027
「絢ちゃんがずっと反対していてね。」
当然です。
「当然て、他人事みたいに言うのね。それで杏ちゃん達がキレてタイヘンだったのよ。」
疑うのは当然だ。僕自身彼女に何があっても橘結を守って欲しいと頼んでいる。
宮田杏達は斥候の役割を自ら買って出て
南室綴が先の条件を提示し小室絢はようやく「折れ」て僕との面会を認めた。
(それでもこうして傍らでもしもに備えた)
「だってコイツあの兄妹と一緒に登校しやがって。」
「それからだってずつとアイツと一緒だった。信じろってのが無理な話しだ。」
小室絢は正しい。あとで宮田杏達に説明を
と、後ろの席から
「まあ事情は判ったからもういいわよ。」
柏木梢が妙な格好をして座っている。
いつから居たんだ?見ると宮田杏も栄椿もおかしな格好だ。
「おかしな言うな。」
栄椿が用意した衣装はもしかして自分達が着るためか?
「これからはちゃんとしろよな。」
小室絢に怒られると南室綴はニヤニヤしながら
「こんな言い方しているけど、あの時ほら、絢ちゃんが真壁君を押し倒して」
「もう慌てて泣きながら抱き抱えて紹実ちゃんに何とかしろって。」
「泣いてねぇっ。」
あの時は蛇の毒がまだ抜けきれていなくてぐったりした。
彼女は「吸血鬼に何かされた」と思い三原紹実の元に運ぶ。
「寝ているだけよ。って言われたのにそれさえ疑って。」
それでいいと思います。
「そんな事よりワタシにも写真見せなさいよ。」
写真?
「海行ったんでしょ。ワタシ達にも内緒で。」
その3日後の夜柏木梢から
「朝紹実ちゃんが迎えに行くから」とだけメールが届く。
結構早い時間に車で現れ「乗れ」とだけ言われた。
後部座席には宮田杏、栄椿、柏木梢。
えっとそれで何でしょう。
「海ーっ。」
「いぇーいっ。」
後部座席が盛り上がる。
海って海?じゃあちょっと荷物を準備
「あるから大丈夫だよ。行くぞ。」
有無を言わせず発進。
到着するとすぐに三人は走り出す。
僕と三原先生は荷物を砂浜に運ぶ。
「お前も行ってこい。」
先生こそ。
「女子高生には勝てん。」
何がだ。
「海パン用意してやったじゃん。着替えてこいよ。」
あ、いや僕は。
「まあいいか。行かないならオイル塗ってよ。」
と徐に上着を脱ぐ。ああ水着着ていた。驚いた。
「それとも私が塗ってやろうか?」
差し出されたオイルの瓶を横から奪い取ったのは宮田杏。
「男子高校生相手に何してやがるエロ教師。」
「身内にオイル塗ってもらうだけですが?」
「おうっアタシも身内みたいなもんだぞ。」
宮田杏は爪を立てる。が三原先生は全く動じない。
「じゃあ頼むよ。」
「なんだと。」
宮田杏は「どうしてアタシがこんなこと」とブツブツ言いながら三原先生の背中にオイルを塗る。
栄椿と柏木梢も一休みにと戻る。
「マカベキズナは海に入らないの?」
スイムウェア持って来なかったので。
「イイじゃん別に普通の海パンで。」
「プールでもそうだったよな。裸見られたく無いんか?」
「私達の半裸堪能しておきながらズルいわよ。」
半裸とか堪能とか
「事故の痕が気になるんだろ。」
三原紹実はオイルを塗られながらも助け舟を出してくれた。
「コイツ小さい頃交通事故で大怪我して傷だらけなんだよ。」
一つ二つではない。
左腕の袖を捲り見せる。
縫い痕、継ぎ接ぎ。火傷の痕もある。
こんなのが全身にあります。
僕がいつも長袖なのが判ってもらえただろう。
「そっか。でもさ、これつて日焼けしたら目立たなくならね?」
「痛みは無いんだろ?」
はい。痛くは無いです。
「じゃあ少し焼いたら。脱げ。杏キズナにも塗ってやれよ。」
「んにゃっ?」
猫の目になった。「ゴクリ」と聞こえたような気さえした。
「よしきた。寝ろ。そこへ寝やがれマカベキズニャ。」
「ちょっとっ順番決めましょうよ。」
「じんやけんだじゃんけん。」
何のだ。何を目を血走らせて盛り上がっている。
「3人で同時に塗ったらいいじゃんよ。」
その言葉が合図となったかのように3人が同時に僕に襲いかかる
髪を掴まれ引っ張られ強引に上着を剥ぎ取る。
集団暴行だろこれ。
死にそうなほどくすぐられた。散々僕の身体を弄ぶと
「オイルでベタベタだから洗ってくる。」
と3人仲良く海へと走り、そのまま僕の事など忘れたかのように燥ぐ。
「モテモテだな。」
なんなんだ。なんなんだこの人。全部この人が
「大丈夫だろ?」
大丈夫じゃないですよ。
「プールでお前が全身水着だったのが気になったんだってよ。」
え?なに?
「アイツらなら大丈夫。」




