ギルドマスターアレキサンドリア
アレキサンドリアは現在35歳。
彼が若くしてギルドマスターになり得た理由は、彼の持つスキルに理由がある。
彼は対象者の実力を数値として読み取る事が出来たのだ。
この世界にはレベルといった概念は存在しない為、発動すると対象者に数値が表示される自身のスキルが、相手の戦闘能力を数値化している事に気付くまで、自身のスキルが価値あるスキルとは考えていなかった。
ある時、王都で行われていた武闘大会で、数値が高い選手が必ず勝利する事に気付く事が出来た事が彼の出世の始まりだった。
彼の能力は生物であれば何でも数値表示が出来た為、まず彼は闘技場での賭け試合や「競馬」等で一山当てるとその金を賄賂に使いギルド職員になった。
ギルド職員になると、まず近辺地域のモンスターらの戦闘能力を数値化し、冒険者達の戦闘能力を把握した上で的確なクエスト案内を始める。
彼の的確なアドバイスによってギルドのクエスト達成率は毎年度前年度を更新すると言った実績と、
無名の新人であろうとも、実力者を見抜き優遇する事で支持者を増やしていった事で遂には30代でのギルドマスターになると言うエルビア王国初の偉業を成し遂げたのであった。
そんなアレキサンドリアは今ヒナコデスを前に悩んでいた。
ヒナコデスに表示されている数値は「メインイベンター」。
まず「数値」で無い為他者との比較が出来無い。
更に「メインイベンター」の意味が理解出来ない。そんな言葉は存在しないのだ。
しかしアレキサンドリアは「直感」にてヒナコデスが英雄クラスの戦闘能力を持っていると確信していた。
ただしその「英雄クラス」がA級かB級かの判断までは出来ていなかった。
「フランケンシュタイナー君、先程の薬草だがアレは本当に薬草なのかね?」
アレキサンドリアはヒナコデスに関しては下手な小細工は不要なのではと考えていた為単刀直入に質問する事にした。
「ヒナコデスで良い」
ヒナコデスは以前「ヒナコデスと呼んで良いのは家族だけだ」と言った事も忘れ答えた。
以前「ヒナコデスと呼ぶな」と言ったのも単にそう言ってみたかっただけであり、そんな設定は無かったのである。
逆にアレキサンドリアからしてみれば、以前「ヒナコデスと呼んで良いのは家族だけ」という情報を得ていた為、早くも心理的に追い込まれてしまう。
(俺を家族と同様に扱う事でプレッシャーを与えて来やがった。なんなんだコイツは!?)
「ではヒナコデス、あの棘だらけの植物が薬草とは思えないのだが」
気をとりなおしアレキサンドリアが問うとヒナコデスはここぞとばかりにサボテンの有用性を訴える。
ヒナコデスにとっては、「自身が戦いで食べて行ける」という発想が無い為「おでん屋」の夢が閉ざされた今は「サボテンポーション」に賭けるしか無かったのである。
必死に「サボテンポーション」の有用性を訴えるヒナコデスであったが、3本の角が突き出たマスクを被った全身タイツの人間がいくら営業トークをしたところで誰が耳を傾けるかと言う話であり、ヒナコデスが必死になればなるほど売り込み先であるアレキサンドリアはたじろんでしまうのであった。
遂には「試してみたらすぐにわかります!」とヒナコデスは無限リュックから有刺鉄線バットを取り出し、アレキサンドリアににじり寄る事になる。
「ちょこっとだけ!先っちょだけ!」
ヒナコデスはもはや変質者以外の何者でも無かった。
無限リュックを認識する事が出来ないアレキサンドリアからしてみれば、
「何も無い空間から突如棍棒を取り出しにじり寄る変態」にしか見えなかった。
又「有刺鉄線バット」が理解出来なかった。
本来「棍棒」は撲殺が目的であり、そこに鉄製の棘を巻く意味が理解出来無い。
ある意味クッション代わりになる為、「撲殺」の目的からは遠ざかる。
見えてくるのは「悪意」。「撲殺」ではなく「痛めつける」。
対モンスターでは無く明らかに対人武器。そんな武器を作る発想が恐ろしい。そんな武器をギルドで取り出すヒナコデスが恐ろしい。
アレキサンドリアは覚悟を決める。
「待て!自分でやるから!」
アレキサンドリアは自らの短剣で腕を刺す。
激しい痛みが彼を襲うが「ヒナコデスの武器よりはマシだ!」と彼は考えていた。
「ひー!!!!!!」
アレキサンドリアの突然の行為に驚きの声を上げるヒナコデスであったが、すぐに商品の売り込みチャンスと気持ちを切り替え、サボテンポーションの作成を始める。
もう何度も作っているので手慣れたものである。
アレキサンドリアは(アレが塗られるのか、人格破壊とか無いよなぁ)と不安を感じながらもポーションが出来るのを待っていた。
「サボテンポーション〜」
ヒナコデスが何故か鼻声でゆっくりと宣言したがアレキサンドリアは気にしない事にした。
アレキサンドリアの腕に塗られるサボテンポーション。
「!?」
アレキサンドリアは驚いた。
痛みどころか傷口まで消えたのだ。
通常のポーションでは此処まで劇的な回復はしない、個人差もあるが止血して傷口を塞ぐ位な物だ。
「これは...ハイポーションすら越えるぞ....副作用が無ければだがな」
アレキサンドリアは目を閉じ考える。
(現在カミルの街は薬草が採れない為ポーション作成が滞っており交易にて購入している状態だが、これがギルドの財政を圧迫している。もしこのサボテンポーションが実用化出来れば.....)
「ヒナコデス、この植物はどれだけの量を所持している!?」
アレキサンドリアの質問に自身の勝利を確信したヒナコデスはマスクを脱ぎ去りショートカットの髪を振りながら答えた。
「いくらでもご用意できます」
その仕草が「カッコいい」と信じての行為であったが、アレキサンドリアが感じた事は(いきなり敬語かよ)であった。




