037
そろそろ南室綴の様子を見に行こうとすると突然肩から腕が回る。
「男役似合うなぁ。さすが爆弾小僧。」
宮田杏。いつ来た。さすが猫娘。
「誰が小僧だ。スパイに来るなっ。あとキズナから離れろ。」
「元々あの吸血鬼兄がする役だったんだよー。」
と現れて反対の腕を取るのは栄椿。
「椿ちゃんがちょっと怪しい脚本書いたのよ。」
柏木梢も現る。
何その怪しい脚本て。
「ホラ、ボク薄い本書いたりするじゃん。」
手伝ったから知っている。
「それで絢ちんから相談受けてさー。」
演劇に決まったもののタイトルが決まらない。
そんな話をファミレスでしていると
「何ならオリジナルにしたら?」と栄椿が提案。
「最初はさー、兄吸血鬼とキズナでキャスティングまで考えていたんだよ。」
はい?
「でも兄は帰っちゃうしキズナは委員会だしてさー。」
つまり元々男子×男子のつもりが結果的に女子×女子になったと?
「まあキズナの代役は姫ポンで決まりじゃん?」
最初からそうしろ
「んで兄吸血鬼の代役って誰よて決めさせたの。」
橘結の相手役として主役になれる。と意気込む男子と
恐れ多くてお相手なんて滅相もございませんと震える男子の二組に分かれた。が
「は?姫様の相手なんてあんたらにさせるわけないでしょ。」
と、女子全員一致で小室絢に押し付けた。
「キズナダメなの判って内容も変えたから一般でも見られるよ。」
それまでR指定だったのか?栄椿は僕に何をさせるつもりだったんだ?
「何だよ。今からでも魚雷の代わりにキズナにやらせろよ。」
「魚雷言うな。」
そこじゃない。
「うーん。キズナじゃむしろ姫役じゃね?」
柏木梢のこの一言で皆が笑い出す。橘結まで吹き出した。
この人達は僕を何だと思っているのだろう。
「あれ?綴は?」
まだ委員会で頑張っているよ。
ちょっと様子見て来いって言われただけだからそろそろ戻るよ。
僕が教室を出るとすぐさま小室絢と橘結に女子生徒が群がり
「あいつ小室さんの何ですか?」
「姫様とどんな関係なのでしょう?」
等々の質問が飛ぶ。
「あー、弟。妹?弟みたいなものかな。」
と応えるのは小室絢。
「えっと、幼馴染。かな。」
と応える橘結。
それでも
「随分と馴れ馴れしくありませんか?」
等々(何故か敬語で)結構な勢いで問い詰められる2人。
その内面倒になったのか
「とにかくアイツあれでイイ奴だから。皆も仲良くしてやってよ。」
小室さんが言うなら、姫様がそう仰るなら。と、どうやら落ち着いた。
後日に宮田杏はお腹を抱えて笑いながらそれを教えてくれた。
文化祭初日
南室綴は回復したものの少々緊張はしているようだ。
僕は文化祭最中殆ど仕事がない。事務処理は事前か事後になる。
南室綴が予定を入れ忘れたのではないとするとこれから何か言われるなと
予想通りの展開。
「文化祭の様子を撮影してきてよ。」
彼女は実行委員として殆ど体育館から動けないからと。
カメラは?まさか携帯?
「うん。紹実ちゃんが持ってる。話は付けてあるから。」
ほらやっぱり。最初からそのつもりだった。
保健室にはいなかった。職員室で他の教師とお茶。
「どうした?デートの誘いか?」
デート?
「文化祭一緒に回りませんか?て誘いに来たんじゃないの?」
それも楽しそうですね。でもカメラを借りるように言われて。
「ああそうだった。綴に言われているよ。お前もタイヘンだな。パシリじゃん。」
カメラ用のバッグから何やらごそごそと
「他の奴ならコンデジでいいやと思っていたけど」
「キズナがカメラマンならイチデジ貸してやる。」
「しかもフルサイズだぞ。」
「レンズはそうだな。室内だからな。ナナニッパがいいかな。」
「近いから少し離れて撮るにはちょうどいい。」
「それにこれも貸してやる。ミラーレス。これにニーヨンナナマル付けて二台体制でいけ。」
「個人的にはサンゴーとかゴーマルの1.4で決めたいけど」
「構図やら光源やら確認しながらなんて無理だろうからズームが便利だろ。」
「マクロはどうする?料理とか撮るならいるぞ。一本持っていくか?」
ええ?もう何言っているのかワカリマセン。
カメラ二台に交換用レンズ1本。予備のメモリー2枚。
「ホントは絞り優先で撮らせたいけど初めてだろうからオートにしとく。」
「構えてシャッター半分押すとピント合わせるから。」
レンズ交換方法、メモリー交換方法含めレクチャーを受けるが何のことやら。
「とにかくだ。合法的に女子高生を盗撮できる機会だからな。頑張れよ。」
教師のくせに何を言っている。




