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Kiss of Monster 01  作者: 奏路野仁
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背景は欧州中世の町並み

町娘A町娘B登場。

白いブラウスにベージュの長いスカート。

町娘A「ねえ聞いた?近頃起きてる不思議な事件。」

町娘B「聞いた聞いた。若い女性が血を抜かれて死んでいたって。」

エリクを主役にって、正体バラすつもりだったのか?

町娘A「怖いわねぇ。」

町娘B「物騒ねぇ。」

2人舞台脇に捌ける。

舞台右半分に照明。

お姫様役の橘結がいる。

従者「お姫様。こんな夜の街に出掛けるなんて危のうございます。」

お姫様「夜だからいいのよ。心配なら一緒に行きましょう。」

照明が消えると同時にもう半分の舞台が照らされる。

小室絢。スマートなスーツ姿。似合うなぁ。

客席の一部から甲高い悲鳴が湧く。

「今夜もこの街でディナーを捜すとしようか。」

宝塚だな。

両方の照明は灯るが、お姫様と従者側はやや明るくして差を出している。

お姫様は従者を引き連れ街中を鼻歌交じりにクルクル回る。

果物屋やら食器屋からとチョイ役も出演。

店員達が自ら動き、橘結はその場で回る事で移動している演出。

その間、薄暗い舞台上でヴァンパイアは彷徨っている。

ヴァンパイを追い越すように、いかにもな暴漢3人組が現れる。

「こりゃ上物だ。高く売れるぜぐへへ。」

その後ろ、まだ薄暗い場所から小室絢が

「なるほど確かに上物だ。ディナーは決まった。」

暴漢がお姫様に手を伸ばそうとした刹那

小室絢扮するヴァンパイアは舞った。

暴漢共はもんどり打ちながら舞台から消える。

「お怪我はございませんか?プリンセス。」

膝を折り手を取る。

2人にスポットライトが当たる。

見つめ合う2人。

「ありがとう。闇夜に舞う紳士。」

「どういたしまして。宵の街に咲く花よ。」

と、従者がお姫様の手をとり

「やはり夜の街は危険ですっ。また襲われでもしたら私っ。あーっ。」

舞台から走り去ろうとする。

お姫様は吸血鬼に何かを言いたそうだが何も言えず

繋がれた2人の手が離れ、お互い目を合わせたまま舞台端に消える。

吸血鬼独演。

背景はお城の全景と、その手前に十字架の掲げられた建物。教会のつもりだろう。

「呪われた私の血が、彼女を拒絶する。」

「私がただの人の子であるならば、護符など蹴散らしてくれるのに。」

「私がただの人の子であれば、すぐにでもアナタの元へ駆けつけるのに。」

暗転

背景はお城の中、お姫様の部屋。

王様と王妃とお姫様と従者。

王様「また街へ遊びになんたら」

王妃「近頃街では吸血鬼と呼ばれる殺人鬼がどうたら」

王様「お前ももう年頃だ。そろそろ婿選びをせねば。」

王妃「なんたら家のなんたらがどうたらこうたら。」

(本当に申し訳ないが橘結に見惚れてよく覚えていない)

3人去り、橘結の独白。

「愛する人を自分で決めることさえ出来ないなんて。」

「ヴァンパイアがいるのなら、私をこのお城から連れ去って。」

「ああ、私がただの人の子なら、自由に街を歩けるのに。」

「ああ、私がただの人の子なら、今すぐあの人の元に参るのに。」

暗転

舞台半分(薄暗く)

ヴァンパイアはフラフラと所在なく力なく彷徨う。

一夜の相手を見付けその血を吸う。

「この飢えが癒えないのは何故だ。」

舞台半分

お城の警備兵が王様の元に跪く。

王様「これ以上の犠牲者を出す前に殺人者を捕らえよ。」

その間、吸血鬼は数人の女性の生き血を吸い、捨てる。

同時進行で

警備兵「また犠牲者が。」

王様「見つけ次第切り捨てよ。」

舞台上から手配書が振りまかれる。

暗転

舞台半分城の中。

お姫様は白いドレスに支度。数人の従者が手伝う。

そこに一緒に街へ繰り出した従者がビラを持って駆け寄る。

立ち上がり、舞台袖へ消える。

ヴァンパイアは警備兵と立ち回り。

吸血鬼は短剣。警備兵はサーベル。

数人倒すが次第に数に圧倒され取り囲まれ一斉に突かれてしまう。

傷付いた吸血鬼は血を流しながら城の前まで

何も言わず倒れる。

そこへお姫様が駆け寄る。

再び2人にスポットライト。

吸血鬼「ああ神よ。本当にいるのならこの呪われた魂を救い給え。」

吸血鬼「これが罰ならば、私は何も恐れない。その死を受け入れようぞ。」

お姫様「そんな事を言わないで。どうか私の血をお飲みください。そして私を拐ってください。」

吸血鬼「私には出来ない。だからせめて、愛しい姫の胸の中で・・・」

お姫様「ああっ。」と泣き崩れる。

ワラワラと警備兵が取り囲む。王様と王妃が驚愕している。

王様「さあ姫よ。穢れた者から離れるのだ。」

お姫様はヴァンパイアの短剣を手に取る。

「私もすぐに参ります。」

「生まれ変わったら、アナタを探します。」

「自由な空のもと、きっとアナタに会いに行きます。」

短剣を自らの胸に振りかざしたところで

暗転

幕が閉じる。

静寂

幕の前に町娘Aと町娘Bが現れる。

町娘A「ねえ知ってる?この前のアレ。」

町娘B「お姫様のお話でしょ。」

2人声を揃えて「ロマンチックよねぇー。」

町娘A「あの吸血鬼が溢れたお姫様の血を飲んで目を覚まして。」

町娘B「お姫様抱えて警備兵なぎ倒して飛び去った。」

2人舞台脇に歩きながら

「きっと今頃2人で」

最後まで言わず消える


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