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異世界フランケンシュタイナー  作者: 雪村宗夫
カミルの街
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魔術師マールン

その日、ヒナコデスの戦いが観戦出来ると知った冒険者達は、先を争い対戦練習場の観戦席へと向かった。

「相手はマシンレディとか言う仮面を付けた謎の冒険者らしいぞ」

「B級を超える実力らしい」

「サボテン女王に挑戦するだけで凄いぜ!」

カシムの巧みな宣伝により、ヒナコデスvsマシンレディの戦いは最高の見世物と化しており、

娯楽の少ない辺境の冒険者達にとってこの戦いは、突然沸き起こった一大イベントとなっていた。

「来た!ヒナコデスだ!!」

「あれがマシンレディか!!....ってロウジーだろ!」

「ロウジーだろ!!」

「ロウジーだろ!!」

皆がマシンレディがロウジーだと確信していた。

この領内にドリルヘアはロウジーしか居なかったからである。

「まぁ落ち着け、ロウジーは先日鉄壁テルーと二刀流キージーに勝っておる、例えヒナコデスに二連敗してるとは言え、簡単にヒナコデスが勝てる相手では無いぞ」

一人の年老いた魔導師、マールンが言った言葉で周囲は静まる。

ハルバット領内で最高齢の魔導師であるマールンはC級冒険者ではあるが、この年70歳を超え尚も現役を続けるその姿に誰もが一目置き、その豊富な経験を頼りに誰もが意見を求めるカミルの街のご意見番とも言える存在であったからだ。

「ほれ、そろそろ始まるようじゃぞ」

マールンの声で我に帰りヒナコデス達に意識を戻す冒険者達、そして戦いは始まる。

「なっ!?腕と腕のぶつけ合い!?」

「ロウジー吹っ飛んだぞ!!」

「いやヒナコデスもダメージがデカイ!!」

沸き立つ冒険者達、戦いを生業とする彼等には見た目はただの腕のぶつけ合いでも、そのインパクト、ロウジーの吹き飛び具合で只ならぬ威力であると理解していた。

「吹き飛びの距離をそのまま助走に回しヒナコデスの後ろに回ってるぞ!!」

「ヒナコデスは気付いていない!!!」

「行ったーーーーー!!!」

盛り上がる冒険者達。

マシンレディ(ロウジー)は倒れ込んだヒナコデスに必殺のサソリ固めを極める。

「あれは...逃げられん。一度喰らった俺なら解る。ロウジーの勝ちだ。」

冒険者達と観戦していた二刀流キージーが呟く。

「すげーロウジー!!この街最強じゃね!?」

「ロウジー!!」「ロウジー!!」

盛り上がる冒険者達、誰もがヒナコデスの暴走を止めてくれる救世主を求めていたのである。

誰もがロウジーの勝利を確信したその時である。

「キャ!!??」

「熱!!」

ロウジーの背中に叩きつけられた「おでん」の具材「糸こんにゃく」。

観戦していたマールンの表情が一変する。

「あれは!!!魔蟲!!!」

「な!?」

驚く冒険者達。

「マールンさん魔蟲とは!?」

「500年前に起きた魔界からの侵略者との戦い、魔族戦争は知っておろう、その時魔族供が使役していたおぞましい蟲がアレよ。酸を吐き鎧を溶かして体内に潜り込み寄生するおぞましい魔界の蟲よ!」

マールンは糸こんにゃくを指差して言った。

「見よ!酸を吐いておる!!」

湯気である。

老眼のマールンにとって糸こんにゃくは触手多数の節足動物にしか見えなかった。


おでんの熱さにサソリ固めを外してしまったロウジー。

「ヒナコデス、魔蟲を召喚使役するとは!!」

興奮するマールン。

もう一度ラリアットを放とうとしたロウジーにヒナコデスは毒霧を噴射、そして自転車アタックを仕掛ける。

「な!?あれは魔骨馬!!!死んだキラーホースの魂を縛り使役すると言う禁断の死術!!」

マールンの言葉に驚愕する冒険者達。

ヒナコデスは魔蟲を使役するだけでなく、死後の生物さえも使役するのかと。

自転車に乗るヒナコデスの姿、タイヤに着いた反射板が老眼のマールンには魂の炎に見えた。

「恐ろしい....なんと恐ろしい...見よ!!あれに轢かれれば魂を奪われてしまうぞ!」

ヒナコデスによって吹き飛ばされたロウジー、勝敗は決した。

しかし冒険者達の苦難はここから始まる。

「食べ物は粗末にしてはいけない、このあとおでんは冒険者達が美味しく頂きました。」

ヒナコデスの一言にざわつく冒険者達。

「おい、おでんって何だ!?何の事だ!??」

「美味しく頂きましたって俺らが何か食べさせられるのか!?」

慌てて出口へ向かおうとする冒険者達、しかし我先にと逃げ出した魔導師マールンが高齢の為動きが鈍く、出口が完全に渋滞となっていた。

糸こんにゃくをペットボトル水で洗い、取り出したおでん鍋に再び入れるヒナコデス。

「魔蟲だ!!魔蟲を喰わせる気だ!!!!」

パニック状態になる冒険者達、そこへヒナコデスの声がかかる。

「おーい!おでん食べてきなよー」

ヒナコデスは笑顔だった。その笑顔が皆怖かった。

話しかけられて逃げる訳にもいかず固まる冒険者達。

そんな中一人の男が動き出す。以前ヒナコデスと一緒にビッグベアを討伐したホールである。

「ヒナコデス、一つもらおう」

ホールが率先しておでんを食べた事で冒険者達はおずおずとおでんを食べ、その場はうまく収まることができた。

「ヒナコデス、この触手だらけのスライムは何だ?」

ホールが勇気を振り絞って確認する。

「ふはっ、いやだなー触手ってコンニャクだよー、えと簡単に言うと芋をすり潰した物だよ」

ヒナコデスの言葉に表情が明るくなる冒険者達。

「ぁーこっちの世界には無いかもなコンニャク芋」

ヒナコデスの言葉に一気に暗くなる冒険者達。

(魔界だ!魔界の事だ!)

(こっちの世界って言った!!魔界だよ!魔界だよ!!)

誰も卵には手を出さなかった。

率先しておでんを食したホールの気持ちとしては、ヒナコデスを応援したかった訳では無く、

自身が以前食べた物が魔蟲と判り、煮込んだ魔蟲は害が無いんだと自分を言い聞かせる為、

もっと言えば魔蟲を食べた被害者の会の仲間を増やす為の屈折した気持ちからの行動であった。

この日から冒険者の間でヒナコデスの正体は魔蟲を使役する魔界から魔族では無いかとの噂が立ち始める。

ただしカミルの街に空前の好景気をもたらしたのもヒナコデスである事を皆が知っていた為、

ヒナコデスの総評としては「敵にすれば恐ろしい魔族だが馬鹿だから簡単に利用出来る、しかし馬鹿にしてると気付かれたら国が滅ぶ」と言う物となり、結果ヒナコデスを有り得ない位使役しているウェックスの評価が上がる事となった。




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