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Kiss of Monster 01  作者: 奏路野仁
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012

宴会が終ったのは22時近かった。

僕は三原先生の車で送ってもらう事になった。

後部座席には宮田杏、栄椿、柏木梢が座り食べ過ぎたのかぐったりしている。

道中、三原先生は母の話しをしてくれた。

「纏姉ちゃんはね、私達継ぐ者の恩人なの。」

彼女が子供の頃、この町に駅ができて急に町らしくなって外からの人が増えた。

「纏姉ちゃんは私にそうしてくれたように、この町の幼い全ての継ぐ者の味方になった。」

女子高生がこの街の子供たちの面倒を見るような風習が産まれたのはそれが始まり。

「ちょっと前まで私がそれをやっていたの。」

「面倒を見ていただと?」

宮田杏は聞き捨てならんとばかりに身体を起こし反論する。

「毎度毎度暴力で解決していた奴が言うセリフかっ。」

「ホントよ。何度泣かされたか。」

栄椿、柏木梢もそれに続く。

「やめろっキズナが信じるだろっ。」

「事実じゃねぇか。」

「いいから続きを話してよ。」

「まったく。こいつら言っている事は嘘だからな。」

念を押してから続ける。

「纏姉ちゃんは大人達も巻き込んで「継ぐ者」に対する偏見を無くそうと動いた。」

子供のやる事だ。実際藪蛇になる事もあった。

それでも何もせずただ状況に流されてトモダチが傷つくのが許せなかったと言った。

思春期は精神的に不安定になり自暴自棄に陥りやすい。

「人の子でさえそうでしょ?」

継ぐ者は自分の運命が決められただの不幸な星に産まれただのと出生を呪う傾向が強い。

「中には自分を化物扱いする子もいる。」

「纏姉ちゃんはそんな子達をずっと守り続けていた。」

「皆が纏姉ちゃんを知っていてキズナの力になるって言ったのはそれが理由よ。」

母を誇りに思う事はできる。

だが僕が化物扱いされていたその時、母はもういなかった。

「あー大人達はそうかも知れないけどさー。」

宮田杏は身を乗り出し後ろから僕の頭を撫でた。

「昼にも言ったけどオマエが何者だろうと関係無いんだよなー。」

「ボクもだよー。」

栄椿も同じように僕の頭を撫でる。

「私もよ。」

柏木梢さえも。

「アタシは、アタシ達はオマエがその纏ちゃんとやらの息子だからトモダチになったんじゃない。」

「オマエがマカベキズナだからだぞ。」

迂闊にも泣きそうになったが

「出たよー杏の今日の名言。」

栄椿のツッコミに何とか堪えられた。


翌日。早々に隣の(宮田杏達のいる)クラスで騒動が起こる。

アメリカからの留学生。ノルウェー出身。

グンデ・ルードスロット

彼が教師に連れられ教室に入ってすぐだった。

宮田杏はその姿を見た瞬間に飛びかかる。

寸前で栄椿と柏木梢が取り押さえたが

机と椅子を数台倒し、只ならぬその表情と状況に教室内は一瞬の静寂から騒然へ。

宮田杏にはそうする理由があった。

この留学生がウールヴヘジンとかライカンスロープとか呼ばれる種族

所謂「狼男」だから。

HRが終わってすぐに彼女が僕の元に報告に現れた。

「アイツの仕業に違いないっ。」

仕業?何の?

「神社でワン公に襲われたろ。」

「そうね。とにかく気をつけるのね。」

柏木梢も慎重論を唱える。

え?ああうん。でもどうして態々僕に報告をするのだろうかと確認しようとすると

「オーウっ。ココにいやがりましたかー。」

「ドーシテ殴りに来ましたか仔猫ちゃん?私を?」

「子猫ちゃん言うなっ。」

この人がそうなのか。

デカイな。180以上あるのか。エリクより背が高いかも。

その上相当ガッシリした体格。格闘技でもやっていそうだ。

その姿に圧倒されている最中、宮田杏は昨日の件を彼に問い詰めた。

「ノーっ。オウノーッッ。カワイイダッグ(多分ドッグ)にそんなかわいそうなことできません。」

いい人そうだな。なんて呑気にしている場合ではなかった。

彼女達3人が態々隣のクラスの僕の元に報告に来ているのを勘違いしたのだろう

彼は、このデカイ狼男はあろうことか僕を彼女達の「ボス」と決め付けた。

何を言っている?と思う間もなく狼男が馴れ馴れしく僕に抱きつき

「ボース。トラストミー。ワタシもファミリーに入れてください。」

ファミリー?

「付き合うん?マカベキズナはガンスともお付き合いするん?」

栄椿が何を言っているのかまるで理解できない。

「おうっアイノウ。ドツキアウのね。そしたらマブダチね。」

ど突き合う?誰と誰が?

「じゃあトモダチからはじめてあげなよ。な?な?」

栄椿は何をそんなに興奮している?

「スノウガールそれいただきねっ。」

「トモダチしましょうボスさん。しなければ後の祭りよ。」

何?脅迫?

トモダチが増えた。


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