハイン・シィーカーの作った道具類
ありとあらゆるトラップを解除するための道具が詰まっている
彼はその生涯を持って、世界一のスカウトとして世に名を知らしめた
そんな彼は現役を退いた後、小さな工房を立ち上げ「ハイン・シィーカーブランド」の道具類を制作し続けていた
世のスカウト達はそのブランドの道具を、あるいは宝物の様に追い求めた
それを持つことがスカウトの一流の証として
だが、忘れることなかれ
道具とは、使う為の実力が伴って初めて結果を出すものだ
知る者はほんの数人しかいない。
彼の人生を大きく変え、スカウトとしての実力を開花させた冒険者養成学園に
毎年「ハイン・シィーカーの道具セット」がスカウト科の新入生分納品されている。
だがその道具にブランド名は記されていない。
とある新入生は言った
「俺はいつか、ハイン・シィーカーの道具セットを揃えて見せる!
最高の道具を使いこなしてこそ最高のスカウトだからだ!」
それを聞いた、数少ない秘密を知る学園長はニヤリと笑みを浮かべ
「頑張りたまえ」と激励した―――
「んじゃ、今日の納品はこれで」
「あぁ、間違いなく。
・・・調子はどうだ、ハイン」
「へへ、年も年でさ。色々若いもんに任せて俺はこんな木っ端の手伝いよ
学園長は今も昔も変わんねぇよなぁ。うらやましいぜ」
「ふふ、人間の寿命は一瞬だからね。仕方のないことさ」
「学園七不思議の一つ、学園長の種族はなんじゃろな
そろそろ教えてくれてもいいんじゃないですかい?」
「ははははは」
「いやはははじゃなくて・・・まぁいいさ
若造どもを頼んます」
「あぁ。いつもありがとう」
「へへ、あんたにも、学園にも恩があるからな。
・・・俺がおっ死んでもこの納品は続けるよう言い聞かせてあるさ」
一仕事終え、空になった馬車を走らせながら老人は呟く
「若造よ、ハイン・シィーカーの道具を求めるかい?ククク、俺のブランドはたっけぇぞ?」
いつか、学園で配布された道具をひっさげながら自分の店に来る若造を思い浮かべ
意地悪な老人は悪い笑みを浮かべた。
ハイン・シィーカー
冒険者学園が始まり、最初の入学生。スカウト科
当初スカウト科は不人気で、ランダムで組まれるパーティーの際他クラスから露骨に嫌な顔をされるくらいだった
科全体がまとまってその評価を払拭。まとめ役だったハインは卒業後にも偉業を成す
大迷宮における「製作者のいたずら」と言われる特殊階層・・・魔物が出ず、罠だけが異常な数だけ存在する階層
彼と仲間達がそれに遭遇し、彼だけが残りたいと言い出し仲間は帰還した。
1週間後・・・彼は「製作者のいたずら」を完全攻略。解除した罠の数は100を超えてから数えてないという
大迷宮は製作者が2人いて、片方が割と遊び心のある人物
「偉業達成者は入口にドドンと名前載せようぜ」!とか「こんな階層あると面白いんじゃね!?」とか言いながら大迷宮の魔法式を組み込んでいった
その偉業達成者の中にハイン・シィーカーの名前が刻まれた
大迷宮は魔物の素材も取れながら死の危険から排除されたアスレチックのようなもの
・・・それでも。世界にとっては何よりも重要な封印で。
とある人物にとって、何を利用してでも取り戻したい、恋焦がれる世界の続きが待っているもの。