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Kiss of Monster 01  作者: 奏路野仁
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2人が石段を降りて、そろそろ公園に着いたかな。と思ったその時。

誰もいない筈の神楽殿から

「素晴らしいダンスでしたお姫様。」

入学前に、僕が初めて出会ったヴァンパイア。

センドゥ・ロゼ

「王子から聞いたのか。だが残念ながらオレはオマエの名を知らない。」

知って欲しくもない。

僕に向かって喋ってはいるが、「それ」はずっと橘結を見ている。

そして彼女はあの時と同じように僕の前に立って守ろうとする。

ダメだ。こんな事させちゃダメなんだ。

小室絢からはまだ何も教わっていない。それでも守らなければならない。

都合が良いのか悪いのか足元に薙刀がある。

刃は付いていないが脅しくらいにはなる。と考えたのだが

ただ震えが余計に目立つだけだ。。

だが「それ」は僕を見ない。神楽殿をフワリと降りると真っ直ぐに橘結に向かう。

それ以上近寄ると

脅すだけのつもりだった。

「それ」は僕の振り回した薙刀に動きを止めることなく、踏み込んだ。

ゴキンっと気持ちの悪い感触が伝わる。

僕は「それ」の首を跳ねた。

ゴロンと転がる。

その目は僕を見て、その口元は笑う。

ガラン。と大きな音。僕は気付かない内に薙刀を手放していた。

茫然としている僕の背中に、再び冷たい汗が迸る。

振り返ると「それ」はいた。

足元のコレは何だ?僕は夢を見ているのか?

今度は「それ」は高笑いをしながら橘結に手をかけようとする。

身構える橘結。守らないと。

身体が動かないのは、首の無い「それ」が僕を羽交い締めにしているから。

後先考えていられない。

僕は僕を抑える首の無い「それ」の腕を掴んだ。

黒くて冷たい影に触れる。

「それ」に纏わり絡みつく影を強引に引っ張る。

頭の中を殴られたような痛みと耐え難い吐き気。

抜き取ると、影は散る。同時に僕の胃の中が全て空になる。

意識が飛びそうになったが

「それ」がまだ僕を掴もうと振り回した腕に背中を掻きむしられる痛みで耐えた。

その腕を振りほどくと「それ」は倒れ二度と起き上がらなかった。

橘結を守る。

彼女に掴みかかる前に、僕はその腕を取った。

高笑いしていた彼の表情が変わった。

恐怖だ。きっとそうだ。僕のコレを彼は恐れている。

もう力が入らない。同じことをしたら死んでしまうかも知れないとも過った。

構うものか。


僕が無事だったのは異様な気配を察して飛んで現れたエーリッキ・プナ入りンナと

同じくあまりに強い血の匂いに気付いたグンデ・ルードスロットが駆けつけてくれたから。

センドゥ・ロゼ

僕は彼の腕にしがみついたまま気を失った。

振りほどこうにも、僕は彼の「正体」を掴んでいたらしく相当手こずったようで

ようやく橘結に目を向けると既に2人が現れ守られていた。

背中の傷はたいした事は無いのだが僕が目覚めないので

救急車が呼ばれる騒ぎになってしまった。

せっかくのお祭りに水を差したのが本当に申し訳なかった。

この日、橘結の父親は他所の神社での催しに来賓とし呼ばれて居たため留守だった。

三原紹実もこの日に限って研修だったと嘆いていた。

「貧弱すぎるっ。」

と揃って皆に責められた。

「姫ちゃんに任せておけば怪我しなかったのに。」

とも言われた。実際その通りだったかも知れないが

あの場に居てあいつの目を見たらそれどころではなくなる。

「私も動けなかった。キズナ君がいなければ今頃どうなっていたか。」

と言ってくれたがまあそれは励ましてくれているだけだろう。

病院での検査結果に異常は見受けられず念のために一泊。

頭痛はまだ残っていたので鎮痛剤だけ処方されたが翌日には回復した。

祖父母には心配かけたが

お祭りで燥ぎすぎた程度で誤魔化した。

それでセンドゥ・ロゼはどうなったの?

「いないよ。少なくともこの街にも。国に帰ったのかも。」

それを確かめるためにと

9月末で予定通り一時帰国するらしい。

元々ただの「留学生扱い」なのでこれからの事は帰国してから相談して決めるらしい。

グンデ・ルードスロットも同様に半年の留学期間を終え1週間ほどで帰国。

僕のたった2人のトモダチがいなくなる。

これには相当落ち込んだ。

「何よ。ワタシ達がいるでしょ。」

と南室綴に叱らられる。

入学から半年、僕はクラスメイトの殆どと会話らしい会話をした事がない。

僕の名前を知らない者もいるだろう。と言うと

「知らない奴こそいないな。」

と小室絢に笑われた。

ただでさえ目立つ留学生で、しかも「あの」2人といつも一緒にいる

「あの小さい子は誰」といつの間にやら有名人らしい。

その2人がいなければ橘結、南室綴、小室絢がいて

隣のクラスから宮田杏、栄椿、柏木梢が現れ賑やかす。

ヘタをすると嫉妬やらやっかみの対象だ。


そして怒涛の文化祭へ。


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