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1:中核設定[作中世界と特殊能力体系『ルノワール』について]

1.作中世界の概要、特殊能力体系『ルノワール』の扱いについて

 基本的には我々の住む世界と同一と考えて問題ない。時代は2050年代を想定しているが、この世界とは歴史が大きく異なる。SFや近未来色を大々的に打ち出す必要はほぼなく、あくまで『ルノワール』の使い手、繋ぎ手たちによる戦いの描写がメインとなる。ただし、国家構成や国際関係などの面で大きな相違が存在するため、このような詳細については後で解説する。

 『ルノワール』という能力体系は作中世界史で8世紀、シャルルマーニュが最初に得た「黒きもの(Le Noir)を制する能力」に端を発しており、その後長らく王侯貴族の間にのみ流通する極秘の技術であった。843年、フランク王国が三つに分割された裏で取り決められた「ヴェルダン協約」に参加した国家や、その後継国家での研究が、この世界での『ルノワール』技術のすべてであったが、14世紀にスペイン、17世紀にアフガニスタンで偶然『ルノワール』と全く同じ能力を得た人間が現れたことから、徐々に全世界の一般市民社会にも流通するようになっていった。それでも、この能力体系の研究、開発において世界をリードしているのは、依然として発祥の地であるフランスである。

 『ルノワール』を使うことのできる人口は、世界人口のうち10万人に1人にすら満たないと考えられており、国家政策の中で組織的な開発を行うこと自体、非常に困難な能力であると言える。国家方針によって強制的な政府機関、軍隊などへの徴発が行われる例もあり、彼らの人権を守ろうとする国際団体も存在する。また、一般までよく知られた存在であるとはいえ、「黒い霧状の存在を操って不可思議な現象を起こす」といった非能力者からの目線を受けているため、あまり歓迎的に見られることがないこともしばしばある。(例外的に、日本やアメリカなどのように、サブカルチャーやエンターテイメントと結びつき、一種の「ヒーロー」的存在として持て囃される地域もある)

 この能力体系の持ち主が公的な場で、国際的なやり取りを行う際には、英語よりもフランス語が好まれる。各国のコミュニティでは自国の公用語を使うことも多いが、たとえばアフリカ諸国のように多言語、他民族、旧植民地などのバックグラウンドを持つ国々では、会話のために使う言葉をフランス語に統一している例も多い。(インドでは旧宗主国や公用語の問題で英語を採用しているが、このような例外も少なくはない)


2.『ルノワール』という能力体系について

 これ自体を「特殊能力」と見なすか否かについては、今のところ諸説ある状態とされている。

 本来的には人間個人の持つ能力ではなく、その在り方はむしろ「上位者との契約」に近い。『ルノワール』とは、本来人間の住む3次元物体世界より一つ上の次元に生息している「何者か」の影であり、実際に能力を行使しているのはこのような「高次元仮想生体」であると考えられている。このような存在が3次元物体世界の人間に呼応し、力を与える原理、および動機ははっきりしていないが、少なくとも現在まで意識を強制的に完全に乗っ取られ、犯罪衝動や人類への敵意を表した事案は確認されていない。

 『ルノワール』を行使するものは、その出会い方によって「繋ぎ手」と「使い手」に分かれる。前者は超自然的な方法によって高次元仮想生体とのコネクトを獲得したり、何らかの方法で彼らの側からコンタクトを取ってくることで、いままでこの世界に存在していなかった『ルノワール』を獲得した者である。後者は能力を誰かから受け取った者、あるいはかつて誰かに使役されていた、すなわち能力を得る以前からこの世界に存在していた『ルノワール』を獲得した者を指す。「繋ぎ手」の人口はごくわずかで、多くの場合は家族や友人、関係者から相続するか、あるいはどこかに疑似封印されていた『ルノワール』を解き放ち、心を通わせることで獲得する。

 『ルノワール』は前述のように、高次元世界から落とされた影である。これを能力として保持し、姿を顕現させ、制御するためには、人間側からのエネルギーの供与が必要である。現状の技術においては、最初期より使われている「感情エネルギー方式」を採用する。『ルノワール』はそれぞれの個体によって「餌」の嗜好が異なり、行使者は彼らの要求する感情を持っている必要がある。微々たる量であっても行使は可能だが、供給量が少なくなれば出力に支障を来たすことは、言うまでもない。

 『ルノワール』は、フランス科学アカデミー管轄下にあるルノワール技術研究所において、以下のような要素を持つ存在であると定義されている。

 ・形式

  『ルノワール』の存在形式。形状要素と数的形態によって表され、以下のように分類される。

  [形状要素]

