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Kiss of Monster 01  作者: 奏路野仁
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010

橘家の居間で目を覚ますと南室綴と小室絢がいた。

「あ、起きた。」

「報せてくる。」

と両者が立ち上がり部屋から出て行った。

身体を起こすとす頭痛は消えていた。

「お茶、飲むでしょ。」

南室綴が戻りその後の経緯を教えてくれた。

南室綴と小室絢は保健所と警察にそれぞれ連絡をし相手をする。

たくさんの犬がどうやら捨てられている。

盗難なのか、ただ逃げただけなのか。怪我をしている子もいる。

ついさっきまで事情聴取らしきを受けていた。と自慢気味に語った。

「すぐ来るから。」

小室絢が戻り、ドカっと座る。

「それで?」

はい?

「お前、本当にあの3人とトモダチになったのか?」

どうして念を押すような確認をする?

「あの子達の事紹実ちゃん、三原先生から聞いてないの?」

シュワルツランツェンレイターでしたっけ。

「そんな事まで聞いたのかよ。」

突然南室綴が「ブフっ」と何かを思い出し吹き出す。

「爆弾小僧。」

「いっ。」

ダイナマイトキッドがどうしたって?

「絢ちゃんて中学入るまで髪の毛短くて男の子みたいで。」

あの3人が問題起こす度にスッ飛んで

治めるどころか爆発の後みたいな惨状にしちゃって

「誰が呼んだか爆弾小僧。」

人間魚雷じゃないだけマシですね。

「何それ。」

そう呼ばれていたプロレスラーがいました。

「え?爆弾小僧も元ネタあったのか?」

ええ。プロレスラーですよ。

「人間魚雷ですって。もう小僧て感じじゃないからこれからそう呼びましょうか。」

「呼ぶなっ。そもそも爆弾小僧って言い出したの綴だろっ。」

「人間魚雷・・・」

噛みしめるように呟く南室綴。

「お前も余計な事言うなっ。」

とばっちりだ。

「人間魚雷・・・」

よほど気に入ったのだろう。何度か繰り返し

とうとう座布団を抱えて伏せて震えだしてしまった。

「とにかくっオレ達とアイツらとはイロイロ因縁があるんだよっ。」

あの怯えようは随分な事をしたのでしょう。

僕はただの軽口のつもりで言った。他意なんてない。

「それは。」

小室絢の表情が曇る。南室綴に助けを求めるほどだ。

彼女は身体を起こし、笑顔を拭いながら答えた。

「絢ちゃんに怯えているのではないのよ。」

「彼女達は姫を恐れているの。」

橘結の何をどう恐れる?

「小学生の絢ちゃんがばくだ人間魚雷と言っても」

「爆弾小僧だろうっ爆弾小僧じゃないわっ。」

「まあまあ。とにかく所詮は子供同士の喧嘩。」

「最後は紹実ちゃんが現れて全て燃やし尽くして終わるの。」

喧嘩両成敗って意味だろうか。

「綴だけはいつもいなくなってたよな。」

「だって悪いことしていないのに怒られるのなんてイヤだもの。」

「喧嘩のあとに紹実姉ちゃんに連れられて皆してファミレス行くまでがセット。」

「だからワタシも絢ちゃんもあの3人とは険悪な関係ではないの。」

「でもあの日、姫のお母様が亡くなり全てが変わってしまった。」


南室家も小室家も、橘家に仕える。

だがそれは大人達の世界。

その子らは「対等」の「トモダチ」だった。

幼い橘結が橘家を継ぐその日

南室綴と小室絢は神社に呼ばれ儀式を受け巫女となる。

「この街に継ぐ者が多いのはね、橘家の庇護が受けられるからなの。」

日本中に似たような町や村が点在し、継ぐ者はそれ以外の「普通の」人と何ら変わらず生活している。

住人は「昔からそうだから」と何の違和感も疑問も抱かない。

開発が進む。逆に過疎が進む。

それでもこの街はそのバランスを失ってはいない。

ちょっと待って。橘家の庇護を受けられるのならあの3人が橘さんを怖がるのはおかしいよ。

「その存在を守れるって事はね、その存在をどうにでも出来るって事でもあるの。」

南室綴と小室絢の2人が橘結に仕えて1年が過ぎようとしてた春。

「橘家に仕えた事であの子達と同じように遊んでいられなくなった。」

「でもワタシ達と違って、あの子達は姫のトモダチとしていられる。」

「当時、もう1人いたの。」

名前も正体も語らなかった。ただ起きた事だけを語った。

「その子はワタシと絢ちゃんに「2人からも頼んで」って。」

橘家の力を知った彼女自身の願いだと言った。

「自分を人間にして欲しいって。」

「宮田さん達も「こいつがここまで言っているから」って。」

誰もそれが何を意味するのかなんて考えもしなかった。

「姫はずっと拒んでいたの。でもワタシ達がそうさせてしまった。」

彼女は人の子になった。

そしてすぐに家を出て行方を消した。

誰もその理由は知らない。

「そのすぐ後。その子の母親が自殺。父親はこの街から消えた。」


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