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夢に堕ちる

作者: マゼンタ

 世界は平行にできている。

歪みが生じれば交差することもあるだろう。

夢だと思っていたことが、実はちょっとした横移動による経験だった。

なんてことも起こりうる。

そんな事実に踊らされ気づくこともなく人生を終える。

なんて平和なんだろう。


だが、ほんの少しだけ、一歩だけのあと、はたしてもとに戻ることは可能なのだろうか。

それは経験した者にしかわからない。

答えなど、ないに等しいのだ。





私はいま、書類選考に合格した企業を面接のため訪れている。

面接会場は7階のフロアだったはず。

だが、どこにも貼り紙らしきものはなく、事務所らしき部屋も見当たらない。

誰かに尋ねようにも、人の気配もない。


7階だったよな?

フロア全体をウロウロしてみる。

やはり人の気配もなく、会場らしきものがない。

鞄にしまってあった書類を確認する。

ざっと見た中に「新館」の文字をみつける。

新館、か・・・。

時計を確認する。

時間がない。

慌ててエレベーターを探す。

が、乗ってきたはずのエレベーターが見つからない。

どういうことだ?

いくら探しても見つからない。

仕方ない。

奥にあった荷物用?のエレベーターに乗ることにする。

え?1がない。

1階のホールに行きたいのに1がない。

代わりにあったのは、400、700といった数字。

400・・・700?

下にむかって大きくなる数字。

意味がわからない。


そう。本当はここで降りればよかったんだ。

冷静に考えればそうなんだろうが、その時の俺は、とりあえず・・・と、小さい方の数字400を押してしまった。

ガクン!身体が大きく揺れる。

一瞬の浮遊感と急降下が一気にはじまる。

!!!

まってくれ!

これは地下に向かってる?

視線の先で点滅する400の文字。

嘘だろ!!

急停止のボタン!

どこだ!どこにある!!

ない!ない!どこにもない!

なんでどこにもないんだよ!!!


まさか、このまま地下400階に着くまで待つしかないのか?

俺は絶望よりも先に、この後どうやったら生き残れるかを考えはじめていた。





嫌な夢をみた。

真冬だというのに、体は汗でびっしょりだ。

パジャマが肌にはりついて気持ちが悪い。

よりにもよって今日は面接の日だ。

まさか正夢じゃないだろうな。

普通に考えて、地下400階とかありえないだろう。

700階とか、映画でも聞いたことないレベルだし。

そんな会社あったら普通にやべえだろ。

あり得ないとわかってても、はっきりと覚えてる夢ってのはやけにリアルで気持ち悪い。



目の前にある建物は、夢のなかと全く同じものだった。

そりゃそうだ。

常日頃から10分前行動を心がけている俺は、事前に会社の場所はチェック済みだ。

この場所を訪れたのは今日で2回目。

鞄の中の書類をもう一度確認する。

すでに数え切れないほど確認しているのだが・・・。

面接会場は7階。

新館7階。

・・・新館?

ん?・・・なにか引っかかるような。


が、何も思い出せない。

そうこうしてる間に時間は着々と過ぎている。

このままでは10分前行動ではなくなってしまう。


人は焦りはじめると、その前に浮かび上がった疑問をなかったかのようにプツリと切ってしまうことがある。


俺の一歩は今まさに、新館7階を目指し歩き始めていた。



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