   「人体」(Humain)

    人間の形、あるいは人体の一部である。

   「人外」(Créature)

    人間ではないが、生物である。

   「装備」(Armement)

    行使者が装備して扱う無生物である。

   「物品」(Objet)

    装備することのできない無生物である。

  [数的形態]

   「単体」(Un)

    単一の存在である。

   「双体」(Deux)

    一対の存在である。

   「複体」(Complexe)

    複数の存在から成り、全体が一つの自我を共有する。

   「群体」(Agrégation)

    複数の存在から成り、それぞれが独自の自我を持っている。

   「無体」(Zéro)

    目に見える形を持たないか、不定形である。


 ・性質

  『ルノワール』が持つ能力の性質傾向を示す。以下のように分類される。

  「攻撃」(Épée)

   主に対象への攻撃、破壊に利用される。

  「防御」(Bouclier)

   主に行使者や対象の身を守ることに利用される。

  「療養」(Thérapie)

   対象が受けた外的損傷や被害を修復、除去するために利用される。

  「支持」(Protéger)

   物理的実体を対象とし、その性質等に作用する。

  「干渉」(Brouillage)

   現象や概念などを対象とし、その性質等に作用する。

  「分類不能」(Étrangeté)

   以上のいずれにも当てはまらない。


 ・感情

  『ルノワール』の顕現や制御に利用されるエネルギー源。現在は以下のものが該当する。

  「歓喜」(Plaisir)

  「憤怒」(Colère)

  「悲嘆」(Chagrin)

  「安楽」(Aisance)

  「願望」(Espoir)

  「諦観」(Capitulation)

  「快楽」(Jouissance)

  「絶望」(Désespoir)

  「恐怖」(Anxiété)


 ・能力

 『ルノワール』が持つ能力。実に多彩な能力が確認されているが、基本的に顕現する能力は三つの概念の掛け合わせに端を発していると考えられている。能力を成立させる三つの要素を「能力要素」と呼び、これらが「使い手」、「繋ぎ手」の精神的成長や心境の変化などによって別の項に変化していくことで、能力そのものの変質や進化が行われる。三つの能力要素がすべて入れ替わると、『ルノワール』は爆発的な変質を遂げ、それまで拡張してきた能力とはほとんど関わりのないように見える第二の能力を得る。これは「グリザイユ化」と呼称されており、歴史上それほど多くは見られていない。

 『ルノワール』の行使者は、まれに自らの能力要素と一致する要素を持った行使者と出会うことがある。非常に確率は低いと見られているが、もしもそのような事態が発生した場合、互いの『ルノワール』には多大な変化がもたらされる。三つすべての一致による変化は歴史上に数例の報告があるが、最も影響の大きな例では、双方の『ルノワール』が交流開始から1週間足らずでグリザイユ化を起こしたとの記述がある。

 なお、『ルノワール』が継承される際には進化の段階が最初期まで巻き戻された上、能力要素が大きく入れ替わってしまい、表面上はそれ以前と全く異なる能力へ変化してしまうことが多い。しかし、能力の本質的部分ではあまり変化が起こっておらず、進化を遂げていく方向は全く変わらないと考えられている。(進化目標性の原則)


 ・範囲

 『ルノワール』の力が及ぶ影響範囲を指す。これは空間的な範囲だけでなく、引き起こした現象の時間的な影響範囲も含めている。過去にしか存在できない『ルノワール』などといった特異な存在も、理論上は存在可能であるとされている。


 ・中核

 『ルノワール』が人間とつながりを持つ際、必ず行使者の記憶に固着点を構築する。すなわち、高次元の世界から単独の人間に取り付いておくためのアンカーとして、記憶の一部を彼らに明け渡さなくてはならない。多くの場合は能力を獲得した経緯や、最初に自己の『ルノワール』と出会った際の記憶となるが、そうでない場合も少数であるが報告されている。



また、『ルノワール』はどのような場合においても、以下のような性質を有している。


・実体が姿を現すためには、一定の大きさの影、または暗所が必要。

 必要とする大きさには個体差がある。

・行使者でない者にとって、『ルノワール』の実体は黒い霧として認識される。

・能力要素として引き出されている三つの項は、実体の強さに関係する。

 項が関連し合っているほど、実体の物理干渉力や機動力などが向上する。

・『ルノワール』への命名に規則はない。

 しかし、能力の変化やグリザイユ化などを起こすまでは変更できない。

・『ルノワール』を従える者は、中核となった記憶を思い出せなくなる。


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