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異世界フランケンシュタイナー  作者: 雪村宗夫
エルビア王国
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プロジェクトウェックス5

「感謝祭へ向けて注文が増えて来ています」

流通担当ミートンの報告に唸るウェックス、限界まで水で薄める事で生産数を倍にする事には成功したが、

現在の需要で既に供給出来る限界だったからである。

「これ以上の受注は断らざるを得ないか...」

現在ウェックス商会で生産しているのは「カミルポーション」と「メヒコの塩」の2種。

「カミルポーション」一つに絞る事が出来れば需要に応える事が出来る可能性はあった。

しかし「メヒコの塩」を増産する事はカミルの街の基本方針であり、生産数を減らす事は出来ない。

ウェックスは感謝祭へ向けてのポーション増産を諦めようとしていた。

その時声を上げた者が居た、保管担当のミネルバである。

「ウェックス商会長、水の割合を増やしましょう、いわゆる水増しです」

いわゆるも何もただの水増しであった。

「そんな事が可能なのか!?」

ウェックスは驚きつつも尋ねる。

「4倍まで薄めても治癒の効果は確認出来ました。4倍で通常のポーションと同等の効果は得られます。

3倍と2倍では効果の差が解析出来ませんでしたがどちらもハイポーションと同等の効果が得られます。

原液に関しては四肢欠損にも効果が認められた為フルポーションと同格と考えられますが、

伝説級のポーションを生産出来るとなるとかなり危険が生じてしまうと考えられる為、

極一部の者しか知らぬよう処置しております」

亡き父の夢であったフルポーションをなんとなく手に入れてしまった事に複雑な想いを感じつつも、

ウェックスはフルポーションより4倍に薄めた希釈ポーションの方に魅力を感じた。

「4倍ポーションを主力商品にしよう!生産数は4倍だ!ミートン行けるか!?」

興奮しつつ尋ねるウェックスに流通担当のミートンは静かに答える。

「現在のポーション生産数、日産にして約1000本、ヒナコデスさんの言う薄利多売とかで通常のポーションの半値で売る事で王国中に飛ぶように売れています、これが仮に4倍の生産数になったとして約4000。

しかし感謝祭へ向けての注文が1日5000本来ているんですよ!今まで軽い怪我等に使ってなかったのが半額になった事で消費が倍になったのと気軽な贈り物に丁度いい価格になったからですよ」

このままでは注文を受けても商品が間に合う事は無い、ウェックスに苦渋の選択が迫られる。

「受けましょう」

保管担当のミネルバが言った。

「加工作業は人員とレーンを増やして対応出来るはずです!」

流通担当のミートンが言った。

「やりましょう!他の領地への流通は冒険者達に依頼を出す形で対応出来るはずです!」

ウェックスは尋ねた。

「良いのかお前達、作業員達は徹夜続きになるぞ」

二人は笑いながら答えた。

「私たちは定時であがりますから」

ウェックスも笑った。

「それもそうだな」

3人にはそれぞれカミルポーションに賭ける同じ夢があった。

カミルの街で一等地にマイホームを建てる。

この夢の為に三人は感謝祭を乗り切る決意をする。

「やろう!」「やりましょう!」「頑張ってもらいましょう!」

ウェックスは動く、レーンは8本から12本へと増設された。

流通担当のミートンは各領地への配送手段を準備した。

保管担当のミネルバは作業員の確保に奔走した。

3人の力を合わせる事で感謝祭へ向けてウェックス商会は万全の体制を整える事が出来た。

いよいよ明日、工場が新たなスタートを切るという夜にミートンがポツリと呟いた。

「ヒナコデスさんに何も伝えてないな....」

ミネルバは驚く。

「えっ!?サボテンに感謝祭の事話してないの!?」

動揺する二人にウェックスは静かに言った。

「あー大丈夫、大丈夫、多分レーン増えたな位にしか思わないよ。

ヒナコデスは女神様が贈ってくれたウェックス商会の守り神みたいな物だから」

ウェックス、ヒナコデスを物扱いする酷い奴であった。


ウェックス商会のウェックス会長、後の世まで名を残す『英雄商人ウェックス』の最初の戦いが始まる。


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