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Kiss of Monster 01  作者: 奏路野仁
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神社での夏祭り。

その準備に駆り出された。

準備初日、何も判らず、知り合いもいなのでただウロウロしてようやく見付けた仕事は神社境内の提灯の設営。

これなら誰とも関わらずただ黙って黙々と作業をするだけだ。

「せっかくのお祭りで何やってるのよ。」

柏木梢が見兼ねて僕の手を取り、準備に勤しむ屋台を一軒ずつ巡る。

「とうとう彼氏連れかい」と数人から声をかけられ、その度に僕の腕をとり

「私達の連れよ。これからよろしくね」と紹介する。

だが紹介しようにも何の特徴もない僕に呆れて

何か謳い文句といか肩書が欲しいと言い出す。

「ヨーヨー釣りの名人」

「輪投げの達人」

「金魚すくいの髪」

等々いくつか候補が挙がる中決まったのが

「5発の弾丸で6つの景品を落とす男」

決まったところで射的に行きましょうと手を引かれる。

「本当か?試しに撃ってみろ。」と銃を渡された。

射的なんてしたことない。

棚に並ぶ小さな景品なんて本当に当たるのだろうか。

一番上に大きな熊のぬいぐるみが袋に入っている。

あれなら当たるだろう。

間違っても落ちないだろがアレを本気で狙ったとあれば柏木梢に恥をかかせる事もない。

と我ながら姑息な案を咄嗟に思い付いた。

客寄せの景品。

あれは落ちない。相当つぎ込んで少しずつズラして、それでも落ちない。

のが経営者の思惑。

パンッ

当たりどころが良かった。の一言で片付けるのは無理がある。

大きな熊のぬいぐるみはグラリと揺れ、何の加減かグルリと半回転しながら

隣の景品を2つと、下の棚の景品を1つ巻き込みながらドサリと落ちる。

「ひぃっ」

射的場のお兄さんが悲鳴をあげた。

5発で6つとか舐めた事を、と思っていたら1発で4つの景品。

ただの試し打ちでお金も払っていなのでと景品は辞退した。

「ヒッて言ったよなアイツ。」

泣くほど笑う柏木梢。

「お前本当に何者なんだよ。」

この件がきっかけで、僕はこの界隈でアッという間に名が知られた。


夏祭り当日。行くつもりは無かった。

誰が好き好んで人混みの、しかもそれなりに「幸せそうな人が集まる」場所に「1人」で行くのか。

たたでさえ慣れない人付き合いに部屋でぐったりしていると

柏木梢が浴衣姿で迎えに現れる。

「いいよ楽しまなくても。財布になってくれれば。」

態々迎えに来て来てくれた。しかも浴衣姿の女子と一緒ならと

気が向かないフリをしつつ神社へと向かった。

通常ルートは街中を練り歩く山車と共に神社へと向かうらしいのだが

柏木梢は「場所取り」と言って早々に神社の神楽殿に連れて行く。

御神楽が始まるまでその場でりんご飴を舐めながら海の話し。

スイカ割りしなかった。砂のお城作らなかった。花火もしなかった。

全部それどころではなく燥いで遊び倒していた自分を差し置いて僕を責める。

「次回のお楽しみだな。」

いつからだろう。柏木梢は僕に警戒する事なく

当たり前のように笑顔を向けてくれる。

やがて見物場所に人が集まり、遠くから賑やかな子供達の声が聞こえる。

子供達は大きな声を出しながら山車を引く。

朝から町内を回り戻って来た。

境内に到着するとようやく宮田杏が僕達に合流する。

息を切らせて汗だくなのは妹と弟に出汁を引かせていたからだ。

「梢に何もされなかったか?」

何の心配だ。

橘結の父親が神楽殿の下で挨拶。

街の清めと山の神への祈りにこれから子供達が舞う。と。

「7歳の夏休みすぐに踊りの練習させられるの。それから小学生の内は毎年舞うのよ。」

子らの後ろに橘結、南室綴、小室絢が控える。

「姫ちゃんは5歳から踊っているって言ってたわ。」

「アタシも舞ってた。」

説明の間に山車の上にいた女子が降り、神楽殿に登り立つ。

(男子は山車を引くだけ)

子らが舞う。

それを見物する柏木梢も宮田杏も簡略してはいるものの一緒に舞っている。

見ると見物客の殆どの女性がそうしている。

「紹実ちゃんから聞いたんだけどね。」

「私達継ぐ者が神楽殿に立てるようになったっのってキズナのお母さんがそうしたからなんだって。」


御神楽舞う女の子たち。

僕はこの光景を知っている。

記憶を遡るのに必死で舞いが終わったのも気付かなかった。

宮田杏は弟妹の面倒を見るからと消える。

柏木梢は屋台でヘルプを頼まれたからと消える。

「お前もうしばらくここにいな。迎えが来るから。」

迎え?

他の見物客も揃って屋台の並ぶ公園へと向かう。

迎えが誰かなんて事より、思い出せない記憶に歯痒さだけが募る。

誰もいなく、照明の落ちた神楽殿を眺めながらウロウロしていると

「キズナ君。」

浴衣姿の橘結。

「梢ちゃんから連絡あって。キズナ君が待ってるって。」

え?あうん。

「私達も行きましょ。」

彼女は僕の手を取り石段を降りる。

僕はこの光景を知っている。

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