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Kiss of Monster 01  作者: 奏路野仁
9/43

009

彼女達は僕に駆け寄り

「大丈夫か?どこか痛いんか?」

僕が泣いている心配をしてくれた。

え?あ、いや大丈夫です。怖かっただけです。

「そうか、そうだよな。怪我は無いんだな?」

はい。

と、力が抜けたのか宮田杏と栄椿はそろって大きく深く息を吐いた。

「それで、その、君は何をどうしたの。」

柏木梢は警戒を続ける。

犬に纏わりついていた「何か」を引き剥がしました。

「変わった奴だとは思っていたけど本当に変な奴だよなー。」

宮田杏は簡単に信じた。

「それに較べて雪女とか蜘蛛女だとかホント使えないよなぁ。」

「なっ。こんなポカポカ陽気が悪いんだぞっ。」

「蜘蛛女とか言うな化け猫め。お前こそワンちゃんにガクブルしてたくせに。」

「猫娘って言えー。」

そっちのけでコント再び。

だが笑っていられなかった。会話は突然止まる。緊張が走る。

他に3頭。何処から来たのかフラフラと現れる。

「ちょっとマズいな。」

「どうなってんだよコレ。」

多分。きっと僕の責任。

彼女達はまた僕を守るように囲ってくれる。

僕は1歩踏み出し

何とか足止めするから急いで橘さんの父親を呼んでください。

「何とかってどうするんだよ。」

頭痛が酷い。足の震えも止まらない。怖い。怖い。

考えがあります。大丈夫です。前にもこんな事がああったから。

考えなんてない。こんな事はじめてだ。怖くてどうにかなりそうだ。

だけど責任は取らないと。

事態は悪くなる。犬だった「何か」がさらに4頭追加。。これで終わりだとも言い切れない。

僕はゆっくり皆の前に立ち、彼女達を階段の方に向かわせた。

ゆっくり。ゆっくり石段に背を向けるよう円を描く。

同時に全ての「それ」に囲まれる。限界だ。唸り声。

合図したら走って。

両腕を広げ、さらに1歩踏み込む。

走って、と言う寸前。彼女達も走り出す直前。

「それ」達の興味が僕達の元から失せた。

新たな興味のその先には、フードを被った誰か。

「遅くなってすまない。」

エリク?

「それ」は今まで以上に唸り声を強く、今まで以上に敵意を向ける。

「そっちの3体は任せる。」

それは僕に対してではない。

「間に合って良かった。」

石段の少し上で南室綴の姿を確認したのと同時に、

その脇をとんでもない勢いで影が僕を掠め飛び出した。

と次の瞬間には「それ」が1頭宙を舞った。

小室綴の蹴りだ。

と認識する間に彼女はその横の「それ」を蹴り上げその頭に肘を叩き込む。

派手なコンボに見惚れているその脇ではもう1頭倒れていた。

南室綴が何かしたのだろう。

エリクはと見ると足元に4頭倒れている。

僕は怖くて何もできなかった。

皆は何でも無かったかのように簡単に済ませてしまった。


少し遅れて橘結が石段を慌てて危なかっしく駆け下りる。

「終わったらゆっくりでいいわよ。」

「ええっそうなのっ。」

バタバタといくつか飛ばしながら走るので

案の定勢いあまり慌てて南室綴と小室絢が受け止めに走る。

「あとは任せるよ。」

帰ろうとするエリクを慌てて呼び止め

助けてくれてありがとうと伝えると

「何を言っている。トモダチのピンチには駆けつけるよ。」

彼は笑顔でそう答えてくれた。

南室綴も小室絢も彼の姿が見えなくなるまで警戒を解かなかった。

橘結はそれを知りながらも倒れている犬達の頭をそっと撫でる。

慈愛に満ちた目。頭を撫でながら何かを呟いているが聞き取れない。

1歩下がってその行為を見ていた僕を何故か盾にするように宮田杏達3人がいる。

全ての処置が終わり、橘結は立ち上がると僕を見た。そしてポロポロと涙を零し泣き出した。

え?ええ?

何だどうしたああ僕のせいだそうに違いないそうに決まっている。

南室綴と小室絢は泣きじゃくる橘結を両脇から包むように抱きしめ落ち着かせようとする。

「後はワタシ達がするから。姫は、ね。」

南室綴の言葉に橘結はグッと息を飲み

「皆さん。こちらへ。」

と僕達を神社へと案内する。

「ほらアナタ達も行くのよ。」

南室綴は少し怯えているような3人に声をかける。

頭痛が酷い。昨日もそうだった。気を抜くと石段から転げ落ちそうだ。

後ろを歩く3人を巻き込んだら目も当てられない。

神社を通り過ぎ、橘家に案内された。

玄関にはたくさんの靴、履物。10人分くらいはあっただろうか。

「キズナ君はここで待ってて。」

1人玄関で待たされ3人は客間へと通された。

不安そうに僕を見たのでにっこり頷いて見せた。

3人の後ろ姿が見えなくなると

眼の前が真っ暗になってしまった。


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