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異世界フランケンシュタイナー  作者: 雪村宗夫
カミルの街
28/256

二つ名

冒険者ギルドは静まり返っていた。

何をどうすれば3人のC級冒険者の囲いを破れるのか、ラングも加えてるとC級パーティを一人で撃破した事になる。あんな少女が。

その脅威の少女は、3人のC級冒険者達が吐いた血反吐で血に染まっているが、

気に留めた様子も無く気絶した冒険者達から所持金を奪っている。

「むごい....」

誰かが呟いた。

確かに冒険者同士の争いには「生死に関わらない限り」法は関与しない事になってはいるが、冒険者達は横の繋がりを大切にする為、仲間達の報復を恐れ相手の持ち物には手を出さないのが常識となっており、敗者の所持品を奪うという行為が異質で想像外だったからである。

叩きのめされた上に有り金を奪われるとは、どれだけの屈辱か。彼等が意識を取り戻した際に何と声を掛ければ良いのか。そんな想いのこもった呟きであった。

「あ...」

別の誰かの声が響く。

誰もが理由を理解した。

少女はカウンターで食事を注文しB級パーティ北斗の指定席に座ったからだ。

誰もが更なる惨劇を予想する。

3人のC級冒険者達が吐いた血反吐で少女は血に染まっているがまるで気にしていない。

少女の元へ食事が届けられる。

オニオンフライとビールだ。定番のおつまみセットである。

「普通だ!」

誰かの声に皆が内心同意した。コイツなら肉や魚を生で食べかねんと誰もが考えていたからだ。

そんな中ギルドの扉が開く。

B級北斗のリーダーであるキージーが帰って来たのだ。

「キージー無事だったのか!?」

一気に沸き立つ冒険者達。

キージーにはオークキングの質問はカミルの丘の封印について質問が飛ぶ。

「キージー!!」

2階の別室から降りて来たテルー達北斗のメンバーはキージーの無事を喜びキージーを囲み涙を流している。


仲間の無事を喜ぶ北斗のメンバーを見つつ、冒険者達はこれから起こるであろう事を予想し震えた。

あの少女は一人でC級パーティを潰す実力者で敗者の所持金を奪う外道でもある。

そんな外道少女が北斗の指定席を奪っている。話し合いは成立する筈もなく争いになるであろう。

少女は倒され奪われた金は取り戻されてC級パーティの問題は解決するであろう。

問題は北斗の指定席を奪う行為を見過ごしている「俺達」はB級パーティ北斗に許してもらえるのであろうかと。

テルー達がキージーの肩を叩きながら食堂へ向かう。

そして見た。自分らの指定席に座る少女を。

冒険者達は固唾を飲んで見守っていた。

キージー達はゴクゴクとビールを一気に飲んでいる少女の前まで無言で歩いて行く。

緊張感に包まれた冒険者ギルドに少女の声が響いた。

「へはぁー!!うめー」

(プハーだろ!?)

冒険者達は皆思ったが、北斗のメンバー達の反応は違っていた。

少女に背を向けると静かに冒険者ギルドを出て行ったのだ。

冒険者達には何が起きたのか理解出来なかった。

最早静まり返った冒険者ギルド。少女はギルドの主と化していた。

2杯のビールを飲み機嫌が良くなったのか少女は歌いながら立ち上がり冒険者用の受付カウンターへ向かう。

誰も聴いた事の無い歌だったが不思議と歌が下手だと皆理解出来た。


「冒険者登録を頼む、俺の名はヒナコデス・フランケンシュタイナー。よろしく!」


冒険者達は少女の名前を知った。「血塗れのフランケンシュタイナー、血塗れフランケンだ...」

「血塗れフランケン」の二つ名が初めてカミルの街に生まれた瞬間だった。




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