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Kiss of Monster 01  作者: 奏路野仁
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8月1日が何曜日なのかは判らない。実は今日が8月1日なのかも自信は無い。

今日も家から出ない。出る気も無い。

ゴロンと仰向けになって携帯で写真を見て

今時はネットで世界中繋がっている。フィンランドだって。

日本語フォントがあればとか今からフィンランド語をとか

まるで意味の無い事を考えていたように思う。

彼女は遠い国のお姫様。

僕は家柄どころか取り柄も稼ぎもない凡庸以下の高校生。

世界も日常もあまりに遠い。

ローマの休日か。あのラストってどんなだった?

携帯が鳴った。珍しいな。メール?電話だ。柏木梢?

「もしもし。マカベキズナ生きてる?」

え?はい。何とか生きています。

「柏木だけど。どうした?元気ないな。夏バテか?」

「実はさ今マカベキズナの家の前に居るんだよ。」

はい?

慌て身体を起こし二階の窓を開くといつもの三人組。

僕に気付いて手を振った。

慌てて玄関を開け出迎える。

「暇なら付き合ってよ。」

え?付き合うって何処に?

「夏と言ったらプールよ。」

え?あ、ちょっと待って。暑いからとりあえず入って。

「お邪魔しまーす。」

二階へ駆け戻りサーラから貰ったスイムウェアを鞄に押し詰め

浴槽からバスタオルを出して、とさほど待たせてはいない筈だったが

彼女達は居間ですっかりくつろぎ麦茶を飲みながら祖父母と話している。


道中、柏木梢は僕の顔をマジマジと見て

「少し焼けた?」

すると栄椿は

「引き篭もりのくせにボク達を差し置いて何処で焼いたのさ。」

海。です。

「なんだとこの野郎っ。」

ええっ。あれでも皆さんも焼けてませんか?

「おおう焼けたさ焼けたともさ。」

「顔と腕だけなぁ。」

暑さのせいなのか?栄椿はとてもガラが悪い。

「毎日早起きして子供達のラジオ体操のインストラクター。」

「それが終わると宿題手伝いしつつ自分の宿題もやって。」

三原先生がこの街の高校生は小学生の面倒を見るのがならわ

「だーれだっけかなぁそんな風習作ったのは。」

母、ですかね。

「おう判っているならようっそれなりの責任取れよう。」

責任?

「プールにようっ付き合ってもらうぜぇ。」

何なんだ一体。こうして付き合っているのに。

「気にしないでねマカベキズナ。椿ちゃんテンション高いだけだから。」

そうなんですか?

「雪女が夏好きで何か問題あるのかようっ。」

盛り上がっているだけか。

「で?いつ行ったの?誰と行ったの?まさかマカベキズナが1人で海になんか行かないわよね。」

あ、いやその。

「まあいいわ。後でじっくり吐かせてあげる。とりあえずプールよっ。」

指差すその先にプール。

道中一言も発しなかった宮田杏。

着替えて出てきたと思ったら走ってプールに飛び込んだ。

当たり前のように監視員に怒られる。

「ごめんなさいっもうしませんっ。」

突然いつもの宮田杏に戻った。

「猫は暑いのダメだから。」

それ言ったら水の中だってダメでしょ。

「細かい事は気にするなよ。」

と僕の手を取りブールに引きずり込む。

ぷはっと顔を上げると

「オマエその全身水着はどうなんだ?」

いつもの宮田杏の笑顔。

不意にサーラの笑顔を思い出してしまった。

宮田杏も、栄椿も、柏木梢も、

サーラ・プナイリンナと同じように、僕とは決して交わらない存在なのだろうか。

彼女達も、近い将来遠くへ行ってしまうのだろうか。

慌てて頭まで浸かって、零れそうな涙を誤魔化した。

宮田杏も潜り、僕を見て、水の中で笑って

2人で顔を上げて、2人で笑った。

「独り占めは許せんな杏ちゃんよー。」

「モタモタしているオマエらが悪いっ。」

全部話そう。

プールで散々遊んで、ファミレスまで付き合ってもらうよう頼んだ。

ちゃんと話しておきたいことがあるから。


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