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Kiss of Monster 01  作者: 奏路野仁
11/43

011

「マカベキズナっ何処に隠れたっ。」

居間の外から宮田杏の声。隠れているつもりはない。

戸を開いた彼女は上機嫌だった。

「ここにいたかオマエ」

と言いかけたところで小室絢に気付く

「爆弾小僧もいたのか。気を付けろそいつ爆発そるぞ。」

小室絢が何かを反論するより速く南室綴が飛び起きて宮田杏に耳打ちする。

突然の事に驚く宮田杏。

「え?何?」

「だから。ごにょごにょ。」

宮田杏は咳払いをして

「人間魚雷め。今度はマカベキズナに狙いを定めたのかっ。」

「オレは小僧でも魚雷でもないっ綴っ真壁っ。」

僕は関係ないっ。南室綴は座布団を被り震えて(笑って)いる。

それで僕を探していたの?

「ああそうだ。あれ?何だっけ。」

「客間に来てくださいって。」

と、後ろの栄椿が顔を出して教えてくれた。

入れ替わるように3人が居間に入る。

「オマエら。マカベキズナはアタシ達のトモダチなんだぞ。何もしていないだろうなっ」

「あら、まだ彼とトモダチなだけなの?」

南室綴は何か言っている。

「ほれ早よ行け。橘父のお呼びだぞ。」

柏木梢に無理やり居間の外に追い出され戸を閉められる。

何かイヤな予感がする。


先日と違い、客間の仕切りの襖戸が外され隣の部屋との仕切りがなく

それは宴会場のようでもあった。

実際座卓がコの字に並び、

玄関の靴の持ち主達だろう客達は宴会を待っているようだ。

「こちらへ。」

橘結が案内する。

三原原先生がいる。残りは判らない。町内会でもしていたのか?

僕はコの字に囲まれた座卓の空白部分を上座の前まで行かされる。

上座には橘父。

「座りなさい。」

言われるまま正座すると、橘結が座布団を2つ差し出し1つに自分で座った。

「ああいや。固い話しじゃないから足は崩して。」

昨日今日の犬の件を咎められるのだとばかり思っていた。そのための会議なのかと。

「気分はどうだ?」

え?はい。大丈夫です。

と、橘結の父親は身を正し、正座した。

ええ?慌てて僕も正座する。

「娘を助けてくれてありがとう。」

彼はとても深く頭を下げた。座卓が無かったそのまま土下座しそうな勢いだった。

ええっいやそんな止めてください。

「これからも仲良くしてやってくれ。」

「ここにいる皆が君の力になる。何かあったら言いなさい。」

何を言っているのか全く判らない。ただただ生返事しかできない。

隣の橘結が立ち上がり席を外すと皆がそわそわし始める。

すると三原先生が寄ってきて

「今日も大活躍だったて聞いたぞ。」

活躍?いやいや何もしていない。あ、僕が宮田さん達を誘ったとか一体

真相を確認しようとしたが、気付くと僕は大人達に囲まれてしまい

何故か自己紹介が始まってしまった。

床屋の本屋の薬屋の大工の何とか工場の社長の誰それ。

内1人の年配の女性が

「纏ちゃんの息子さんよね。」

急にしみじみ語りだしたかと思うと、残りの人達も一斉に母の思い出を語り始めた。

「あの頃はそりゃあもう活発で元気でなんたらかんたら」

僕の母は有名人だったのか?

「さあ皆さん。食事の用意ができましたよ。」

橘結がお膳を運び入れる。その後ろに南室綴、小室絢。

宮田杏、栄椿、柏木梢も手伝っている。

立ち上がり僕も手伝いますと言うと

「キズナ君は主役だからそこへ座って。」

と上座の橘結の父親の隣に座らされた。

食事が運び終わり一同が席に着くと場が静まりかえつた。

静寂を確認してから父親がスッと立ち上がり、無言のまま盃を掲げる。

皆は着座のままそれに倣い、彼が口を付け、それを真似る。

う。お酒、か?

ほんの僅かな量ではあるが皆がそうしているので一気に飲み干した。

直後、宴が始まる。


僕はどうしてここに座っているのだろう。目の前の宴会は何を建前としているのだろう。

主役つて何だ。

頭痛は治まっているが代わりに混乱でどうにかなりそうだ。

その僕を勘違いしたのか南室綴が隣に現れ

「ダメよ好き嫌いは。はい、あーんして。」

へ?いや好き嫌いはありません。

「あらそう。」

と言うだけでニヤニヤしながらその箸を置こうとはしない。

それを見付けた宮田杏が文字通り飛んで来て

「オマエらっ何をしてやがるっ。」

南室綴のニヤニヤの理由はこれか。

気付くと三原先生も傍にいて

「小娘共が色気づくとか10年速いわ。」

「紹実ちゃんは10年遅いよ。」

ボソリと呟いた栄椿の頭を掴む三原紹実。

混乱は増すばかりだった。


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